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空を駆ける

変わりゆく空なんて
寂しいだけだと思っていたけれど
あの人が空が好きだと
いつも言うものだから
私も空が好きになってしまった
空を見ながら
あの人も空を見ているだろうかと考える

人は一生の孤独に
耐えてゆかねばならない
色んなものから心を
もらわなければ生きてゆけない

去ってゆく風景
美しかったあの人を胸に
巻雲が空一面に満ちて
永遠の存続はもうすぐこれから

遥か、眼差しが一気に満ちて
開かれる根底のちから
運命など燃やしてしまえばよいのだから

広く両手を開いて
決然として
駆けてゆく、駆けてゆく
あの空を目指して

遠い遠い日の生命
わたしたちが思っているよりも
この世界はもっと
優しくてあたたかい

空を眺めていると泣きたくなる
空を見つめるということは
沢山の人々へ向かいあうこと
私から他者へと
全てをいつも呼び覚ます空

詩誌「PO」170号寄稿作品

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