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旅の記憶

旅はこころを柔らかくする
感じ方が繊細になる
まぶたを閉じて
またきっとこの地に来る

明るい緑の芝生の上に
狭い石畳の路地の奥に
広く流れる川の光る水面に
荘厳な教会のステンドグラスの向こうに
お喋りしながら行き交う人々の間に
詩が、たち現われる

いつもは思い出さないことを
ふと思い出して驚く
いつも思っている人のことは
よりたくさん思い出す

ここにいること、について考える
連綿たるつながりのなかで
生かされているのか
それとも自らを生きているのか

踏み出す一歩から
ひかりが拡がってゆくように瞬きたい
将来を指し示すように
いつか木漏れ日のなかで生まれる

ずっと続いてゆく
何気ない風景でいい
わたしたちのしあわせは
世界中のどこにでも存在する


金井雄二個人詩誌「独合点」第133号
寄稿作品

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