見出し画像

日々のこと 0317 『オアシス』

友人が亡くなったので、会いに行った。

最後に交わした言葉を覚えている。
久しぶりにみんなで集まり、バタバタ急いで先に帰った私が「ごめんね、挨拶できずに出ちゃった!」と後から彼に伝え、「いいよそんなん。また会うっしょ!」みたいなことを言われた。「そーだね!笑」とか、答えたと思う。
それきりになった。言わんこっちゃない。

「誰かと突然二度と会えなくなる」という状況は、これまで何度か経験した。「そうだ忘れてた、そういうことが起こるんだった」と、そのたびに思い知らされる。なんで毎回忘れちゃうんだろ。バカなのか。

最後のお別れをしに、昨日はその友人に会いに行った。
だけど「それではさようなら。お別れですね」と言って誰かとそれきりになる人は、世の中にどれくらいいるだろう。
この先もう二度と会わないかもな、と思う人は、今だってたくさんいる。昔はいつも顔を合わせていたのに何となく途絶えたり、そのまま音信不通になることの方が圧倒的に多い。「もう会わない」と宣言してそうなる相手なんて、ほんのわずかだ。
さようならをきちんと言えることは、実はとても貴重なのではないかと、ふと思った。

お通夜の後、その足で映画を見に行った。
『オアシス』という、大好きな映画が再上映されていた。人生ベスト級に好きな映画。それくらいのレベルの映画でないと、この状況には釣り合わない。超ラッキー。『オアシス』はやっぱり素晴らしかった。最高に愛してる映画だと思った。私はこの映画に出会えてよかった。会えたことに本当に感謝している。

映画の後、それぞれでお別れに行った友人たちと連絡を取り合い、飲みに行った。
ガチャガチャした新宿の居酒屋で、彼らと合流した。とても信頼している大切な人たち。
だけど喪服のままの私たちには「交通事故はダメだわー。なんも言えないし、笑えない。突然はダメ。30代で死ぬのもダメ」と、どうしたってしんどい要素しかなかった。

キュウリとかハムカツとかをつまみながら「でも、お別れが言えるのはとても貴重なことではないか?」という、さっき思いついた説を彼らに伝えてみた。
友人は「うん、そうだね…」と受け入れた後で少し考え、「いや、でもさあ。『じゃ、またな』は基本っしょ!」と言った。

そうなのだ。本当はそうなんだ。
たとえもう会うことがなかったとしても「どこかでアイツも元気にやってるに違いない」は、基本なのだ。知ってる。そうやってあなたも私も暮らしてきたし、これからもそうなのだ。

大切な人とさようならをしたくなければ、最初から誰とも出会わずにいるしかない。
だけど、出会ってしまうから。どうしたって、何をしたって、出会わないわけにはいかないんだ。

「最後のお別れをしに行った」とさっき書いたけど、本当は嘘である。「さようなら」なんて私はあの場で一言も言わなかったし、思うこともしなかった。
眠っているかのように綺麗な彼の顔を見ながら、心の中で「じゃあ、またね」って言いました。

ありがとう、またね。どっかで会おうね。


#日記 #エッセイ #コラム


記事を気に入ってくださったら。どうぞよろしくお願いします。次の記事作成に活用します。