丸山九段の解説会に行った(2018)後編


「大変お待たせしました」
休憩あけの初手、18時2分に丸山が発した言葉である。2分は「大変」だという気持ちで観客に向き合う丸山による、次の一手クイズの抽選。私は見事次の一手を当てるも7人中6人が当選する抽選に外れたため人間性を歪めた。

参考画像:私が欲しかった物


丸山は「永瀬さんと渡辺さんの勝負は面白いんで私ももう一局見たいから、今日は永瀬挑戦者応援になっちゃうんですけど、ヘへッ」と永瀬の応援をして、19時31分、永瀬が勝った。
将棋会館道場のブログに「対局が早く終了した場合も、19時半頃までは解説会を行います」とあったのでここで総括して終了かと思い帰り支度をはじめたが、丸山は「途中から来た方もいるので初手から並べます」と、それが当たり前のように駒を戻しはじめる。ここからなんと25分の解説が続いた。終了は20時ちょうど。サービスの30分、長いフィナーレであった。「永瀬七段は誕生日が一緒で他人とは思えないですし、渡辺棋王は子どものころから一緒に研究会をしていたので、二人とも応援したいです。次の将棋も楽しみですね」と閉会。

さて、ここまで読んでくださった方はお気づきだろうか。丸山は永瀬を「永瀬さん」「永瀬七段」「永瀬挑戦者」と三通りに表したように思える。しかし、実は四通りなのである。「永瀬ななだん」と「永瀬しちだん」があったのだ。つまり、丸山の中で「ななだん」と「しちだん」が定まっていないということなのである。丸山はB級1組を一期で抜けA級八段となったため自身はたった一年しか七段ではなく、四段から九段まででもっとも短かった段位が七段とはいえ。ほとんどの将棋ファンは己がななだん派かしちだん派かの自覚があるのではないか。居飛車党か振り飛車党かよりもはっきりしているのではとすら思う。解説の機会が少ないから「七段」を口に出すこともあまりない、よって定まらない。ななだん派かしちだん派かすら謎の棋士、丸山は想像以上にふわふわしていた。

今度丸山が解説する際の対局者は七段であってほしい、そんな小さな願いが私に生まれた夜だった。またね、丸山九段。

参考画像:ふわふわした丸山


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