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【後編】ジェフ千葉2023年の総括

最終戦となった東京ヴェルディとのプレーオフ準決勝を振り返りながらジェフの2023年をダラダラと総括していきます。

前編、中編はこちらとなります。


遂にキックオフ。待ちに待った運命の90分が始まった。

私はこの試合、最初の20分でジェフが先制点を取らない限り、かなり厳しいものになると思っていた。
ジェフはシーズン後半から調子が上がってきたものの、最初の20分までに先制点が取れないといずれも厳しい試合になっていた。
ましてや前回対戦で2点リードしていたにもかかわらず、逆転された東京ヴェルディが相手となる。
序盤の先制点が何よりも大事だと思った。

逆に最初の20分で先制点が取れないときに何ができるのか。
交代で入るのは米倉選手、福満選手だろうが、交代で戦い方を変えるというよりは燃料を再注入する感じ。
これまで通りであれば大きな戦術の変更というわけではなく、一辺倒な戦い方になるだろう。
この試合ではどのような展開が見られるのか、不安と期待を込めて声援を送った。

田口選手のフリーキック

前半はじめの田口選手のフリーキック。
大きく放物線を描いたボールはゴールに吸い込まれていった。
私はゴールに入った瞬間にレフェリーの旗が上がったのが見えてしまったのであまり喜べなかった。
周りはかなり盛り上がっていた。
こういう一喜一憂ができるのも楽しい。
あとでハイライトを見る限り、あれはオフサイドではないと思った。
この場だけは負け惜しませてほしい。

そして前半17分。
田口選手の浮かせたスルーパスが田中選手へ通り、サイドを駆け上がって中央の呉屋選手へ。
シュートは枠内に飛ぶもマテウス選手のナイスセーブに阻まれる。
これが前半最大の決定機だった。

やはり田口選手は上手い。
トラップ、ボールの運び方、一つ一つが計算されているように見える。
相手が取れないところ、見えない場所にボールを運び、意図的なパスを送る。
天才的なセンスと想像しえないほどの努力の賜物なのだろう。
このサッカーエリートをジェフで見られていることがとても幸福だ。

20分が過ぎた。
やはり徐々に強度が落ちてきた。
躍動感がみなぎるドゥドゥも転んで時間を止める回数が増えた。
ジェフにとって厳しい時間帯に入ったことを感じた。

結果的にそのあとに2点取られ、前半が終わった。
勝たないと上がれない試合で2-0。
誰が見ても厳しい状況だった。
しかし、選手を信じて応援すれば奇跡が起きる。
そのことをジェフは2008年に体験している。
望むところだ、奇跡をつかむんだ。
周りからはそんな気合も感じられた。

ハーフタイムのようす

後半は小森飛絢選手が出てきた。
今年大ブレイクしたニューヒーローだ。
飛絢選手を語る上で、大卒一年目というワードは必要ない。
ルーキーというフィルターを取っ払っても、彼はスペシャルな選手なことは明らかだ。
まず、決定力が抜群に高い。
彼がペナルティエリアでボールを持つと必ず決めてくれるという安心感すらある。
ボールを持ったときの落ち着きと正確さはすごい。
チームのために気が利くプレーができることも魅力だ。
トップの選手にもかかわらず中盤に下りてきてボールを捌いたり、リンクマンとしての役割もできる。
これはシーズン途中からできるようになったように思う。
こんな実力もあり、成長が早い選手はなかなか見たことがない。
試合前の練習中、必ずと言っていいほど小森飛絢選手に目が向いてしまう。
彼はボールタッチ、シュートが他の選手と比べても別格に上手い。
これまでジェフの選手の練習風景を見てきたなかで、長澤和輝選手と小森飛絢選手。
この2人は別格だと感じた。
おそらく小森飛絢選手は海外でも全然通用する。
そのくらいの実力、ポテンシャルを秘めた選手だ。

後半が始まり、ジェフの猛攻が始まった。
それでも強度は前半より落ちており、なかなか得点まで結びつかない。
そんななかで小森飛絢選手がやってくれた。
ボールを受けると相変わらずの落ち着きで一人かわしてシュート。
マテウス選手にあたるが、ボールの勢いは変わらず、ゴールに吸い込まれていった。
これにはスタンドが大きく沸いた。

まだまだいける。
あと2点取れる。
絶対に勝てる。
そう確信した。

75分くらいだったか。
ジェフ側のゴール裏から「Win By All」の大コールが響いた。
地鳴りのような地の底から突き上げてきたエネルギーがスタジアム全体を包むように感じた。
これまで見てきた試合でここまでの大きなコールを聞いたことは無かったと思う。
そのくらいすごかった。
「Win By Allはジェフサポの最終兵器。そう容易くコールするもんじゃない。」という文言を前にどこかで目にした。
今年は状況が状況だっただけに例年よりも多く使われたように感じる。
私はWin By Allというコールを出し惜しみせずに積極的に使っていいと思う。
まず、短くて音が響きやすく、一体感がある。
また、ジェフのチャントの中で最も分かりやすくて簡単だ。
これがきっかけになってジェフに声援を送ろうという新規サポも増えると思う。
私の妻もこのWin By Allは速攻で覚えられた。
来年以降も今年と同じ頻度で使ってほしい。

サポーターからの期待とは裏腹に時間は無情にも過ぎていった。
交代選手が投入されても状況は変わらず、結果として1-2で敗れた。

ジェフの2023年が幕を閉じた。

東京ヴェルディに1-2で敗れ、ジェフの2023年は終わりました

これでジェフは2023年も昇格できず、来年は15年目のJ2リーグで戦うことになる。
おそらく2009年の降格時点でこんなに長いJ2生活になるなんて誰も思っていなかっただろう。(江尻さんもまさか東京ヴェルディのGMとしてジェフを相手に昇格争いをするなんて思ってもみなかっただろう。)

スタジアムからはため息やブーイングはほとんどなく、選手を後押しする声が響いた。
「俺たちの誇り、ジェフユナイテッド。何も恐れずに、ともに戦おう」
このチャントが歌われたとき、2017年のプレーオフ準決勝名古屋戦を思い出した。
このときは名古屋に所属していた田口選手のハンド疑惑もあって、試合後には「ハ・ン・ド!ハ・ン・ド!」のコールがどこからともなく発せられた。
10回くらい繰り返した後に少しずつ音は小さくなっていった。
今回はそういった相手選手に向けたコールは無く、純粋にこれまで戦ってきた選手を労うチャントが歌われた。
サポーターもいろいろ経験して成長しているんだなと感じた。

試合後に選手を待つサポーター

後ろのほうの席からは嗚咽交じりの声が聞こえた。
「悔しいよ、悔しいよ」と涙していた。
「今ここにいる全員が悲しいんだよ」と言う声も聞こえた。
うん、そうだ。この場にいるみんなが辛い現実と向き合っている。
そんななかでも戦った選手を称えたい、来年また頑張ってほしいと声を振り絞っている。
そう思うと、この光景が美しく見えてきた。
泣きそうになった。

選手がロッカーへと帰ったため、帰り支度をして飛田給駅へと向かった。
道中はスタジアムに集ったサポーターで溢れかえっていた。
悲喜こもごもとはまさにこのことだ。
飛田給駅は入場規制されるほどだった。
こんなことあるのかと驚いた。

大混雑の飛田給駅

次に飛田給駅に来るのはいつだろう。
そんなことを考えながら新宿行きの電車に乗った。

辛いことも多かったけれど、楽しいこともたくさんあった一年だった。
そしてジェフがまた一段と好きになった。

「来年こそはJ1昇格」

例年よりも少し長いオフシーズンを、そう期待を込めて過ごしていきたい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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