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イタリア史好きの原点

こんばんは、もこみです。
以前読書の話題で触れたように、私は普段ミステリーしか読まないのですが、ほぼ唯一の例外が西洋歴史小説です。

私の西洋史の原点

私は大学時代西洋史のゼミに所属しており、ルネサンス期イタリア、特にメディチ家に興味を持っていました。
そんな私がイタリア史に興味を持つきっかけとなった本があります。
それがこちら、森川久美さんの『シメール』です。

『シメール』森川久美著

「え、漫画?」と思われた方、「漫画かーい!」とツッコんだ方もいるでしょうが、まさに漫画によって、私の大学時代の専攻が決まったのです。

なぜこの漫画が家にあったのかは分かりません。
ちなみに、当時家にあったのは文庫版ではなく、単行本。かなり古いもので、私が買ったものではないので、おそらく姉か兄のものだったのでしょう。
少女漫画ということから考えると、姉のものだった可能性が高いですが、およそ歴史に興味がある人ではなかったので、いまだに謎のままです。

『シメール』森川久美著

そのあらすじは、

パリ有数の実業家の家に生まれ、幸せな少年の日々を送っていたイヴ・ラクロワ。しかし、悪徳実業家クラマールらの陰謀で両親を死に追いやられ、彼は、深い傷を負った胸に復讐を誓う。
月日は流れ、パリの舞台に彗星のごとく現れたひとりのアクター。彼こそは、とある後見人を得て、旅芸人から一流の役者となったイヴだった……。
19世紀末、悪の華パリを舞台に森川久美が華麗に描く、黄金熾天使復讐譚!!

舞台は19世紀末のパリ、内容もミステリー要素を含む復讐譚。ここからなんでイタリア史⁈と思われるかも知れません。
ストーリー的にはまったく関係ありませんが、冒頭アレッサンドロ・デ・メディチ暗殺事件を題材にした芝居で、主人公イヴが演じているのが、その犯人と言われる暗殺者ロレンツィーノなのです。

アレッサンドロ・デ・メディチ暗殺事件

簡単に説明すると…
メディチ家とは、ルネサンス期フィレンツェにおいて実質的な支配者として君臨した一族。貴族ではなく、銀行業で成功した一族で、当時共和政だったフィレンツェの政治の中枢に食いこみ、政府の実権を握ります。
アレッサンドロ・デ・メディチは、16世紀前半のメディチ家当主であり、フィレンツェ公。1537年、同じメディチ家のロレンツィーノ・デ・メディチに殺害されました。

記憶に残る森川久美さんの作品

私が西洋史に興味を持つきっかけとなった森川久美さんですが、他にもたくさんの作品を描かれています。
私が読んだのはほんの一部ですが、その中でも特に記憶に残っているのがこの2作品。

「君よ知るや南の国」

19世紀半ば、オーストリア統治下のミラノを舞台に、オーストリアからの独立を目指す革命の波に翻弄された姉弟の物語。
両親は反乱の首謀者。姉は女性だからと許され貴族の養女として何不自由なく育ち、弟は危険分子とみなされ幽閉。17年後、救い出された弟は自由と立憲を目指す秘密結社カルボナリ党の一員となり、出自を隠したまま姉と再会する。
長年の幽閉により身体を蝕まれながらも、姉の幸せだけを願う弟の想いと、真実を知った時の姉の慟哭が子どもながらに衝撃でした。

「ヴェネツィア風琴」

カーニバルでヴェネツィアを訪れた道化師のマルコは、名門フォスカリ家の少年ジェンティーレと出会う。時代設定は定かではありませんが、18世紀末から19世紀初頭ぐらい?
父親の事業の失敗により貴族とは名ばかりとなった家を背負うジェンティーレと、過去に犯した罪から逃げるように故郷を出奔し道化師となったマルコ。
衰退に向かうヴェネツィアを象徴するような2人が出会い、惹かれ合い、過ごした数日間。
カーニバルなのに、太陽の光が降り注ぐ明るいイタリアではなく、退廃的な倦んだ空気が漂っているのが印象的な作品でした。
「生きていくことは死につつあるということ」という主人公の言葉が今でも心に残っています。

どちらもイタリアを舞台にした作品。
フィクションである以上、完全に史実通りとは限りませんが、ルネサンス期以外のイタリアにも興味を持つきっかけとなりました。

森川久美さんの本は残念ながらすでに絶版となっていて、電子書籍化もされていません。
手に入れようと思うと、中古本を探すしかありません。
『シメール』も、数年前にたまたまネットで見かけて衝動買い(というほどの金額ではありませんが。笑)したもの。
最近の漫画にはない、耽美的な独特の世界観を持つ作品が多いです。
興味を持たれた方、ぜひ見つけたら一度読んでみてください。

西洋史と言いつつ、漫画の話ばかりでしたが、私が西洋史、イタリア史に興味を持つきっかけとなった本の話でした。
歴史小説の話はまたの機会に。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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