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フィンランド留学記#4 目標を持つ人の前に道は開ける

留学して1カ月が経ったころ、オウルにあるフィンランド日本協会によってイベントが開催され、私たち日本人留学生が招かれた。イベントの主旨は協会の周年行事だったが、9月にオウル大学へきた日本人留学生たちが、オウルに住む日本人や親日家のフィンランド人たちの前で自己紹介をする時間もあった。

そのとき、日本人留学生の1人、A子ちゃんが話した内容が今も印象に残っている。名前を言ったあと、こう言いきったのだ。

"I came here for skiing."(わたしは、スキーのためにここに来た)

彼女は大学でカントリースキー部に入っていること、北欧諸国の中でも山が少なく、カントリースキーが盛んなフィンランドを留学先に選んだこと、苦労して日本から自分の使い慣れたスキー板を持ってきたことを話した。

留学の目的について、「英語を勉強するために…」「フィンランドの教育を学ぶために…」と話す留学生たちの中で、彼女の言葉は際立っていた。そして、現在、オウルの高校生たちが所属するスキーチームの練習に参加し、毎日のトレーニングに励んでいることを紹介していた。

わたしは驚いた。オウルに、高校生たちが練習するスキーチームがあるなんて、知らないどころか、想像したこともなかった。彼女は「スキーのためにここにきた。」だから、つねに彼女のアンテナはスキーに関するものを探しつづける。アンテナに引っかかった情報をたどると、どんどん次の扉が開き、スキーができる環境に近づいていくのだ。目的をもたず、アンテナをはらない人の前に、新しい扉は現れない。スキーに興味のないわたしの視界に、地元のスキーチームという存在が入らなかったように。

もともと、フィンランドのジェンダーを知りたい、学びたいという気持ちで留学したわたしだったが、その日から、ジェンダーに関するものを探すアンテナをはることを意識的に行うようになった。また、その他に立てていたいくつかの目標についても、同様にアンテナをはることを心がけた。そして、それを口に出して周りに伝えた。

例えば、「フィンランドで働く経験をしたい」というのも目標の1つだったのだが、それをフィンランド人の友人に話すと、「数年前にオウルいた留学生が、幼稚園でインターンシップをしていた」という情報をもらった。大学のサイトで検索すると、今年も幼稚園でインターンシップのできる授業が開講されることがわかり、無事に受講してフィンランドで無給ながら就労経験を得ることができた。すべての目標が達成できたわけではないけれど、この心がけのおかげで叶ったこともたくさんあった。

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