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どんな仕事でも男女の能力は均等か?

(ふうちゃん様、イラストありがとうございます。)



1、機材搬入のアルバイト

15年くらい前、私が勤めていた会社で現場の仕事がありました。
大量の機材を使用します。
現場までその機材を搬入するアルバイトさん20名を手配するのが、私の仕事です。

人材派遣会社にお願いすれば簡単なのですが、経費節約のため自前で採用することにしました。

やり方は極めてシンプル。
求人広告を出して、メールで応募してもらいます。

仕事は、会場搬入口にてトラックから下ろした機材を現場まで担いで運ぶ肉体労働です。
重い機材も多くなかなかハードですが、基本的には誰でもできる簡単なお仕事なので、事前の選考も面接も行いません。
先着順に採用し、日時・場所をメールで伝えて、あとは当日現地集合。
約5時間の作業完了後に、現金でお給料をお渡しして終了です。

そのアルバイトさんのなかに、3名ほど女性がいらっしゃっいました。

当然、女性にも男性と同じ仕事をお願いします。
しかし、体力勝負・筋力勝負のお仕事です。
男性なら一人で運べる機材も、女性の場合は二人がかりになってしまうシーンが多々発生しました。

この事態、どう判断したら良いのでしょうか。

2、男女雇用機会均等法

事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

男女雇用機会均等法 第5条


(実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置)
労働者の募集又は採用に関する措置であつて、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの

男女雇用機会均等法施行規則 第2条1項

この機材搬入のお仕事は、求人広告を出して募集しました。

この法令によれば、募集広告には「男性募集」「男性歓迎」という表現はもちろんのこと、「体力に自信がある人」など男性限定を匂わせるような表現もNGです。

募集や採用に関して男女の機会を均等にすることが求められています。

ただし、世の中には「男性であることが絶対条件の仕事」「女性であることが絶対条件の仕事」は、稀ですが確かに存在します。
法令で認められている具体例は以下のような職種です。

男性モデル・女性モデル・現金輸送車のガードマン・スポーツ選手・巫女・神父など・・
芸術・スポーツ・宗教・・極めて狭い範囲。
たいていの人は一生ご縁のなさそうな仕事が多そうです。

そのような職種のみ極めて限定的に、性別限定の募集や採用が許されていますが、単に肉体労働だから男性限定という募集や採用は許されていません。

したがって、メールでご応募いただいたときも、先着順以外の基準は設けず採用をしました。

女性のアルバイトさんほうが少なかったかったのは、単に応募が少なかっただけの理由です。

私たちは、法令に基づき男女均等の雇用をしました。

3、労働基準法の男女均等

使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

労働基準法 第4条

アルバイト終了後に現金でお支払いしたお給料は、当然ながら男女同じ金額です。

法は、「女性であることを理由して」賃金の差別してはならない、と書いています。

しかし、女性が理由ではなく仕事の能力が理由であればどうでしょう。

機材搬入の仕事は、中学校の理科で習う文字通りの「仕事」、
つまり(荷物の)重さ ×(担いで歩く)距離 で成り立つ性質のものでした。

たくさん「仕事」をする能力のある人が高い報酬をもらうのはある意味当然です。

男女に関係なく、一人ずつ「重さ×距離」の仕事量に応じた出来高でお給料をお支払いできれば問題はないのですが、5時間で終わる短時間のアルバイトに、そんな複雑な給料計算システムを導入することは現実的ではありません。

そうなると、仕事量に応じてと云っても、一般論で「女性は筋力が弱いので、男性一万円・女性七千円」となってしまい、明らかに労働基準法違反となってしまいます。

私たちは当然、法令どおり男女に同じ金額の賃金を払いました。

4、男女の能力は均等か?

筋力は男女で明らかに異なります。
こればかりは生物学上、いかんともし難い事実です。

個人個人で見れば例外もありますが、男女間で筋力に決定的に差があるからこそ、スポーツの世界でも男女を分けて競技を行います。

私は、これまでの仕事経験から、男性と女性で仕事上の能力に差はないという実感を持っていますが、単純な力仕事のようにどちらかといえば男性向きの仕事、反対に女性向きの仕事というのは、確かに存在するとも感じています。

例えば、パソコンに向かって長時間入力・チェック・処理などをする仕事。
あくまでも傾向値ですが、女性のほうが早く正確です。
個人の感想なので、根拠は薄いですが・・・

看護師さんも患者さんの体に直接触れる仕事なので、男性には制限があるように思います。

しかし、ここが頑張りどころ。
そんなふうに、「これは男性向き」「この仕事は女性向き」などと恣意的に言ってたら、人によって見解も違うし、男女雇用機会均等はなかなか前に進みません。

「パソコン入力は女性向き」などと訳のわからないことを言うおじさんも出てくるし・・・

この20年間、多少の矛盾があったとしても力技で性別による職業の限定を禁止してきたからこそ、今は男女関係なくいろいろな仕事に挑戦できるのが当たり前の時代になったのだと思います。

そういう意味でこの男女雇用機会均等法を作った役人の方は、とても頑張ったと思います。


5、余談

本日、大谷選手の結婚インタビューがありました。
個人的にはさほど関心がないのですが、今朝のテレビはこの話題ばかりだったので、インタビューが自然と目に入りました。

あきれたのは記者の質問。
「奥さんの手料理は食べているのですか?」
「お子さんは?」

令和の時代にこんなことを公の場で言っているのは、テレビの人たちだけですね。

つまらないし、古い。

テレビ離れがすすむのも無理はないと思いました。

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