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年金繰り下げの損得&配偶者との年齢差


1、年金の繰り下げ・繰り上げとは?

年金の繰り下げは得なのでしょうか。損なのでしょうか。

年金繰り下げとは、本来65歳から支給される老齢年金の受け取り開始時期を遅らせること。
75歳まで遅らせることが可能です。


1年遅らせるごとに、年金支給額は8.4%ずつ増えていきます。
70歳まで遅らせた場合、年金額は42%増。(8.4%×5年)

一方、年金の繰り上げ制度というものもあります。

繰り上げとはその反対、老齢年金の受け取り開始年齢を早めることです。
60歳から受け取ることが可能。

1年早めるごとに、年金額4.8%ずつ減っていきます。
60歳から受け取るなら、24%減。(4.8%×5年)

仮に、本来65歳から月10万円の年金を受け取る人は、70歳まで我慢すれば月14.2万円。
60歳からさっさと貰い始めれば、月7.6万円です。

問題は、いつから年金をもらい始めるのが得なのか、ということ。

結論は「それは誰にも分からない」「ちなみに配偶者との年齢差も忘れないでね」です。

2、年金は保険、「長生き」は事故。

そもそも、年金は保険です。

現役時代に保険料を払い、以下の事故に備えています。
①老齢で収入がなくなる
②現役中の障害で収入がなくなる
③死亡で収入がなくなる

①を事故というのは、少し違和感があります。

しかし、「老齢年金は年を取って働けなくなり、収入が途絶えるリスクをヘッジしている保険」というのが本質です。

老齢年金が支給されている状態とは、①の事故が継続している状態ですので、生存している限り支給は続きます。

亡くなると、そのリスクは消滅するので、年金支給も終わります。

金額面の損得だけでいえば、年金は「長生きするほど得」という「生き残りゲーム」です。

3、繰り下げ・繰り上げの損得は?

老齢年金は亡くなってしまうと支給されなくなってしまうので
・長生きする場合は、支給開始年齢を遅らせて、その分毎月多く受け取るほうが得
・長生きしない場合は、少ない額でも早めにもらうほうが得
となります。

具体的には、およその計算上では
70歳まで支給を繰り下げた場合→87歳以上生きれば得
60歳で支給を繰り下げた場合 →81歳以上生きれば損
となります。

けれども、老齢年金を受け取る手続きをする時点で、果たして自分は長生きできるのか、できないのか、なんて誰にもわかりません。

亡くなるときに初めて収支が判明します。

「老齢年金を何歳から貰うのか・・・」
多くの人にとって決断のポイントは、このような「生存期間で見た損得」ではないでしょう。

もっと現実的なはずです。

①年金を貰わないとした場合、今の収入や資産で生活できるのか
②もし生活できるなら、その状態はいつまで続けられるか

決断するポイントは上記2点のはず・・・

①が❌なら、迷わず年金受給の手続きをするしかないでしょう。

①が○で、
しかも②が生涯に渡って続く見通しがあるのなら、自分の望む年齢から受取開始でよいかと。
とても幸せな老後だと思いますが、少数派でしょう。

①が〇でも、
②が例えば「今の家計がキープ出来るのは、68歳までとか、70歳まで」など予測できるのであれば、その時まで支給を遅らせるのが合理的です。

繰り返しますが、自分が何歳まで生きられるか、未来のとこはわかりません。

したがって、何歳から年金を受け取るべきかの決断は、生涯受け取る金額の損得ではなく、今と将来の家計の見通しから判断するしかありません。

4、忘れちゃいけない配偶者との年齢差

サラリーマンの方が受け取る老齢厚生年金には「加給年金」という制度があります。

内容は、
老齢厚生年金を受け取る65歳以降、前年年収850万円以下・65歳未満の配偶者がいれば、年金額が約39万円(年額)加算されるというものです。

自分が65歳で老齢厚生年金をもらい始めてから、年下の配偶者(年収850万円以下に限る)が65歳になるまで、年金額に年間39万円が加算されます。

ただし、老齢厚生年金の支給を繰り下げると、当然加給年金の支給も併せて遅くなります。
老齢厚生年金と加給年金はセットなのです。

さらにいうと、年金支給を繰り下げても、加給年金額はそれに伴い増額される訳ではありません。

つまり具体例でいうと、自分より5歳以上の若い配偶者のいる人が、年金支給を5年間繰り下げ、70歳から受け取り開始をすると、加給年金分200万円弱の金額を損するということ。

ちなみに、年金支給を繰り上げても、加給年金は支給されません。

加給年金は本人が65歳前に支給されることはないので、繰り上げても得はしません。

年金繰り下げ・繰り上げについての説明は以上です。

よくネットやYouTubeで、「年金の繰り下げは得か損か」などの話題を見かけますが、結果は亡くなって初めて分かることですので、そこをあまり深く検討しても意味がない、というのが私の意見です。

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