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その経費節約、意味ありますか?


1、日本の会社の経費節約


以前会社で宣伝広告の仕事を担当していたときのこと・・・

当時私の会社では、社内間の連絡書類などを送るとき、使用済みの封筒を利用するのが慣習でした。
目的はもちろん経費の節約です。

ある日、10か所くらいの社内部署にお手紙を送ろうとしたのですが、あいにく使用済み封筒のストックがありません。

仕方がないので、お客様向けに製作している新品の封筒を使って、書類を各部署に送りました。

翌日、書類を受け取った部署の責任者のひとりから、私に苦情が届きます。

「なぜ新しい封筒を使うんだ?」
「もったいない」
「経費管理はどうなっているんだ」

まぁ、分からなくはないですが・・
「経費管理ができてないのは、どっちだよ!」っていうお話をこれからします。

2、封筒は安い、給料は高い

当時、会社の封筒1枚あたりのコストは、確か7円くらいでした。
(正確には忘れたけど・・・)
私は会社の新しい封筒を10枚使用したので、70円の経費を使ってしまいました。

いっぽう、当時私の給料は時給換算で1,800円程度だったと思います。
あのとき古い封筒は私の周りにありませんでしたが、もし社内を捜索して回れば10枚くらいは掻き集めることができたかもしれません。
でもその作業に最低15分は掛かります。
15分の時給は450円です。

会社の収支の観点から見ると、70円の備品経費を節約するために、450円の人件費をかけたことになります。
収支が全く合いません。

もちろん使用済みの封筒が手元にあるなら、それを使うほうが確かに合理的です。
でも、無いときに、わざわざ捜していたら逆に人件費の無駄になります。
さっさと新しい封筒を使って書類を送り、別の仕事に取り掛かったほうが会社としては儲かります。

私は以前から、「日本のサラリーマンは人件費に対するコスト感覚が希薄だ」と感じています。

あまり深く考えず、ただ「頑張ることが大切」
この感覚が、日本の企業を蝕んでいると思っています。

3、ヒトが労働をして利益が生まれる

宣伝費、設備投資、備品費、人件費・・・
会社には様々な経費があります。

そのなかで、会社に新たな利益を生み出してくれるのは人件費だけです。

いくら工場に設備投資をしても、最新のOA機器やシステムを導入しても、それを使ってヒトが労働をしなければ、新しい価値は生まれません。
それらモノは、ヒトの労働(業務)を効率よく回すためのツールにすぎません。

投入した人件費に対して、いかに利益を大きくするか・・
従業員の生産性をいかに向上させるか・・

会社はそのために、設備に投資したり、機器を導入したり、福利厚生を充実させたりします。

みなさんは新しい家電に買い替えるとき、2~3万円をケチってスペックの低い商品を選び、使ってみたら不便で後悔した・・という経験はありませんか?

私はいつもです・・

会社の経営も同じです。
もったいないからと言って、業務の効率を向上させる設備や機器、システムの導入をケチり、従業員の労働でカバーしようとすると、結局業務の生産性が落ち、会社の利益が向上しません。
結果、外国との競争にも負けてしまいます。

使用済みの封筒を捜したり、1枚ずつコピーをしたり、電卓を使って経費の仕分けをしたり・・

無駄な努力だと思います。

更にいうと・・
・ちまちまとした経費削減を目的とした「なんとか活動・運動」(たいてい社長の思い付き)

・ベテランさんがプライドで牛耳っている事務(市販ソフトでも使用すればあっという間に終わる業務)

そのような生産性の低い、さほど利益を生まない業務に多大な人件費を使うべきではありません。
それらは精神論でしかありません。
人件費はもっと高い利益を生む、生産性の高い業務に対して掛けるべきです。

4、失われた30年の正体

この国に「失われた30年」をもたらした原因。
それは、日本のサラリーマンの生産性の低さだと私は思っています。

80年代後半くらいから世界的にデジタル化の波が起こり、2000年以降はそれにより世界各国の生産性や所得は著しく向上しましたが、日本はその流れに完全に乗り遅れました。

原因は以下のとおり。
①日本のサラリーマンが、デジタル化の本質を理解できなかった。
②また、その勉強もしなかった。
③そのため、昭和から継承したやり方を根本からは変えられなかった。

私はシステム・ソフト・プログラムといった領域の専門家ではありませんが、いくつか企業を見て感じたのは「どこもコンピューターの使い方が下手」ということです。

・複数のシステムがあっても、それらが連携されていない
・部門間や事業所間、企業間でもデータやシステムが連携されていない
・根本的にデータベースが共有されていない

そのため、あらゆる業務の局面で、システムから別のシステムへデータを流用する際、結局は人がエクセルに数値を手入力しています。
これでは生産性はあがりません。
本来システムが安いコストで出力してくれる集計データを、給料の係るヒトが作っているのですから・・

昭和はアナログの時代だったので、熟練・勘・根性・長時間労働などを武器に、日本のサラリーマンは勝つことができました。

たいした効果のない「経費節約運動」も、従業員が団結して取り組むことに意味があったのかもしれません。(知らんけど・・)

でも現代は明らかに違います。
ネットを背景したビジネスモデルの前では、日本のサラリーマンが培った経験や団結力はあまりに無力です。

もうすぐバブル世代がビジネスの一線から退きます。
この世代がいなくなる次の10年こそ、世界に伍して戦えるデジタルネイティブな人材が数多く輩出されることを切に願っています。

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