People In The Boxとかいう世界最強の3ピースバンド
3ピースバンドっていいですよね。
3、と言う数字が絶妙ですよね。
三角形を思い浮かべてください。
△
どうでしょう。美しいですよね。しかもすごく安定して立ってそうに見えません?
ただ、これをちょいとひっくり返すと…
▽
一気に心許ない安定性になりますよね。
つまり僕がなにを言いたいのかというと、3ピースバンドも三角形という図形と同じように、油断すれば一気に不安定に陥る危うさ、そこも含めての美しさがある、ということ。
前置きが長くなったが、個人的に世界最強の3ピースバンドと思っているPeople In The Boxのライブを観に行ってきたので、熱冷めやらぬうちに感想を書いていこうと思う。
People In The Box(以下、ピープル)のライブを観るのは2回目。初回は2022年の9月に仙台で「People In The Boxの正弦定理」というツアーの初日を観て、それが人生初ピープルのライブだったのだけど、
①キャリア総括セトリ
②バッチバチの演奏
③激ゆるMC
の三拍子で完全にノックアウトされた。
そして、今回。「春の航海」と題されたツアーが発表されたとき、僕は目を疑った。
「盛岡」があるのである。
このふた文字を発見した時の僕の脳内の盛り上がりは、オリンピック東京招致が決定した時のそれと同様と言っていい。脳内で北島康介が咆哮した。
ほぼ無意識にチケットを取っていた。
なんと整理番号、3番!!
ちょー気持ちいい。
というわけで当然のようにボーカル波多野さん側の最前を取れてしまったのである、、、
最善の特権、ペダルボードを撮影したのでご査収ください。
客層を見渡すと、チャラい人やザ・ライブキッズは全くの皆無。みんな文系というか、男子も女子も美術部や書道部に入ってそうな静かな人たちばっかりで、心地よかった。女子率が高めだったかな。
最前ということでもうドッキドキだった。そして人生初の最前で気づいたのは、「柵に脱いだ上着掛けられて便利」ということである。ライフハックですこれ。
オンタイムで暗転、馴染みのSEであるジム・オルークの"And I'm Singing"が流れる。
ちょっと緊張感があって、なおかつアンビエントな曲調がピープルにピッタリハマってて大好きな曲だ。
さて、ここからですが。
セトリのネタバレを大いに含みますので、それが嫌な方はここでブラウザバックをお願いします。
この区切り線↓の下はネタバレ王国だぞ!きをつけろ!!
また会おうね!!
1曲目からもう、倒れそうだった。大名盤『Ghost Apple』から"月曜日/無菌室"。
あのドラマチックなコンセプトアルバム、何度聴いたことだろう。早速感情のメーターが振り切れる。歌い出しの歌詞、大好きなんである。
もうすでにクライマックスのような空気になった後、それを切り裂くように鳴り響いたのは、新譜『Camera Obscura』より"スマート製品"。
ぼくね、こういうね、ピープルのスリリングな曲調のやつね、だいすき。
畳み掛けるように繰り出されたのが"ベルリン"!!
なんで合うの?あんたら機械なの?と言いたくなるようなキメ連発の曲。もう、バッチバチであった。福井さんのベースもダイゴマンのドラムも全く狂いがない。狂いがないどころか音源を軽く超える獰猛性を存分に発揮していた。やっぱりライブは最高だ。
"Red light, Green light"という歌詞に合わせ、照明も赤と緑で明滅していた。ナイスお仕事である。
そこから"螺旋をほどく話"。
いやあ、良い曲だよなぁ、、、、
デビューして15年経って、新たにこんな新鮮で強烈な曲を生み出せるの、すごいよなぁ、、、
ピアノのフレーズをギターで再現する波多野さんも、絶品のコーラスを聴かせる福井さんも、スティック落としちゃったダイゴマンも好き。
確かここで1回目のMC。波多野さんが喋った。
「盛岡は確か…6年ぶり?ですか?合ってる?」
僕 (頷く)
波多野「(僕の方を見て)だよね!…お待たせしました!」
なんと会話が成立した。
最前ってすげぇ。
続いて、『Wether Report』より"潜水" 、『Citizen Soul』より"親愛なるニュートン街の"、『Calm Society』より"数秒前の果物"が演奏された。
これらの曲、ぶっちゃけ普段はそんなに聴いてない曲たちだったのだけど、いやはや、、良い曲すぎる、、、、。まじでよかった。このへんはライブ終わってからというもののリピートしまくってます。かっとざふるーつ、の繰り返しがくせになる"数秒前の果物"のギターソロ、とんでもなかった。
からの、超初期の名曲"鍵盤のない、"である。
僕の隣のお姉さん、イントロで胸に手を当てて、ふわー、みたいになってた。わかる。
この曲もまた波多野氏の変態ギターが炸裂する。もう僕ギターボーカル名乗るのやめます。「ボーカル&ギター首から下げニスト」とかにします。
そしてここでピープルのライブ名物、ダイゴマンのMC。
メンバー各々、水飲んだりチューニングしたりして沈黙が訪れたのだが、それをかき消す第一声は「…げんきぃー?」
「さっきねぇ…『螺旋をほどく話』って曲でねぇ…スティックを落としたんですよ」と、言わなきゃバレないかもなのに正直にいう。
「だからね、サービスで普段叩かないココ(シンバルを指差して)をね、多めに叩いたよ、4回。特別にね」とわかる人にしかわからないサービスをしてくれた。
「じゃ、そんな曲やりまーす」から繰り出された"そんな曲"は、僕が大好きなアルバム『Kodomo Rengou』からの"泥棒"!
これはかなり嬉しかった。皮肉たっぷりの歌詞と不穏な曲調が最高なのだ。
そして、ここからのセトリの流れはもう、完璧。
"水晶体に漂う世界" の福井さんのコーラスワークがこれまた良い。良いバンドはコーラスワークが良いのである。ボーカルだけが上手い、のではないのだ。ここテストに出るからな。
そしてこれまた『Kodomo Rengou』から"動物になりたい"。
からの、"いきている"、"真夜中"。
この3曲の流れがもうね、最高だったのですよ。
ピープルは変拍子バッチバチの曲も最高だが、こういう穏やかな曲たちもめちゃくちゃいいのだ。
別に歌詞にそういうフレーズがあるわけじゃないんだけど、「ああ、俺も生きていていいんだな」と思えるというか、肯定されてる気分になるんすよ、聴いてると。
言ってることわかんだろ?(リアムギャラガー)
"真夜中"の波多野さんのエモーショナルなギターソロ、最高だった。ちょっとピープルっぽくないというか、すごくストレートなソロなんだけど、ピープルがやると逆にそれが変化球になるのだ。
ここで、ダイゴマンのMC再び。
「…ラウンドワン、あるんだね?」と、盛岡駅から出てすぐのところにある巨大ラウンドワンの話をなぜか始める。
で、ここから「昔メンバーでラウンドワンに行った記憶があるがダイゴマン誘われてない説」「盛楼閣(盛岡の冷麺の名店です)の冷麺は最早清涼飲料水」「盛岡駅西通のディストピア感、あれはすごく好き(波多野)」などなど、話があっちゃこっちゃ飛びまくる。
そう、バチバチ演奏からのユルユルグダグダMC。これがピープルのライブの醍醐味なのである。
恒例らしい、ダイゴマンのグッズ紹介MC(今回かなりあっさり目)を経て、ダイゴマンの「あと何曲やってほしい!?」という煽りMC(これも恒例?)が入る。
「あと2曲でいい?」
観客「えーーー!?」
「じゃあ何曲がいい?何曲やると思う?」
みんな「6!」「5!」「4!」
おれ「10!!」
ダイゴマン「10!? 10もやったら死ぬわ!!」
後ろのお兄さん「11!!」
とても暖かい空間でした。
で、結局「あと4曲いきまァす!!」という宣言からマジラストスパート。このラスト4曲もまたね、、、すごかった。
まず"天使の胃袋"。
ノイジーなギターが唸りまくる。波多野さんも身を捩りながらギターをかき鳴らす。
そして"DPPLGNGR"!新譜『Camera Obscula』リリース時、再生して1曲めのこれが流れてきた時の「あ、天才じゃん」とぶっ飛ばされた記憶が蘇る。重低音バリバリ。内臓まで震える。真っ赤な照明が明滅して、暴力的な音がけたたましく鳴り響く!!死ぬ!!!
そしてそして!ついにきました、ずーーっとライブで聴きたかった"旧市街"!!!
お聴きになればわかると思うけど、狂ってるんです、この曲。第一声が
ですからね。何を言ってるのかはわからんがとりあえず信じられん歌い出しである、というのはわかる。そしてありえんほど歪んだギターとゴリっゴリのベース。そして尋常じゃない回数のキメ。
これ、ライブでマジでできんの?…なんて失礼なことを思っていたわけである。
余裕で音源超えだった。
マジで、すごかった。
マジで、ヤバかった、、、(語彙が毒殺された)
波多野さんのファズギターも、福井さんのスリーフィンガーを駆使したブリッブリのベースも、テンポキープしつつ暴れるところでは暴れる、しかしカッチリとキメてくるダイゴマンのドラムも、音源にはないスリリングさ、暴力性、エモさに溢れていて……
この曲を聴けただけでも元は取った。
最後、波多野さんと福井さんがドラムの方に集まって弾き倒す。そういうことするバンドってイメージがなかったから、驚く。最後の「ジャーンー!!」ではなんと波多野さん、ステージ中央でジャンプしてた。そんなことするんだ!!!かっけぇ!!!
そして最後の曲は"バースデイ"。これもまた初期の名曲だ。
この曲の、最初はやさしく歌っていたメロディを大サビで一気に声を張り上げて歌う、この感じ、アーニャこの感じすき。
鬼気迫る表情で声を張り上げる波多野さん。凄まじくかっこよくて、美しくて、泣きそうになった。
この曲の最後、なんと波多野さんがステージ前方
まで歩み寄ってきて、ギターを鳴らしまくっていた。
僕のもう、ほんとに目と鼻の先まで来たんである!!
テレキャスのブリッジプレートの青錆が視認できるくらい近くに、である!!!
これにて無事昇天しました。
しかも演奏後、ふたたび僕のすぐ目の前に出てきてお辞儀をし、「また会いましょう」とだけ告げて去っていった。
アンコールはなし。もっと聴きたかったけど、潔くてアリだ。
ライブ終了直後は興奮しっぱなしで、Xに怪文書をポストしたりもしてたけど、なか卯でご飯食べて煙草を吸いながら、じわじわ余韻が押し寄せてきた。この上なく幸せな夜だったし、あまりに素晴らしい空間に居たせいか、いつも最悪な人間がウヨウヨいる夜の大通りがいつもの数倍クソに見えたのであった。
とても楽しくて、なぜか遠回りして家に帰った。誰も居ない夜道を「あー、よかったなぁ…」とかぶつぶついいながら。"水晶体に漂う世界"とかを鼻歌で歌いながら。
翌日のバンド練はいつもより気持ち激しくギター鳴らしちゃったのはピープルのせいである。
最高のライブだったなぁ。
何も言えねぇ。
(おしまい)
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