現代語訳「我身にたどる姫君」(第二巻 その38)

 年の改まりを告げるようなうららかな空だったが、帝は悲しみに胸が押しつぶされそうな思いでいた。宮中の決まりである元旦の節会《せちえ》でさえ億劫《おっくう》で南殿《なでん》に顔を出さず、小朝拝《こちょうはい》などにも参加しないで、一人静かに物思いに沈んでいた。
(続く)

 年が改まり、新たな春がやって来ました。しかし、最愛の人である皇后を失った帝は悲嘆に暮れ、毎年恒例の儀式に参加する気力もありません。

 なお、文中にある「南殿《なでん》」は帝がいる正殿(紫宸殿《ししんでん》)のことで、「小朝拝《こちょうはい》」は現代の「祝賀の儀」に相当するものです。ご参考まで。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


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