現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その60)

「すべて夢の中の出来事だったと思い込み、同じ世で素知らぬ顔をしたままやり過ごそうとしてきたのに、もし姫君を関白に預けたら、ますます忘れられないきっかけになってしまうかもしれない。どうにも妙案が浮かばない。二宮の好色な心や、野山に分け入ってたちまち女を見つけ出す性癖が恐ろしく、また、権中納言が今の居場所を探し出してしまったら困ったことになる」
 皇后宮《こうごうのみや》はふさぎ込み、胸の内で苦悩し続けた。
(続く)

 皇后は姫君の幸せを優先したいと思うものの、自分と関白の関係や、姫君に恋する二人の兄たちのことを考えると、どうすべきなのか答えが出ません。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


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