現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その15)

 五月は婚儀ができない月なので、権中納言は少し心を落ち着かせた。
 まだ弱った様子でありながら、いくらか容体が落ち着いてきたのを見て、関白はとても喜んだ。
 一方、中宮は世間の人々が勝手に想像したり噂《うわさ》したりしているのをひどく不愉快に思っていたが、そういった素振《そぶ》りは見せぬように心掛け、毎日の催促もやめて、「秋には婚儀を執り行うように」と告げた。
 権中納言は何年も命が延びた心地がして、妹たちのところばかりに頻繁に顔を出した。
(続く)

 権中納言と女四宮との婚儀は半ば延期となり、権中納言は一安心しています。しかし、これまでと同じで、ただ嫌なことを先延ばしにしているだけですので、状況が変わることはありません。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


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