現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その6)

 権中納言《ごんちゅうなごん》は苦境に追い込まれていた。両親からも「本当に気分が悪そうなところがまったくないのに、いつまでこのように仮病の振りをしているのか」と責められ、一言も同情の言葉を掛けてもらえない。その上、女三宮《おんなさんのみや》のつれなさは増すばかりで、「いったい何を頼みにして生きればいいのか」と思い乱れていた。
 ただ甲斐《かい》のないことを書き尽くして送り続けていたところ、責められて困惑した中納言の君はついに折れ、覚束《おぼつか》ない夕闇の空に紛れるようにして、再び権中納言を手引きした。
(続く)

 苦境に立たされる権中納言ですが、必死に女三宮に手紙を書き続けた結果、再び逢瀬《おうせ》のチャンスを得ました。

 それでは、次回にまたお会いしましょう。


※Amazonで各種古典の現代語訳を販売しています。