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空き家銃砲店 第十二話 <雪隠>

店と家の境(さかい)、東西に走る廊下の東のつきあたりは、水回りだった。

この区画には洗面所、トイレ、お風呂があった。脱衣所も兼ねていたので、入り口には暖簾(のれん)をかける。長めの暖簾をくぐると、タイルの洗面台、右手にお風呂、左手の入り口が朝顔トイレ(小用トイレ)、奥に大用トイレと並んでいた。

奥のトイレはボットントイレ。汲み取り式で和式のすかーんと下に落ちるタイプ。今の小学生は見たこともないだろう。水さえ不要のもの。だから停電があっても懐中電灯を持って入れば使用できる。

足下にはガラス戸の引き戸。1センチの縦長ピンクベージュのタイルの床や壁をみながら、「なんでこんな場所に戸があるのだろう」と思いながら入っていた。この引き戸のカギは内側からネジで締める。ピンクの暖かい色を使っているのに、ガラス戸のせいか冬はとても寒い。私なら真っ先に改装するだろう。

父の生家も木の板にボットン式だったが、この家とは違っていた。この家のトイレはなぜかうらぶれ感があった。

おまけ

雪隠(せっちん)とはトイレの別名。祖母はご不浄と呼んでいました。祖母はいつの間にはこの洗面台を昭和60年代にふさわしく、普通の洗面台にリフォームした。タイルの掃除、大変だったんだね。


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