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-映画紹介-『亀は意外と速く泳ぐ』 君の存在感のなさはスパイに向いている!

《乱れ撃ちシネnote vol.08》 22.10.03

亀は意外と速く泳ぐ

【Introduction】

昨日の『サマータイムマシーン・ブルース』は2005年9月3日の公開、その2ヶ月前7月2日に公開された脱力系映画の傑作『亀は意外と速く泳ぐ』にも上野樹里は主演しています。

前年2004年に上野樹里は『スイングガールズ』が大ヒットし第28回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。
翌2006年にはフジテレビのドラマ『のだめカンタービレ』でお茶の間でも弾けますがぼくが愛してやまないのは小品『亀は意外と速く泳ぐ』の上野樹里です。

多くの共演者や監督から天才と噂されている上野樹里の天然ぼけさ加減が思う存分発揮されています。
何度観ても新しい発見があるほど深いオタク度で塗りつくされていて大笑いできます。
脱力系が持ち味の三木聡監督です。
全編ゆる〜いオフビートで絶妙に肩の力の抜けきったこの作品は麻生久美子主演の『インスタント沼』ともども三木聡監督の代表作と言えるでしょう。


【Prologue】

平凡な主婦片倉スズメ(上野樹里)には海外に単身赴任している夫からはほぼ毎日電話がかかってきます。
「亀太郎に餌やってくれてる?」
「うん、やってる」
「よし、OK」
スズメが何がOKなのか聞こうと思ったらガチャっと電話は切れました。

料理、洗濯、掃除、買い物、そして亀太郎に餌をやる。退屈な日々をおくるスズメ。
ちなみに亀太郎とは夫が飼っているペットの亀のことです。

ある朝生まれた時から親友の扇谷クジャク(蒼井優)から電話。
クジャクとは同じ街に住んでいますが会うのは久しぶりです。

クジャクの電話のあと配管修理に来た水道工事屋さんの事務所にトイレから出てきたイカ飯を確認しに行った帰り道のことです。
いつもスズメの行く手をはばむ100段階段。

今日は30秒で登ればいいことがあるぞと心に決めてスズメ猛ダッシュ。
懸命に駆け登っていると階段の上を通りかかった大量にリンゴをつんだリヤカーが倒れて何十個ものリンゴが階段を雪崩落ちてきました。

危険を感じて階段の途中に身を伏せたスズメの体の上をリンゴが流れ落ちていきます。
身を伏せながらふと脇の手すりの根もとを見ると切手代のチラシが。
「なんだこれ?」
〈スパイ募集 委細面談 045−682−76✕✕〉

ルーズで自分勝手なクジャク(蒼井優)にくらべどんな場所で誰と話していても自分の存在感のなさに失望しているスズメ。
このままでワタシの人生は終わってしまうのだろうか?

ある日スズメは〈スパイ募集 委細面談〉の豆粒チラシをとりだします。
スパイ募集ってどういうことなのか、いたずらなのか、それとも悪質な勧誘なのかと豆粒チラシの連絡先に電話すると3日後に来てくれとの返事。
何かあったらクジャクに助けてもらえばいいやという気持ちでスズメは先方を尋ねます。

木造のオンボロアパートで出迎えてくれたのは夫婦のスパイ。
部屋に入るなり男性から「よく見つけたね〜そのチラシ。スパイ合格!」
「君のその存在感のなさはスパイに向いている。とりあえず今日からスパイってことでよろしくね」
当面の活動資金として500万円を手渡されたスズメ。

存在感の希薄なことが功を奏してすんなりスパイとして採用されたスズメですがこの日から今までとは一転してドラマチックな生活が始まりました。

【Trivia & Topics】

✻クジャク(蒼井優)初登場のシーンをご期待ください。
そこそこの人生をおくるスズメ。
同じ病院で生まれたクジャクは超個性的で平凡なスズメはいつも負けています。センスが違いすぎるのです。

緋田康人&上野樹里

✻めくるめく珍優、奇優、怪優。

・「でしょう」ではなく「だしょう」が口ぐせの最中屋のおじさん森下能幸

・人とぶつかっても見かけによらない身体能力で倒れない豆腐屋さん村松利史

・怪しげだがコミカルなスパイ夫婦岩松了ふせえり

・美味くもなく不味くもなく微妙にそこそこの味が定評のラーメン屋松重豊

・なぜかサウンドフォースを振り回す水道屋緋田康人

・パーマの途中でカラオケで踊りだす永久パーマ屋温水洋一

・不思議な体操で体をほぐす公安部の伊武雅刀と部下の嶋田久作


まるでよしもと新喜劇や赤塚不二夫のマンガのようにこれでもかこれでもかと登場する珍優・奇優・怪優てんこ盛りのエピソードを楽しめるかバカバカしく思うかで極端に評価が分かれる作品です。
バカバカしさの行き着く先はシュールリアリズムなんですね。

✻スズメが大好きなラーメン屋にて。
「なんだこれ。そこそこラーメンだね、美味くもない不味くもない」とクジャク。

✻あずきパンダちゃん。
クギタニエツコ(女スパイ=ふせえり)が熱愛するあずきパンダちゃんって一体何なのでしょうか?

✻平凡な日常が続くが。
スパイとして一番守らなくてはいけないのが平凡な毎日だと諭されたスズメですが毎日冷蔵庫の中を見るたびにスパイになったことを実感して心がざわざわするのでした。


【6star rating】

☆☆☆☆

【reputation】

Filmarks:☆☆☆★(3.6)
Amazon:☆☆☆☆
u-next :☆☆☆☆


これほどくったくなく大笑いできる意味のない映画は珍しいのですがこの作品の放つナンセンス度、シュール度、力の抜け具合は半端ないです。

上野樹里の幼馴染クジャクを演じる蒼井優は大好きな女優さんです。
明日は彼女が出演した映画の中でもっとも透明度の高い蒼井優が観られる作品をご紹介します。

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