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-映画紹介-『博士と狂人』 大英帝国の威信をかけた史上最大の辞典づくりに協力者として名乗り出たのは殺人犯だった。

《乱れ撃ちシネnote vol.27》


『博士と狂人』 P・B シェムラン監督   2020年公開

【Introduction】
『船を編む』に続いて紹介するのは石井裕也監督作品か、宮崎あおい出演作か、オダギリ・ジョー出演作かで悩んだあげく頭に浮かんだのは同じ辞典づくりの物語でした。

世界最大のオックスフォード英語辞典は、貧困のために大学にも行けず独学で言語学をマスターしたスコットランド人の学者と、過酷な戦争体験のため殺人罪で精神科に入院中のアメリカ人の元軍医、出会うはずのなかった二人の情熱が完成させた史実に基づいた作品です。

【Story】
1872年ロンドンの裁判所。
法廷に連れ出された男はアメリカ人の元軍医大尉ウィリアム・チェスター・マイナー(ショーン・ペン)。
南北戦争で心を病み、
幻覚に苦しめられた挙げ句ある男を人違いで射殺してしまい裁判にかけられたのです。
マイナーは“心の病により無罪”となりロンドンのブロードムーア刑事犯精神病院に拘禁されることになりました。

片や遅々として進まないオックスフォード英語辞典編さん計画にカンフル剤として選ばれたのは、貧しい生い立ちで学士号を持たない異端のスコットランド人学者マレー(メル・ギブソン)でした。
困難を極めていたそのプロジェクトにある日謎の人物から大量の資料が送られてくるようになったのです。
それは殺人を犯し精神を病んだ元軍医・チェスター・マイナーからのものでした。

二人は辞典編さんを通じて盟友となっていきます。
しかし英国の威信をかけたプロジェクトに犯罪者が協力していることが判明すると編さん事業は行き詰まってしまいます。
やがて、時の内務大臣ウィンストン・チャーチルやイギリス王室をも巻き込む事態へと物語は発展していきます。

【Trivia & Topics】
*原作は全米でベストセラーとなったノンフィクション、サイモン・ウィン
チェスター著「博士と狂人世界最高の辞書OEDの誕生秘話」です。

*オックスフォード英語大辞典。
41万語以上の収録語数を誇る世界最高峰の辞書「オックスフォード英語大辞典(OED)は1857年に英国言語学会により編さんが開始され71年後1928年に全10巻に製本されて完全版が刊行された単一言語の辞典としては世界最大の辞典です。

*20年かけたプロジェクトの顛末。
本作品の原作「博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話」が発行された1998年の時点でメル・ギブソンが映画化を希望し、約20年かけて練り上げてきたプロジェクトです。
しかしメル・ギブスンもP・B シェムラン監督(ファルハド・サフィニア)も公開直後にプロジェクトから降りています。
ギブソンとサフィニア監督はオックスフォード大学での撮影を希望したが、予算の超過とスケジュールの遅れを理由に制作会社が拒否した。
しかもギブソンとサフィニアらが意図したバージョンではない本編を配給会社に開示したことで制作会社を契約違反と訴え、そのため脚本通りに撮影することが不可能になった。
本作の撮影は2016年に行われたが公開されたのは2019年。
興行成績も予算の4分の1程度。
制作会社との数々のトラブルの結果、ギブソンはプロモーションを拒否しサフィニア監督の名前はP.B.シェムランとクレジットされ、二人はプロジェクトを離脱し、公開されたバージョンについては「ひどく失望するもの」と述べている。

【5 star rating】
☆☆☆☆
☆印の意味です。
☆☆☆☆☆:見事な作品
☆☆☆☆ :面白い作品
☆☆☆  :平凡な作品
☆☆   :残念な作品
☆    :退屈な作品
【reputation】
Filmarks:☆☆☆★(3,7)

Amazon:☆☆☆☆

u-next :☆☆☆☆★


驚くべき内容ので緻密に創られていて楽しめたのですが、観終わったあとになにかひっかかるものがありました。
プロジェクトの要になる二人が降りてしまったことはくれぐれも惜しまれます。

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