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ため息俳句番外#9 四月の思い出

春風不度  

  四月は働く。
  哀しいくらいに酒がうまい。
  だからといって、よい一日だったと云えるわけではない。
  あの酒場までは、春風といえ吹いては来ない。

  今晩は呑まずに帰った。
  啄木みたいに女房に甘えてみたい、
  あハッ、ありえない。
  モッコウ薔薇の垣根が星空のようだ。

  ゴリゴリと豆を挽きながら
  「ヨイトマケの歌」をつぶやいていたら娘に「バカね」と言われた。
  珈琲をすすりすすりしながら、
  もう一度「ヨイトマケの歌」を口にしてみた。

  夕刻のひどい会議のことは少し忘れよう
  後に残った男たちの敵意には明朝含み笑いで挨拶しよう
  どこかで銅鑼が鳴っている
  ああ、そうだね。長い煙管を使っているのは、恥ずかしそうに笑う親父だろ。

  ボクは手を振る
  ちぎれんばかりに手を振る。
  汽笛が鳴った。
  「とおさん、汽笛が鳴った。」


この詩らしきものは、作者不詳につき、ご了承を。