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ため息俳句 玉ねぎの謎

 玉ねぎの収穫時期は、6月の梅雨の時期を挟んでの前後である。
 収穫する玉ねぎには当然ことにサイズにばらつきがある。家庭菜園のことだから大は大なり、小は小なりに使い道があって、捨てるものはない。大きなものは吊るして保存するが、小さなものはネットの袋にまとめて保存する。その、保存しておいた赤玉ねぎからこの時期に芽が出てくる。

 そうしてこの時期は、来年に収穫する玉ねぎの苗を植える頃である。昨日から苗を植えている。1日200本、三日で終わるので、明日まで。一気に600本というのは、今の体力では無理だ。屈み仕事であるので腰をいためることがある。月末の旅行を控えて、それだけは避けたいのだ。
 玉ねぎの苗は、自家製である。種苗店からなら頑丈そうな苗を入手できるが、なんせ素人が育苗するのであるから立派な苗にはならない。今年の苗も推さい感じだ。

 中・晩生の種類であるから、苗の植え付けにはまだ少し余裕があるのだが、植えてしまうことにした。これも旅行がらみで、その間苗のめんどうをみることが出来ないからだ。植えて3日もすれば根づくだろうから、今やってしまうことにしたのだ。

 育苗トレイから抜き出して、土を落とすとこんな姿になる。根が髭のように生えている、その長さは地上部分の丈に劣らない長さのであろうと思える。
 一見すれば、市販苗に較べるとお話にならないくらい見劣りしている。だが、これまでも経験で云うと立派に育ってくれるのだ。これからの冬を乗り越えて。
 野菜というよりも、植物一般に通じるのであろうか、その生命力は強靭である。このひ弱そうな一本の苗に潜む力は、たいしたものである。そういう力が、人間の食を支えてきた。
 
 梅雨時に収穫した直径4センチほどの赤玉ねぎが、干からびもせず、また青い芽をのばしてくる、これはいったい全体どこからその力が湧いてくるのか、これから冬に向かうこの時に、何ゆえに。その力の源泉はどこにあるのだ。
 なんだか、玉ねぎの底力、謎めいてきた。
 

小春日や稚なき苗のいとおしき

雪浅間玉ねぎ苗の根や白き