サイン帳表紙

春のサイン帳まつり

実家の整理をしていたら昔の日記やら参考書やらに交じってサイン帳が出てきた。

卒業間際、我が小学校にもサイン帳ブームがやってきた。

当時文具店では、小6の女の子が好きそうなディズニーやサンリオの可愛らしいキャラクターものが多く出回っており、その中から私は、控えめなベージュの色味とシンプルなデザインのサイン帳を選んだ。誰とも被らなそうなところが決め手となった。

バインダーに綴じられているプロフィール用紙を1枚ずつばらして配ってまわり、記入してもらう。
表は名前とか住所とか趣味とか血液型、など書く所があり、裏面はメッセージ欄となっている。
回収後は綴って保管できるつくりだ。

時を経て再び開かれたサイン帳。
甘い懐かしさと思春期の息苦しさが蘇る。
1頁毎に彼らの個性が浮き彫りになっており、小6のみんなの姿や声を生々しく思い出せる。

特にメッセージ欄は興味深い。
「みっちゃんはいつも明るくてかわいくてにこにこしてて頭が良くていいね。中学校に行ってもめいわくをかけると思うけどヨ・ロ・シ・ク・ネ!」
(スクールカースト上位女子美香ちゃんより)
!?
「知らなかったんだけど、わたし明るくてかわいくてにこにこしてた?」
丹念に記憶の糸を手繰るが、やはり当時から根暗地味系女子である。
ありきたりのお世辞でも憧れの美香ちゃんがそんな風に書いてくれていて、シンプルに嬉しい。
小6にして四半世紀後の私をも喜ばせてくれるあたりカースト上位者のポテンシャルを感じる。
スクールカーストは1日にして成らず。

「歯、磨けよ」(三男坊男子山村より)
私はこれが「8時だヨ!全員集合」のエンディング曲の有名な合いの手のセリフであることを当時知らなかった。
彼は年の離れた兄の影響で知っていたのだろうと思料する。
清潔感なかったかな、と大いに反省し歯磨きタイムをそれまでの倍にして口内環境の向上に勤しんだものだった。
あれが単なるギャグなのか本当に忠告だったのかは未だ分からない。

「これからの長い長い人生を持ち前の明るさとガッツで乗りこえていきましょう」 (担任の恵先生より)
恵先生、おそらく当時20代、今の私より全然若い。多忙な業務の合間を縫って、何人もの生徒から頼まれたサイン帳を書いていたろうから、なんとなしに書いた言葉なのかもしれない。
だけど恵先生の予言通り、実際人生数多の苦難、うわべの明るさとガッツで乗り切ってます!
とゆうか恥ずかしながらわたし今だにそれ以外のカード持ってません!
先生ってすごい。

なかには、
「私の事忘れないでね」
なんてのもあった。
大丈夫。いくつかの小学校が集まるとはいえ、実は行くのは同じ中学だ。

「一緒に匂い研究家にならない?」
鼻炎なんで無理かな…てゆうかなにその研究!

「塾やめるかも(理由はのちほど)」
その頭出し、サイン帳上で必要!?

などなど。

ついでにもしかして暗号めいた愛の告白など見落としてないか一通り男子分を読み返してみたが、時を経て届いた想い♡なんてロマンチックなもんはもちろん一切なかった。

そういや大学生になってから、知り合いの小学生くるみちゃんにサイン帳を依頼された。
世代を超えて友達認定されたようで嬉しい。
見てみると無難な質問に交じり、

「好きな人いる?」
「付き合った事ある?」
「キスした事ある?」
「〇〇〇した事ある?」

結構攻めてるサイン帳だ。
大学生の私が回答すると、リアルな感じになっちゃうじゃん。
先生、くるみちゃんがR指定のサイン帳回してまーす。

別れの季節、全国でサイン帳まつりは今年も開催されているだろうか。
みんなに書いてもらったサイン帳、できれば捨てずに取っておいてほしい。
時を経て、また違う響きがあなたに届くと思うから。

編集:ほんさち

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