アヴィニョン演劇祭 : 祭の骨格

渡辺です。
あっという間にアヴィニョン滞在最終日です。
5日間の滞在で、INとOFFの演目合わせて15本観劇しました。
(OFFのドニ・ラヴァンの一人芝居を見逃したことを知り、帰路にてショックを受けているところです、しかもベケット、、、観たかった、、)

気を取り直して、この5日間で見えてきた演劇祭の構造をまとめたいと思います。
まずはINとOFFの演目の違いから。

はじめに、INと呼ばれるのが公式の招待演目。
こちらのサイトでチケットの購入と予定管理ができます。
https://festival-avignon.com/en/

今年は39演目+関連企画が14程でした。
6月末のチケット発売とともに売り切れ続出のため、ネットで事前予約が必要です。eチケットのQRコードを各会場の入り口で提示して入ります。
私は7月頭にとにかく取れるもの全て取って臨みました。
(そのうち1本寝過ごし、1本は帰りのバスがなく断念)

公演場所は世界遺産の教皇庁の中庭をはじめ、城壁内のいくつかと、少し離れたところと分散しており、離れたところの公演はシャトルバスで往復します。(navetteチケット4.5€、事前に買ってないと乗れない)
※バスがなくて諦めたのは、各地域コミュニティを回る作品でした

赤いのぼりが公式会場の目印

ピーター・ブルックが教皇庁でやりたくないといって自分で探したことから始まった石切場会場は、ストの後、ここ3年位は使われてないようです。

演劇祭の芸術監督であるオリヴィエ・ピィ作品と、教皇庁でのオープニング演目のパスカル・ランベール作品、良かったです。

教皇庁中庭のステージ!

ちなみに、英語字幕くらいあるだろ、と高を括っていましたが舞台上に字幕は出ず(出てもだいたいフランス語)。INのいくつかの演目では字幕が出る電子メガネを借りることができるようです。Personalized!
(私はことごとく借りられず、一体どうやったら借りれるのか結局分からずじまいでした。悲しい)


そして、OFFと呼ばれるのが自由参加(フリンジ)演目。
こちらのサイトでチケットの購入と予定管理ができます。
https://www.avignonleoff.com/

「フリンジとは、「周辺にあるもの」という意味があり、プロ、アマ、
有名、無名問わず、資格審査は全くなく、登録料と参加費を収め、会場を見
つけさえすれば、収支の見込みは別にして、誰でも公演できるシステムになっています。」

http://www.jaled.or.jp/magpdf/0053101168.pdf より引用
↑エジンバラのフェステバルについて分かりやすく書いてあります

今年はなんと1600の演目があるみたいです。
1ヶ月で1600って一体どういうこと・・・?と来るまで疑問だったのですが、現地に来てみて色々納得しました。

まず、アヴィニョンに着いてすぐ、観光案内所でOFFのパンフレットをもらいました。分厚い!

この大容量。劇場ごとに全公演の情報がまとまっています。

各国からのOFFの参加状況はこんな感じ。

そして、写真入りのIDカードを作りました。16€。
全てのOFF演目がだいたい5€くらい安くなります。数観るならお得。

さて、準備が整ったところで、何を観ればいいのか・・・

手探り状態でまずは、TPAM(国際舞台芸術ミーティング in 横浜)に出ていたという情報をいただき、こちらの公演を予約。ホテルの中のスタジオでした。お客さんは私と河村さん含め4人。なかなかしょっぱい内容、、

次は、ダンス観よう、とこちらの公演へ。直接劇場に行ってチケットを買いました。賑やかな通り沿いの小劇場で、少しカビ臭い。ステージは平土間、簡易なバトン設備に黒布の背景。お客さんは2~30人程。
軽やかにお客さんとコミュニケーションを取りながら、小道具の演台をあらゆる手で使いながらのフィジカルパフォーマンス、良かったです。

2本観て、あぁ、街中でこんな感じでポスターたくさん貼ってある場所がそれぞれ劇場なのか・・・!と気づきました。googlemapにtheaterと書いてあっても、にわかに信じがたかったのですが、ここでやっと実感が出ました。

め ちゃ く ちゃ た く さ ん 劇 場 あ る 。

城壁内とその周辺で合わせて125~140くらいの劇場があるようです。
しかも、10~,14~,16~,18~,20~,22~などと、1日に5~6演目以上やっている!

ここは一日9演目やるスタジオが3つくらいありました

大半が1時間程度の上演時間。建て込みが多いものもあり鬼の転換作業!箱の大きさは20人程度〜200人程度と様々。野外もあり。入ってみないと分かりません。

こちらの地図の赤丸が劇場です。

通年やっているところは大きいところのみのようですが、この1ヶ月は街のあらゆる場所が劇場と化すようです。特に、教会の劇場がかっこよかったです。
飲食店もめちゃくちゃ数がありますが、期間外はほとんど閉めちゃうらしい。道端や広場ではライブパフォーマンスや宣伝パレードで、常に誰かが歌ってるような感じのお祭り騒ぎ。しっかりしたパフォーマンスは全て劇場で発表されています。みんな客ひきに必死で、ビラを配りながら話しかけて、たくさんプレゼンしている。

エジンバラなんかは番付表が出るみたいですが、アヴィニョンは完全に口コミが頼り。お話好きのフランス人、行列に並びながらどれがよかった?と情報交換がされ、人気の公演は人が殺到し、ガラガラの公演はずっとガラガラのまま、という厳しい世界のようです。私もいくつか観た中で、大入りの公演は良いものが多かったです。

街のそこここにチラシ置き、ちょっと可愛い


・図解!

こちら、アヴィニョンの航空写真です。
黄色の点線が城壁で、だいたい1~1.5km直径の範囲が壁に囲まれていて、一部車も通れますがほとんどの道がホコ天です。無数の広場があり常にテーブルと椅子が大量に並べられています。石畳で、石造りの建物が立ち並ぶ歴史地区。劇場のほとんどがこの範囲内にあります。

こちらは、同じスケールの東京・北千住です。
(地理条件がちょっと似てるので比較対象に選びました)
黄色の点線がBUoY(銭湯跡を改修した劇場)沿いの国道です。
黄色の塗りがアヴィニョンの城壁内の大きさです。
この範囲に130もの大小様々な劇場ができて1ヶ月公演しまくっている、と思うと凄まじい状況。(東京は常に広範囲で異常状態、とも思えますが)

こちらは、同じスケールの兵庫県豊岡市の江原駅。
豊岡演劇祭でフリンジ拠点に予定されている、青年団の江原河畔劇場(EAST)ができる場所です。無理やりアヴィニョンの範囲を重ねてみました。どうなるのかはまだ全然予想できないですが、まずはスケール感の指標として。


・宿

★の位置の宿をとったので、観劇合間に帰って休んだりできてとても便利でした(値は張りましたが)。赤塗りが教皇庁、赤点線がメインストリートです。
約9万人が訪れるこの時期、宿の予約が死活問題。そこまで数がないため、通常の3倍5倍にも値段もつり上がっていて、直前だと予約が大変です。城壁外にもホテルはありますが、せっかくなら城壁内で泊まれるとやっぱり便利。壁の中ならどこでも問題なく歩けます。booking.comだと比較的数がありました。
私の宿はアパートの一室で、大家との待ち合わせがうまくいかなかったり、鍵の開けかたが難しくて住人に助けてもらったりと色々ありましたが、落ち着いたら快適でした。クーラー無かったですが、蒸さないので全然過ごせます。
食べ物はだいたい近くのスーパーでバゲットとチーズやトマトを買って適当に食べてました。


・まとめ
以上が、「何が世界最大規模の演劇祭を形づくっているのか?」という観点からアヴィニョン演劇祭と街を観てきたレポートです。

・壁に囲まれた景観の良い歴史地区
(範囲が明確で広さが丁度よく歩いて回れ、道と広場に人の居場所が存分にある)

・INとOFFのフォーマット
(街路灯に張られる公式ののぼりとあらゆる場所に貼られるOFFのポスターや客引きの光景に反映されている。ごみごみとした喧噪はOFFの無数のエネルギーの集大成で、それが祭りの姿そのものである)

・劇場の数とスケールの豊富さ
(あらゆる表現の受け皿であり、新たな表現の可能性である)

ということかと思います。
あとは言語の壁がもう少しなければ、と思いました。


***


ここからは観劇録です。ご笑覧ください。

2日目

12:00
IN演目の市民オペラ、Blandine Savetier『THE ODYSSEY』。ドラムは日本人の方でした。フリーエントランス。
歌もありましたがほぼリーディング公演。
場所は図書館の中庭で気持ちがいいところ。

15:00、18:30
前述のOFF演目


この間に、世界遺産の教皇宮殿とノートルダム・デ・ドン大聖、その背後にあるロシェ・デ・ドム公園、サン・ベネゼ橋をみて回りました。昼間に外を歩くのはかなり暑いです。


あと公式の展示をひとつ。

Macha Makeïeff『SPOILSPORT. CURIOUS COLLECTIONS AND DISQUIETING THINGS.』
壁に物語の記述があり、音と照明の演出がついていて舞台美術のなかを巡るようなインスタレーション。


21:30
INのオープニング演目、パスカル・ランベールの『ARCHITECTURE』!
時間になると正面に看板が掲げられていて、

中に入るといきなり客席の足元!既にかっこいい、、、!
ここから階段をあがって客席の一番後ろに出ます。

〜〜!!!

教皇庁の壁面から迫り出す白い舞台、繊細に配置された家具たち(ブルーのチェアではなかったが)、それを見下ろす観客席、、!

2等の席を買ったからか一番後ろから2番目の列だったので、ケチらなきゃよかったと後悔。全体がよく見えたけどちょっと入り込めない距離でした、1等を買うべし。昨年アゴラでパスカルの『GOHSTs』を観てきめ細やかな演出に感激していたので、もっとちゃんと観たかったです。

でも後ろからだと、電球色と白色の照明の切り替えやスケール操作は堪能。

4時間に渡る超大作。
(ただ途中の休憩で帰っちゃいました、体力が限界であった)


3日目
OFF演目のジャケ買いを決行!

12:00
まずはこちら。
劇場はおしゃれなスペースで、客席30〜50程度。簡単なバトン設備、黒カーテン。天高は3mそこそこ。

開始2秒で男性俳優がバケツいっぱいの土を頭からカブる。
3m角ぐらいのアクリル板の坂道の装置の上での一人芝居、語り多め、前の方に座っていたら終盤で手のひらに土を盛られそのまま終わるまで土を握る羽目に、、(カーテンコールで舞台に投げた)

17:55
次はこちら、このジャケが数ある中で一番かっこいいと思ってたんですが外した…
劇場は壁のすぐ外の、プレハブ小屋のようなところでした。
ジャケ買い、あんまり当てにならず。

そこから壁沿いをぐるーっと走り、Avignon centreの駅へ。本当に壁で囲われている。壁の中は石造りの統一感のある街並みですが、外はいきなり近代の生活が迫ってくる。

電車でAvignon TGVまでIN演目を観に行きます。

20:00
壁内の歌劇場が改修中のため、こちらの仮設?劇場にて。
北京のMeng Jinghuiの新作『TEAHOUSE』。
すんごい大掛かりなセットなんだけど…うーん…途中で出ました。フランス人は遠慮なく途中退出します。

帰りの電車、隣の人に話しかけられたと思ったら、なんとSPACの演出家・宮城聰さんでした!嬉しい出会い。ありがたいです。

宮城さんは2014年にブルボン石切場『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』、2017年に教皇庁のオープニング演目として『アンティゴネ』を上演されています。毎年見にきているそう。

「次は匿名でoffに出てみようかな」と仰っていました。笑

やるとしたらどこの劇場選びますかと聞いたら、壁外にアイススケート場を劇場にしているところがあるらしく(olivie Pyさんもミス・ナイフという女装キャラ:熱心なカトリック教徒でありながらゲイである複雑な身の上による、でのリサイタルをしたことがあるそうな)、そこかな〜とのこと。その際にはぜひ伺いたいです。


4日目
夜に予約してたIN演目が行ったら帰ってこれないことが分かったため、諦めて一日OFFを回ります。
宮城さんからOFFは口コミが全てだから行列のところは面白い、と聞いたので、ジャケ買いはやめて人が集まっているところの演目を観ることに。

12:00
雰囲気のいい劇場でシャンソンショー。大入りでした。ピアノ、ドラム、チェロ、ボーカル。ここは天井が高くて4〜5m、バトンもしっかりしてて客席は100席くらい。
ボーカルが途中客席の女性を連れ出して踊る、リードが上手くてくるくる踊らされてました。

14:00
チラシをもらって気になっていたミュージカルへ。行列!
中に入ると・・

教会に作られた劇場!!客席200程。
音響も良く、建て込み無しで石の壁面を生かしていて、歌と衣装とキャラクターの素敵なミュージカルでした。面白かった!
大ウケしていて、客層は老若男女で、「舞台を楽しみに来ている」という感じがしました。舞台関係者ではないであろう一般のお客さんが多く、賑わっていました。

終演後は完パケ前にすぐさま転換作業。笑


18:30
こちらのダンス公演へ。ふらっと来たら満席で、キャンセル待ちで入りました。客席150程。前半はソロで、後半は2人、3人、4人と増えながらの群舞。初っ端からストロボ焚いての強い動きはちょっとずるいなと思いました笑

20:30
先程のがよかったのでここの劇場のセレクション良さそう、と続けて次の公演のチケットをとったのですが、打って変わってガラガラで、裸の男性ダンサーが2人両側から出てきて抱き合った瞬間リンゴが降りてくる、という、あ・・・な内容でした。良し悪しは劇場に寄らない・・・

そろそろ体力も限界だし帰ろうかと歩いていたら、大行列を見つけ、教会だし入っちゃえ!とラスト観劇。

木材バトンが大迫力。ここも150~200席くらい。

大ウケしてたけど、私は乗れず。でも劇場がよかったのでよし。
やっぱり1日に5本も観るもんじゃないですね。笑
結論:OFF演目は事前にリサーチして選ぶべし。あとは運。


5日目
前日に観すぎたので、観劇最終日のこの日は予約していたIN演目のみにしました。

15時の公演が離れたところなので、シャトルバスに乗るため13:45に駅近くのバスターミナルへ。

eチケットのQRコードを提示して乗ります。事前予約。
これが最初良く分かっておらず、シャトルのチケットだけ買ってしまったり、公演のチケット買って行き方がわからなかったり。サイトからは直前だとシャトルのチケットは買えませんでした。(結果運良く両方買えましたが)
電車で行けるならまだしも、車で行くしかない場所だと超不安です。シャトルが無い演目もあるので電車で行って帰って来れない、なんて事態は怖いです(有り得る)。要確認!(シャトルがある演目は往復で乗れます)
交通は、豊岡でも重要なポイントになりますね。

20分ほどバスに乗り、Kukai Dantza『OSKARA』、コンテンポラリーダンスの公演。バスク文化の死生観からなる表現、すごく良かった!振り付けのキレもよくスマートな構成。字幕が仏英でありがたい。

また同じバスに乗って帰ります。

壁内を散歩。こちらは公式インフォメーション。いい中庭すぎる。カルチャースクールの建物のようです。
ここで行列に並んで問い合わせたら字幕メガネを借りられただろうけれども、行列を突破する気力がもう残っていませんでした。。

雑多な街中を散歩。


20:00
ラストは、壁内の学校施設(体育館?)にて、演劇祭の芸術監督であるOlivier Pyさんの『LOVE TRIUMPHANT』。グリム童話シリーズの最新作。

俳優は歌い踊り楽器を演奏し、屈強な黒子さんが幕を上げ下げしセットを転換していく楽しい舞台でした。この電球セットはグリム童話シリーズに限らずPyさんの十八番なんだと思います。夢のある演出盛りだくさん。また日本にも来るかもしれないです。

***

以上、舞台の内容というよりは劇場に着目しながら回ったあまり参考にならない観劇録です。笑


帰国しました。時差ボケにやられています。



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渡 辺 瑞 帆 | scenographer・architect 東京育ち。これからはじめて引っ越しをします。青年団演出部、兵庫県豊岡市地域おこし協力隊。
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