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#223 アップサイクルを考える


物を大事にして使うことには、資源を最大限に活かすという意味でサステイナブルとかエコ、はたまたローインパクト(環境へのダメージが低い)と様々な表現が使われるようになりました。今すぐ出てこないけれど、絶対ほかの言い方もありますよね‥‥

作り直すことを日本ではよく『リメイク』と呼びますが、これは和製洋語であって英語ではないのです。
リメイクと言いたい時、英語ではUpcycle (アップサイクル) が一番近い気がします。

「リサイクルとアップサイクルの違いはなんですか?」と訊かれることがあります。

私がやっている家具の再生では、まず壊れた部分を修理します。そして表面をサンドペーパーで擦り、オイルで木の持ち味を出したり、ワックスで保護したりします。またはニスで艶を出したり、部分的に色をペイントして個性を出すこともあります。
Re (再度) 使うだけでなく、Up (元の状態以上) にするという意味が接頭語で区別されるので、同じ用途のものを仕上げるのであれば厳密にはリサイクルだと言えるでしょう。ですが、見違えるほど素敵になったり、随分と雰囲気が変わっていればアップサイクルと言えるかもしれません。

アップサイクルの醍醐味となれば、『工夫を入れて別の用途のものに仕上げる』ことではないかと思います。

今回は、私の作品のなかでもそういう用途の違ったものに"Up"-Cycle させたものを三点、紹介します。


うちの夫は金属のゴミバケツフェチか!というくらい金属バケツが好きなようです。今急いで玄関のドアを開けて撮ってきたのがこれです↓

オリーブを植えるのにわざわざゴミ箱(笑)


この定番の形が好きすぎて、カーブーツセール (英国版フリーマーケット) で蓋のないゴミ箱を買ってきた夫。ゴミ箱として使った形跡もなく中は綺麗です。なのになぜ蓋がない!?

これです


まあ普通にゴミ箱としてなら使ってもいいか、と思うじゃないですか。
ですがその日、意図せず夫がこんなものも買ってきたのです。
じゃーん


直径46㎝のマリメッコのトレイです

これは相当好きなやつです。
日本のマリメッコサイトで見たら、このサイズなら14,080円ですって!使用感もなく、お盆としてしまっておくには勿体ないです。
私は既にこのくらいの大きさのトレーを二つ持っています。

なにげなくゴミ箱とトレーが上下に置いてあったのを見て、小さなコーヒーテーブルになるな、と💡
ただ、固定のために穴を開けたりはしたくない‥‥

そこで、夫がこんな工夫をしてくれました。
木を丸く切って、’marimekko' が隠れないように円をくり抜き、黒くペイント。それをトレーの裏に張り付けて完成。

まだトレーとしても使うこともできる

このドーナツ型の厚みがぴったりゴミ箱の円周にはまり、テーブルトップとしてしっかり固定されます。


ソファに座ってちょっとコーヒーマグを置きたい時に便利


しかも、トレー部分は蓋の開け閉めもできるので、ちょっとした雑誌とか、編みかけの毛糸とか、収納もできるのです。

売れ残ったら自分が欲しいと思っておりましたが、残りませんでした。


次は道の脇に捨てられていたパブのビール樽です。これも夫が大好きな金属ものなので、散歩の帰りに息子とふたりで拾ってきました。


汚いです。もうやめて~!

このままじゃ何にも使えなかったものが‥‥

庭で私の椅子になりました

夫が本体を綺麗にして、木を丸く切って座面を作成。そこにスポンジフォームを切って載せ、撥水加工したシートで包んであります。裏はステイプラー(ホチキス)で留めて出来上がりです。
この座面も落ちたりずれたりしないよう、木製のほうきのようなものを表側からスクリューで裏に取り付けました。それが真ん中のビール注ぎ口に差し込むことで固定されています。

夏は庭で食事することが多いのですが、我が家のテーブルに対するベンチの位置がどっち側に座っても顔に日が当たる(笑)
どうしてもお日さまを背中にして食事したかった私の希望を、こんなかたちで夫が叶えてくれました。

ポップなプリント地はデザイナーOrla Kiely (オーラキーリー) のもの


最後は、木製のBuchers' block (肉屋の板) と呼ばれる分厚いまな板をコーヒーテーブルにしたものです。
ビフォー写真が残っていませんが、このまな板に似ていました。

日本のもののように一枚板でなく細工ものです


使い古され、包丁傷だらけだった表面を電動サンダーで擦りに擦り、ツルツルになったところへ、麻の葉模様のステンシルを施しました。乾いては隣りへと、柄を合わせながらの手作業なので、どうしても色にムラが….  でもそこが一点ものっぽい味なんだと勝手に思っています。レトロな脚が4本あったので、色は黒で統一させました。
osmo oil という万能なオイルで仕上げてあるので、コーヒーをこぼしても赤ワインをこぼしても大丈夫。

この写真ではわかりませんが、横から見るとまな板とわかる持ち手のくぼみが入っています

「これ売れなかったら欲しい」と息子が言ってましたが、残りませんでした。
大丈夫。まだあるのよ、まな板‥‥(笑)



私は『職人』には絶対なれなかったろうと思います。毎日同じものを作り続け、生涯かけて技を磨き上げるという生き方‥‥
飽き性の私にとってため息が出るほど『凄いなぁ』と思うけれど、みんながみんな職人でなくてもいいのかもしれませんね。
私は一回一回、全く違ったことをしているというのに、なんだかそんな作業にも慣れてきてしまい、記録になるようなメモや写真をだんだんと残さなくなっていました。
ビフォーアフターの写真があると、その過程を思い出すこともできるというものです。
自分のしてきたことの記録を残し見返すこと、それは自己の成長のために大切なのだと、改めて思いました。


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