タカタカ

東京都武蔵野市在住1981年生まれで、塾講師をやっています。本、映画などの批評を書いて…

タカタカ

東京都武蔵野市在住1981年生まれで、塾講師をやっています。本、映画などの批評を書いていきます。作品の本質、魅力を言語化することが目標です。文学と社会科学の中間のスタンスを目指します。酒アカウントhttps://note.mu/mizukami0827s

最近の記事

クォンタム・ファミリーズについて考える

東浩紀の「ゆるく考える」を読んで気になったので、「存在論的、郵便的」を読んでから「クォンタム・ファミリーズ」読んだ。 「クォンタム・ファミリーズ」は、多様な読みが可能なパロディ小説である。 主なパロディの元ネタとして ・「存在論的、郵便的」「動物化するポストモダン」などの東自身の著作 ・「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」など村上春樹の作品 ・「CLANNAD」など美少女ゲーム が挙げられる。 これらの作品の問題意識は互いに重なり合っており、ここでは ・「かも

    • シュガー・ラッシュ:オンラインについて考える

      荻上チキさんのセッション22で激賞されているの聞き、興味をもち鑑賞した。 結論を言うと、とても良かった。 批評性とエンタメの両立。アニメ映画におけるマーケティングの教科書的な作品になるのではないか。以下、その魅力を詳述する。 結論は シュガー・ラッシュ:オンラインには、3つの軸が存在する。 女性のロールモデルという軸:ディズニープリンセス、シャンク 友情と別れという軸:ラルフとヴェネロペの関係性 擬人化した世界=デザインという軸:インターネット世界 これらの軸が、絶妙のバ

      • A GHOST STORY について考える

        12月28日のデイキャッチャーボイスでの宮台真司氏のA GHOST STORY についてのコメントを聞いて、興味を持ち観てきた。 宮台氏のコメントを踏まえて、考えたことを書いていきたい。 結論は、 本作品は、土地の記憶に関する物語 と 男が一歩を踏み出すまでの物語という2軸があり、どちらも最終的に、偏在する存在の肯定=世界の意味の肯定 という形で統合される というものだ。 以下、詳述する。 宮台氏は本作品を、存在した事実は消えないということを以って、世界に意味はあるのか

        • 嫌われる勇気 について アドラー心理学のプロセスを整理・要約する

          2013年、嫌われる勇気(岸見一郎 古賀史健)に出会い、それまで漠然と考えていたことが、整理・補完されました。以來、それまで感じていた 生きづらさ から、かなり解放されたように感じています。 本稿では、嫌われる勇気 に書かれている アドラー心理学 の考え方に基づいた、コミニケーションの仕方、および、それを実践していった結果生じる変化を私の経験に基づいて整理・記述してみようと思います。 結論は、 アドラー心理学は、一種の人生方針であり、実践するか否かは各人が選べば良い。

        クォンタム・ファミリーズについて考える

          バーフバリ 王の凱旋 完全版 について考える

          バーフバリ 王の凱旋 完全版(以下、バーフバリ2と略称) を観た。凄い映画体験だった。 バーフバリ2 が如何に凄い映画か すでに多くのことが語られて来た。そしてそれは常に王の中の王、偉大なるアマレンドラ・バーフバリ(以下、バーフバリと略称)を称える言葉とともにあった。太陽を温めることが出来ないように、これ以上言葉を重ねても王の威光を称えることにはならないだろう。 そこで私は、バーフバリ2 の神話としての側面:世の摂理や成り立ちについて比喩的に語る物語としての側面 について振り

          バーフバリ 王の凱旋 完全版 について考える

          推薦図書 社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」(旧題:社会科学方法論)

          私が推薦するのは、 社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」(マックス・ウェーバー)(旧題:社会科学方法論 以下、社会科学方法論 と略称)です。 社会科学の古典です。社会科学関連の書籍の中で私が最も感銘を受けた本なので取り上げてみました。いろいろな版がありますが、この岩波文庫の版が断然オススメです。理由はその詳細な注にあります。なんと、本文138ページに対して解説が146ページもあるんです。本文よりも解説の方が多い…。解説の内容は、本文のわかりにくいところに番号が振って

          推薦図書 社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」(旧題:社会科学方法論)

          推薦図書 カラマーゾフの兄弟

          私が推薦するのは カラマーゾフの兄弟(ドフトエフスキー)(以下、カラマーゾフと略称) です。 ザ・世界文学 ともいうべき、超有名作品です。が、私の周囲を見回すと、意外と読んでいる人が少ない、または、マンガでわかる〜 みたいな本であらすじだけ押さえている人が多い。 この本は、私が今まで読んだ小説の中で最も感銘を受けた作品です。是非、多くの人に小説でこの作品に触れてほしいと思い取り上げました。 思うに、カラマーゾフの魅力は3つあります。 ・病み付きになる文体、筋 ・キャラが立

          推薦図書 カラマーゾフの兄弟

          寝ても覚めても 映画と小説の違いを考える

          映画 寝ても覚めても(濱口竜介 監督) を観た。最初はよく分からない映画だと思ったが、妙に心に残った。しばらく考えて、もしかして、これはすごい映画なのでは と思い、もう一回見た。今は、寝ても覚めても は、2010年代を代表する日本映画の傑作なんじゃないかと思っている。 映画 寝ても覚めても に関しては、すでに https://note.mu/geniusorangutan/n/ncec922f75840 で素晴らしい批評が書かれている。 ここでは、小説版(映画版の原作) 寝

          寝ても覚めても 映画と小説の違いを考える

          グルメ漫画の系譜について考える

          食べ物を題材として漫画が好きだ。私自身が飲み食いが好きだからだろうか。 食べ物を題材とした漫画(以下グルメ漫画と総称)をいくつかのグループに分けてその特徴、変遷について論じてみたい。 結論は 奇抜な工夫系 料理は心系 ディティールを凝らしたウンチク系(情報漫画) の流れを注いで 現在、 食欲に焦点を当てたグルメ漫画 が流行している。 各ジャンルは緩やかに重なり合いながら、問題意識を継承、克服する形で生まれてきた。 というものだ。 取り上げるのは 「ミスター味っ子」(とその

          グルメ漫画の系譜について考える

          オーデュボンの祈り について、世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド と比較して考える

          伊坂幸太郎の オーデュボンの祈り(以下、オーデュボン) について考えてみたい。その際、この作品をミステリーではなくファンタジーとして捉えてみたい。つまり、ここで書かれていることを一種の比喩として捉え、私たちの世界にとって何を言いたいのかを考える。また、似た構成を持つ村上春樹の 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(以下、世界の終わり)と比較することで、時代背景・作者の問題意識の違いについて考えたい。 結論は、 虚構/現実を等価なものと認めた上で、敢えて虚構の世界を選

          オーデュボンの祈り について、世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド と比較して考える

          最近の異世界転生ものの流行について考える

          異世界転生ものが流行っているようだ。 最近流行っている異世界転生ものに共通する構造、その意味することについて考えたい。 結論は、 最近流行っている異世界転生ものには、情報格差を利用して無双するという共通の構造がある。これは19世紀から20世紀にかけて先進国が発展途上国から富を搾取してきた構造と共通している。異世界転生ものの魅力とは、今は失われてしまった、古き良き世界史的成功体験を追体験できる点にあり、現実逃避の快楽である。こうした異世界転生ものが流行していることは、裏返せば

          最近の異世界転生ものの流行について考える