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かわいい研究所

「わたしはぜったいにかわいい」

幼い頃、私の顔に関する意見で父と母は2つにわかれていた。父は「世界で1番可愛いよ」といういわゆる親バカで、母は「中の下、良くて中の中くらい。あんた言うほど可愛くないよ」と割と自分の娘でも客観的に見られる人だった。ここだけ聞くと母のことを酷い親だと思う人もいるかもしれないが、私はそのおかげで大人になって自分の顔がそんなに可愛くないことを理解し天狗にならずに済んでいるのでとても感謝している。

ただ、小学生の時は自分の顔が可愛くないとはとても思えなかったので完全体のナルシストが出来上がっていた。同級生の男の子は全員1回は私のことを好きになったことがあるとか馬鹿なことを思っていたし、そうじゃないとおかしいとも思っていたくらいに自分に陶酔していた。小・中・高とずっと同じ学校で今でもかなり仲の良い親友から「お前は井の中の蛙だよ」と小学生時代に言われても全く信じなかったし、親友の頭がイカレてると思っていた超絶最強ナルシスト小学生だった。

そんな小学生人生で最大の黒歴史が「かわいい研究所」だ。名前だけ聞くとさくらももこみたいだねと言われたが内容は赤面するほど恥ずかしいものである。私のことを1番可愛いと思ってくれていた同級生を数名集め、私が指揮官となって可愛いことを教えるのだ。今考えてもなんだそれとなる内容なんだが、綺麗な座り方・立ち方や丸文字の書き方(当時のちゃおの付録に丸文字のお手本が載っている下書きがあった)、さらには可愛い告白の仕方なんてものもあった。今思い出して書いてるだけですごく恥ずかしい。当時は男の子らしい動作("男らしい"などはないのだが分かりやすくこの書き方をしている)を極端に嫌っていたため、少年マンガのキャラクターTシャツはダメだとか部活でよく履く(であろう)シャカパンは良くないと思っていた。今の私は全然アニメTは着るしシャカパンは履くが、可愛いしか正義じゃないと小学生の時は信じていた。
まあそんな固定概念にガチガチに捕らわれていた小学生だったのだが、1つだけかわいい研究所での学びが今でも生きているものがある。それは「かわいいくしゃみの仕方」だ。私は小学生の時、少女漫画の女の子のくしゃみが可愛いことに気付き、可愛い子はくしゃみも可愛いんだ!と思っていた。だからみんなで紙縒りを作り、くしゃみを何回も何回も練習したものだ(鼻に絶対良くないので推奨しないが)。そのおかげで私のくしゃみは本当に可愛い。自分で言ってて恥ずかしくないのかと思われるかもしれないが、本当に可愛いのだ。撮影現場でくしゃみをした時に絶対に「何そのかわいいくしゃみ!!」と言われるし、ファンの人からも「くしゃみ"だけ"はかわいいな」と言われるくらい他の人からもお墨付きである。どんなくしゃみかというと本当に漫画のようなくしゃみだ。「くちゅん!」と私から出るとは思えないくらい鼻から可愛い音が出る。顔とのギャップに風邪をひきそうなくらい可愛いので、もし私と会う機会があったら楽しみにしておいて欲しい。


最高に黒歴史な「かわいい研究所」だが、私は今でも無意識に研究所を1人でしている。インスタでかわいい女の子がおすすめに流れてきたら保存して自撮りの方法や魅せ方を学んでいるし、YouTubeで美容系の動画を見漁ってはメイクの勉強をしているからだ。多分ほかの女の子も私と同じようなことをしていると思う。学校ではメイクの仕方を教えてくれないから結局どこかで研究しないといけないし、日頃自撮りをする人はどの角度が1番自分が盛れるのか研究しているからだ。みんなどこかで自分の「かわいい」を研究し自分だけの研究所を開いているのだ。小学生の時はナルシストが故に他人を多数巻き込み黒歴史となったが、今では自分の、自分だけのかわいいを追求するための研究をしているので私は当時より絶対に今が可愛いはずだ。私が決めた「かわいい」の最上級の女の子なのだ。

だからわたしはぜったいにかわいいのだ。

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