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【小説】魔物も桃魔も魔物のうち 1

眠い‥俺は今日、すごく眠い‥。

今日は進級に関わる大事なテストだと分かっていたのに、午前2時まで友達とオンラインゲームをしてしまった。今日までにレア魔物を倒せば貰えるアイテムがどうしても欲しかった。俺と友達はそのアイテムを持っているレア魔物を倒すべくひたすはレベル上げまくって、瀕死ギリギリになりながらもなんとか倒すことに成功してアイテムをゲットした。友達とはその直後に音信が途絶えた。途中何度も眠いダルいと言っていたから力尽きて寝てしまったのだろう。俺はと言うと、意識朦朧としながらも運悪くテストの事を思い出してしまった。思い出さなければそのまま寝てしまったのに。

いやいや、寝てる場合じゃ無い、思い出せて良かった。俺は目を覚ますべく冷たい水で顔を洗い、机に教科書やら参考書やらを並べてひたすらノートに書き殴った。覚えられるかどうかも分からなかったが、何もしないよりはマシだと自分に言い聞かせ、なんとか自分で納得いくところまでやり切ってベッドにダイブした。あとは天に任せる。そんな無責任な事を心の中で願いながら、深い眠りについた。

もちろんそんなに神様が優しい訳がない。

反省はしつつも、あとは野となれ山となれ。

散々な結果になる事はもうわかりきっていた。それも今となってはそんな事どうでもいい。

俺は今、どうなってる??

頭に浮かぶ疑問はただ一つ。

よし、まずは冷静に考えてみよう。

俺は今日、学校に行った。うん、確かに行った。

そして、今、帰宅している。帰宅する電車の中。

俺は、そう、吊り革を掴んで立っている。

すごい睡魔が襲ってきて、多分寝ていたんだろう。

立ったまま寝ていたから、ガタンと揺れた拍子に、ガクンと体が揺れて目が覚めた。

そして、俺はびっくりして目を開けた。

目を開けているのに、更にびっくりして瞬きを2回ひて大きく目を見開いた。声を上げなかった俺、グッジョブ。いや、驚き過ぎると声が出ないって事を知った。暫くの間、一言も言葉を発せそうに無い。

ちらっと右に視界を落とす。

得体の知れない‥猫?オオカミ?いや、ロバ??

頭が混乱し過ぎて全く把握できない。

なんでコイツは吊り革を持っていないのに、揺れても微動だりしないんだ??いや、そんな事より、今目の前のガラスに映ったおばさん?はにわかな?いいネックレスしてるなぁ‥本人も気に入ってそうじゃないか、大事そうにナデナデしてる。それにしても、耳、出てるけど、大丈夫なんかな?

あ、だんだんと頭が覚醒してきた。

これは、夢だ、まだ夢なんだ、夢の中に俺はいる。

だってそうだろ?じゃないとおかしいんだ。

こんな世界は現実にあり得ない。

目の前の窓ガラスに映る魔物達の間に立っているのは、背の高い赤目で赤髪の男性。さっきから俺は、その男と目が合ったまま。

そして、一駅が過ぎた。

いや、おい、まて、なぁ、おかしいだろ?

一体どう言う事なんだ?コイツも魔物なのか?

だって、俺は、、、


桃香だぞ?

戸籍上女性だ、女だ、俺は、女の子!!


駄目だ、何回瞬きしてもまだ夢は終わらない。

とりあえず俺は、最寄駅まで寝ようと目を瞑った。

暫くすると、両隣から変な呻き声と鳴き声が聞こえてきた。俺は寝ぼけながらも慌ててポケットの中に手を突っ込んで、いつもは入っているはずの物を必死に探した。そして、学校で友達に貸した事を思い出し、酷く後悔した。明日その友達に会ったら、絶対ワイヤレスイヤホンを買う事を勧めよう。


まあ、明日が来ればの話だが。


うっすらと目を開けて、窓ガラスを確認する。

そこには、いつもの見慣れた景色が広がっている。

それなのに、車内には相変わらず耳障りな騒音。

夢なら早く覚めてくれ、と願いながら、桃香は心地良く揺れる車体に身を任せまた深い眠りに付いた。


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