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腐向け二次創作小説における、ローションと洗浄

 四十を過ぎて初めて腐に落ち、二次創作小説を書き始めたわけだが、BLを読み始めて初めて知ったことがある。それは男同士のセックスでは、「ローション」と「行為前の洗浄」が不可欠であるということだ。

 考えてみれば当然である。だが私は今までの人生で、考えたことがなかった。幾つになっても新しい知見というものは胸が躍る。この世の中にはまだ知らないことだらけだ。ワクワクする。

 それはいいとしてローションと洗浄だ。なるほどな、と感心した後、私は自分が書く小説にも取り入れたくなった。
 私が書いているのは男女の話ではない。私の推し(男)と推し(男)が愛を育む話なのだ。ガッツリと腐だ。当然行為をするときは取り入れるべきだし、その方がグッとBLっぽくなる。

 早速、私はネットで調べ始めた。まずはローションだ。
 私はローションというものを見たことがなかった。だが、なんかぬるぬるしたジェル状のものだろうということは想像がついた。用途を考えれば。しかし、その認識は浅いものであったことがすぐに分かった。世の中には、『アナル用ローション』というものがあるではないか。

 アナル用? 普通のと何が違うのだ。説明文を読み進めてみると、腸で吸収されても害のない成分でできていて、さらに乾きにくく、行為の途中で足す頻度が減るらしい。
 またもや新たな知見だ。
 そうだ、相手は腸なのだ。直腸は違うのかもしれないが、腸の仕事といえば『吸収』ではないか。ローションだって吸収されてしまうのだろう。ここで変な成分のものなど使えない。中にはオーガニックを謳っている商品もあり、ほうほう、こんなローションなら、受けに対する攻めの愛情も表現できそうだとほくそ笑んだ。

 もう一点、アナル用に重要なのは『乾きにくさ』であるようだ。乾いたら中を傷つけてしまうという理由もあるし、行為を途中で遮られたくないという理由もあるようだ。
 まあ、確かに。だが小説で書くなら途中で追加するというのも、それはそれでオツなものだ。時間の経過を表現できるし、「まだやるの?」と受けがおののくのもセットだと良い。この辺りはファンタジーなので、萌えるかどうかが肝心だ。

 絵と違って文章というのは、そこまで詳しい情報は要らない。ローションがどんなボトルに入ってて大きさは、形は、というのは知らなくても書ける。『攻めがベッドサイドのローションを掴んだ』と書けば、読み手がそれぞれの脳内に独自のローションのボトルを勝手に想像してくれる。ということは分かっていたが、知っていると書きやすいというのも事実。だからローションのボトルも調べておいた。ここではポンプ式だと大容量という知識を得ることができた。

 ローションについてはこんなものだろう。さて、もう一つの洗浄だ。だが、これはローションとは違って全く未知の知識だった。どうやってやるんだ?
 ここで多くのヒントを得たのは、ピクシブの先人の作品である。BLの知識は、BLに眠っている。漫画だとはっきり描かれていないことも多いが、小説だと人によっては詳しく説明していることもある。私はその時ある字書きさんの小説を好んで読んでいたのだが、その方は詳しく説明してくれる人で、ここで多くの知識を得ることができた。方法は色々あるようだが、シャワーのヘッドを外してホース部分をあそこに当てる、というのが一番心に残った。
 洗浄の知識を得たはいい。だが、これを小説に取り込むには少々難儀した。どうも、生々しすぎるのだ。

 多分、読み手というのは推しと推しがイチャイチャしているのが見たいのであって、洗浄で汚れが流れていくシーンは求めてないと思う。いや、特殊性癖の人はその限りではないが。少なくとも私は求めていないし、いい感じになってきた時にそのまま行為を始めて欲しいのに、中断して風呂場やトイレに行かせなければならない。

 もう何年も付き合っている恋人カップルが慣れた様子で、「もう、準備はしてあるから」と受けに言わすならいいが、それ以外だとどうもやりにくい。
 ましてや、受けが初めてで何も知らない状態のところを攻めがちょっと強引に、とか、酒に酔った二人が流れで、とかだと「さあ、尻の穴を洗うぞ」というのは無理がある。

 洗浄シーンをどうするか。

 おそらく、一年以上、書くたびに迷ったと思う。そうして悩んだ挙句、私はそれを捨てることにした。
 洗浄シーンは書かない。書いてないけど作中の二人はしてるのかもしれないし、洗浄してないけど綺麗なのかもしれない。綺麗だから、未洗浄でも舐めたって大丈夫だ。これは、ファンタジーなのだ。

 もちろん、「……うしろは洗ってある」と恥ずかしそうに攻めに告げる受けは大変萌えるし、何も知らない受けの後ろを優しく教えながら丁寧に洗ってあげる攻めも最高だ。
 だが、これ以外のシチュエーションでは洗浄は書かない。もうこれは割り切った方がいいだろう。なんでも現実に忠実にやればいいわけではないのだ。

 以上が、私の考える腐向け二次創作小説におけるローションと洗浄についてだ。
 さらっと書いたが、ここまでの知識を得るのに一年近くかかっている。知識を得た上でどれを使い、どれを捨て、どう表現したいかというのは創作者の好みと腕次第だと思っている。
 

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