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物件買うなら恋する町に…前編

いつだったか結構昔、鎌倉に行った際に感じた「観光地に住みたい!」という気持ちが、漠然とした憧れにしては強く心に残りました。

それから幾星霜、お稽古事が楽しくて、カルトナージュ、茶箱、アンカードルモンなど、いくつかディプロマを取得すると、何かと雑事の多い、ビーグル犬と猫2匹、実父と夫と暮らす住処の外に、部屋を持ちたいと考えるようになりました。アトリエというほどたいそうなものではなくとも、ひとりで創作に没頭したり、お教室の仲間とおさらいしたり、お友達に教えたりできるお部屋があったらな、と。

この思いは日に日に強くなるものの、どこに持つべきかと悩んでいると、燈台下暗し、極々身近な場所が「観光地」であることに気が付きました。

夫共々実家に入った形にはなるのですが、生まれ育った場所ではなく、私が嫁して後に両親が居を構えたため、地元の知識があまりなかったのです。が、鎌倉ほどのハイソ感はないにしても、国内外から何万人もの観光客が訪れる歴史ある町であることに違いありません。近すぎて見えない奇跡があるねといつか誰かが歌っていました。それは恋の歌だったと思いますが、人生のあらゆる場面に当てはまるのかもしれません。

喜び勇んで夫と共に物件探しを開始しましたが、最寄り駅は近代化されていて情緒がない。観光コースは商家か何代も前から住んでいるような戸建てばかり、一見たくさんあるマンションや建売住宅は、どうにも町外れ感が否めない。

考えてみれば、良い場所には必ず重要文化財クラスの建物、駐車場や墓地を擁した寺社仏閣が建てられているのだから、だってそれがウリの町なのだもの、そう易々と見つかるはずはありません。

どうしても引っ越さねばならぬ、切羽詰まった理由があるわけではないので、焦ることなく気長に探そうと言いつつも、どこか気持ちが宙ぶらりんで落ち着かない日々が過ぎていきました。




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