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てぃくる 842 やっと順番が来た

 きのこには好き勝手に生えているイメージがありますが、実は発生に順序があります。

 わたしの大好きなエノキタケは、古い朽木からは出てきません。台風などでフレッシュな倒木や棍株が現れると、待ってましたとばかりに発生します。シイタケなんかもそうですね。

 サルノコシカケの仲間にも新しもの好きがいて、ポピュラーなカワラタケは真っ先に来るタイプ。古い朽木からは出にくくなります。

 その逆に、他のきのこがもう出なくなった古い朽木専門に取り付くやつがいます。


 ヒロヒダタケ
 特別珍しいきのこではないんですが、だからと言ってどこにでもあるというきのこでもありません。
 なぜなら、彼らは好んで腐朽の進んだ広葉樹の朽木から発生するからです。握るとすぐにぐずぐず崩れてしまいそうな最末期の朽木。腐朽菌としては最後までがんばるムキタケすら敬遠するぼろぼろの朽木から、こうしてにょっきりと出てきます。

 まあ……出る場所が場所なのであまり食欲をそそらないんですが。事実、中毒することもあるようで、口にしない方がいいようです。決しておいしいきのこでもありませんし。

 植物の世界ではよく知られている遷移サクセション。その場所に住むものが環境の変化に応じて漸次入れ替わっていくことですが、きのこの世界にもそうした住み替わりがあるんですよね。そういうことをこっそり教えてくれる、ヒロヒダタケなのでした。


見送りの母の小袖に菊の花

(2021-10-08)


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