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てぃくる 441 亀の甲

「へえー。亀の甲羅で占うんですか。クラシックですね」
「卜占の基本だからね」

「毎回毎回亀の甲羅を使うのは、大変なんじゃないですか?」
「大変だよ。どこにでも掃いて捨てるくらいいるアカミミガメは、甲羅がやわで占いに適さない。イシガメやハコガメは希少種になっちゃって、採取がそもそも出来ないんだ。ウミガメ系はもっと希少だからだめ。海外の亀は、持ち込み禁止のものが多くてね」

「どうしてですか?」
「アカミミガメみたいに勝手に増えちゃうか、逆に希少種でワシントン条約で規制されているか、だからな」

「なるほど。アカミミガメが使えなくても、カミツキガメならいけるんじゃないんですか?」
「君が捕まえてさばいてくれればな」

「冗談ぽっくりこ」
「だろ? 甲羅の確保が難しくなってきたから、使いまわしてるんだよ」

「え? 同じのを何回も使うんですか?」
「どうせ、何がどう割れていたって、占われてる方は意味が分からんからね」

「ひでえ……。あなたには分かるんですか?」
「適当なこと言ってるだけだよ。占いのお勧めが願望とほんの少しでも重なれば、当たってるって喜ぶんだから。ちょろいもんだ」

「それなら、わざわざ亀の甲羅なんか使わなくても……」
「カニの甲羅を使ったら、どうしてもグラタンを作りたくなるだろ? 占いどころじゃなくなる」

(キッコウアワタケ)


 亀の甲より年の功。そう言いますが、本当かな?
 亀の甲は焼こうが何しようが結局甲羅に過ぎません。余計な一言が多い年の功の方が、ずっと嫌がられるかも。

 わたしも、そろそろ嫌がられるお年頃になってきました。口を開く時には、控えめを心がけることにします。その代わり、口ではなく筆で毒をいっぱいばらまきますが。

 いひひ。


鰐亀わにがめの報あり青田静まるる

(2018-07-21)

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