フィクションだけど嘘じゃない

僕は図書館にしか居場所がなかった。
学校ではいじめられるし、家には遅くまで誰も帰ってこない。

だけど、図書館へ行けばあなたたちに会える。
だから学校が終わるとすぐに図書館に行った。
あなたたちは、フィクションのなかで、逆境のなかで闘いを続ける。
僕はあなたたちのストーリーにのめり込む。
あなたたちとの時間を忘れはしない。
あなたたちの勇姿を忘れはしない。
あなたたちは、僕にたくさんのものをくれた。
それらは今でも、この手のなかにある。
空想から持ち出せるものだって、この世にはあるのだ。
あなたたちが僕に、現実を生きる勇気をくれた。

それでもたまに、あなたたちのいる世界へ行きたくなる。
だから僕は、創作をする。
でもほんとのところ、全然創作じゃないのだ。
僕が見たあなたたちの姿を、ただなぞっているだけなのだから。