大石慎之介選手に聞いてみた。来季B3参入を決めた「VELTEX静岡」の今とこれから。

■静岡市初のプロバスケットボールチームが誕生

VELTEX静岡
ヴェルテックスしずおかと読む。
今年4月に発足した、男子バスケットボールの社会人クラブチームで、「静岡エスアカデミア・スポーツクラブ」が母体。一般公募で正式チーム名を募り、去る9月6日、「VELTEX静岡」と改称した。

上記は、VELTEX静岡に所属する大石慎之介選手のツイート。大石選手は、昨シーズンまでB1の三遠ネオフェニックスに所属していたが、自身の大ケガと「地元静岡にBリーグのクラブを!」という熱い思いから、B1クラブを脱退し社会人クラブチームに加入することを決意。そこに至った経緯や心境は6月に『バスケット・カウント』に記事を掲載していただいたので、下記を参照してもらうと分りやすいだろう。

そして、9月12日、来季(2019年秋)からBリーグ3部(B3)に参戦可能な準加盟資格がB3理事会で承認。VELTEX静岡は、静岡市初のプロバスケットボールチームとして新たな歴史のページを開くこととなった。
B3準加盟資格を得るには最短でも2、3年はかかるとされているため、クラブ発足から約半年での認定は異例の早さといえる。しかし、静岡市や県のバスケットボール協会の公認を早々に得られたこと、クラブの活動期間(発足から参入まで)が1年以上あることなどの条件を満たしていたため、認定が下りたのだ。

このニュースに静岡県のバスケットボール界隈の熱は急上昇。
B3参入が(ほぼ)決まったからには、そこからB3優勝→B2昇格→B2優勝→B1昇格→B1優勝!・・・・とバスケファンの夢はふくらむ。
が、もちろん、容易なことではない。
産声が上がったばかりで、フロントの人員の構成もヘッドコーチ(HC)やトレーナーの選定もまだまだこれから。試合会場となる体育館の確保やスポンサーの獲得をはじめ、試練や課題は山積みだ。
しかし、大石選手らと関係者が最初に掲げた「静岡にBリーグを、最短でB1へ」という目標に向けてのスタートダッシュは上々と言える。
ここから、さまざまな人との出会いや協力を得て、さらに苦しみながらも楽しい「B1への道」をどんどん切り開いていくのだろう。


■大石選手に現状を取材。所属全選手の紹介も

そこで今回改めて大石選手を取材した。
正式チーム名が決まり、準加盟ながらもB3参戦が決まり、チームは10月から新しいトーナメント戦に挑む(1回戦は対戦相手の棄権により不戦勝に)。

念願のBリーグ参入が早々と決まり準備も佳境に入る中で、クラブやチームは今どんなことに取り組んでいるのか。また、大石選手自身のケガとリハビリの現状は。
三遠ネオフェニックス在籍時からさまざまに取材させていただいたご縁に預かり、チームマネージャーの藤田麻希子さん(前三遠)の心強い協力も得ながら実現したこの取材。大石選手はこれまでと変わらず「なんでも話しますよ」という朗らかで優しい表情で取材に応じてくれた。
また合わせて、所属する全選手のストロングポイントや役割も大石選手に教えていただいたので、試合観戦に行くファンの方には参考にしてもらえたらと思う。

■HCもスタッフもまだまだこれから■
ーーチームの発足から、大石選手の加入、B3参入とトントン拍子に決まっていきましたが、今の心境は?

「トントン拍子過ぎて怖いですけど(笑)。やはりB3の準加盟を取れたというのはすごく大きいですね。そもそも2〜3年かけてB3へという話だったのが1年で上がれるのはとても嬉しいですし、僕のリハビリのモチベーションもすごく上がりました。個人的にはめっちゃ嬉しいです。ただまあ、フロント側の仕事、経営や運営、興行の部分では準備期間がたった1年になってしまったので、大変といえばめちゃめちゃ大変ですね」
ーー大石選手は運営のほうにも関わっているのですか?
「すごく携わっているというわけではないですが、一応Bリーグのことは知っているので、『こっちのほうがいい』とか『ああすれば』とか運営のことにも口は出させてもらっていますね。マネージャーのまっきー(前出の藤田さん)と一緒に。それができているので、ストレスはあまりないですよ。参入に向けて今いい感じで進んでいると思います。何度も言いますが、大変ですけどね(笑)。急ピッチでいろいろと進めていかないといけないので。体育館の確保とかも」
ーー静岡市に新しいアリーナの建設(建て替え)構想が進んでいますよね?それが使えるとかの話は?
「いや、まだ全然なにも。アリーナができるとは思うのですが、まだまだ先の話でしょうし、具体的にはまだ何も聞いていないです。ただ、B3参入に合わせて、ホームゲームを開催するための体育館を2つ3つ確保しないといけないので、今動いているところですね。静岡市にもいくつかあるのですが、市民のみなさんが使う公共施設ですし、確保できなかったら県の東部に行くか、静岡市と同じ中部だけど藤枝市とか焼津市に行くか・・・という感じです」
ーーフロントの運営スタッフはもちろん、チームスタッフもこれからですよね?チームマネージャーは藤田さんがいますが。HCもまだでしょうか?
「HCもまだ全く決まっていないです。すべてここからです。選手構成にしても、HCが決まって『今の選手は要らない』となったら入れ替えですしね・・・。現状ではどうなるかまだわからないです。新しい選手に関しては“その時期”が来たら獲得に走るしかないですよね。ガンガンに。でも、GMもまだいないので、誰が誰を獲りに行くのか、まだ全く見当もつきませんけどね(笑)」
■リハビリの内容にバスケットの動きを■
ーー本当に大変ですよね。開幕までの1年なんてあっというまに過ぎそうです。では、大石選手の現状はどうですか?リハビリは順調そうです。B3参入も見えて、リハビリ計画も仕上げの段階に入るのでは。

「本当に大変な中でも僕はリハビリとトレーニングを中心にやらせてもらっているので、ありがたいと思っています。現在のリハビリの仕上がり具合としては、7割ぐらいかな。まだ無理はできませんが、ディフェンスの動きやシュートなど、リハビリの内容に徐々にバスケットの動きを取り入れ始めています」
ーー怖さはありませんか?
「だんだんと消えてはいますけど、まだちょっとありますね。無理はしたくないです。さらに、来年にB3参入となったので、余計に気持ちが慎重になっているというのもあります。もし、参入までにまだあと2、3年あったら、僕、早々に復帰しちゃってたかもしれないです。とりあえずやってみよう、みたいな感じで。それがあと1年になったので。まあ、慌てることはないですけど、無理をしないようにしつつも段階を上げていかないといけないと思っています。B3開幕から逆算して、きちんと計画を立てないと。まあ、そこは僕の所属先のアール・アンド・オーや個人的にもお世話になっている浜松市の山地輝幸トレーナー(ACTIVATE GYM)にお任せしているので、大丈夫だと思います」

【写真】バスケットの動きを取り入れたリハビリに励む大石選手。今年2月末に右膝前十字靭帯断裂という大ケガを負った彼は手術と厳しいリハビリを耐え、ここまで回復した。ゆっくりとしたスピードだが、感覚を取り戻すようにレイアップシュートやジャンプシュートにも挑んでいた。「大ケガから復帰してもう一度Bリーグで活躍できたら、ケガに悩む子供たちや学生たちの励みにもなる」と大石選手。

■プロをめざすチームの自覚と責任を持って■
ーー今年の夏、チームは静岡県の社会人リーグ戦を戦ってきました。これからHCが正式に決まったりする中でチームのバスケットのコンセプトも変わっていくとは思うのですが、現段階でVELTEX静岡が大事にしているバスケットのスタイルはどういうところでしょうか?

「僕も本当にいろんなHCの元でバスケットをやってきたのですが、やはりディフェンスは譲れないかなと思ってやっています。オフェンスやシュートは水物とよく言われますが、ディフェンスは安定しますからね。僕が加入してからは、ディフェンスの細かいルールを決めて実行してもらっているのですが、チーム自体がかなりよくなりました。今まではボールを常にドリブルでキープしてオフェンスばかりに専念していた選手が、ディフェンスで前線からプレッシャーをかけるようになったり。ディフェンスの重要さが浸透してきていると実感しています」
ーー夏のリーグ戦、全戦無敗で大半が100点以上の得点で勝利。どれだけ点差をつけてリードしていても最後まで攻守の手を弛めない印象を持ちました。試合の終盤でも変わらずオールコートプレスを仕掛けるとか。徹底的にやっていますよね。
「そうですね。やはり、VELTEX静岡ができて、試合を観に来てくれる方が格段に増えたので、観ていておもしろい試合をしなきゃいけないと思っています。手を抜いたら対戦相手に失礼だし、遊びや趣味じゃないんだし。勝っているからとヘラヘラしていたら、それこそ観に来てくれている方に失礼です。というのも、いずれはお金を払って観に来てもらうことになるので、選手たちにも意識付けをしたいんですよね。僕たちはまだプロの選手じゃないから難しいけれど、プロをめざしているんだからその自覚を持とうって。自覚と責任を持って一試合一試合に臨もうねという話は常にしているので。なので、練習への取り組み方も本当に変わりましたね」
ーー大事にしたいポイントとしてはやはりディフェンス。たしかに、ディフェンスのルールを決めて徹底させたらチーム力、チームワークも自然に向上しますね。
「そうなんです。ディフェンスでコミュニケーションがとれたらオフェンスでも自然とコミュニケーションはとれていきます。なので、まずディフェンスかなと思い、ルールを決めちゃいました。正直、今はオフェンスの決まりごとはないです(笑)。相手にスティールされにくいパスの距離感とか、ボールと人が連動する動きとかを習慣づかせるように練習しているぐらいですかね」

ーーではここからは所属選手の紹介をしていただきたいと思います。選手それぞれの特徴や強みを大石選手の視点でご紹介いただけますか。
(選手の顔写真の掲載を極力控えるため、クラブ公式サイトの選手紹介ページと合わせてご覧いただけると幸いです。選手データの詳細も公式サイトをご覧ください)

■背番号0 池田直斗(いけだなおと)選手 
「23歳と若いですが、キャプテンを務めてもらっています。年上の選手が多くてやりづらいでしょうが、試合でも練習でも声を出して引っ張っていってくれていますね。すごく真面目で、練習メニューも考えながらしっかりリードしてやってくれています。学生時代はポイントガード(PG)をやったことがないのですが、今はPGです。身長も178cmとプロでは小さいほうなので、これからBリーグでやっていくならPGの仕事を覚えていったほうがいいんじゃないかと。アグレッシブに切り込んでいくタイプですが、司令塔としての成長を期待しています」
■背番号2 遠藤将洋(えんどうまさひろ)選手
「身体能力がとても高いスウィングマン(シューティングガード(SG)/スモールフォワード(SF))です。オフェンスももちろんですが、とくにディフェンスでエナジーを発揮してくれます。彼が前からガンガンにプレッシャーをかけてくれることがチームにいい効果を与えてくれたり。池田や遠藤は、エネルギッシュでアグレッシブで泥臭い仕事を頑張る。そんなイメージですね」
■背番号3 江嶌猛(えじまたけし)選手
「なんてったって、折茂世代*ですから。本当にすごい選手です。トヨタで折茂さんと一緒にやっていました。今48歳ですからね。いやー、すごいの一言しか出てこない(笑)。トヨタを辞めてからは、国体の選手やコーチ、監督という感じで静岡のバスケットに携わってこられています。やはり勝負どころが解っているので、接戦になったりゲームの流れが悪くなったりした時は、江嶌さんの存在に本当に助けられていますね。あとは、バスケットが落ち着きます。ポジションはインサイドが主戦場のセンター(C)ですが、抜群のタイミングでポジション取りをしてくれるので、ボールを入れやすく起点を作りやすいです。チームの最年少が21歳の益子なので、もう親子ですね(笑)」
*折茂世代・・・現B1レバンガ北海道の代表取締役社長兼選手の折茂武彦氏の世代(1970年生まれのバスケット選手)を指す。現日本代表アシスタントコーチの佐古賢一氏など多くの名選手が生まれた年。
■背番号4 菅川浩樹(すがわひろき)選手
「僕の2つ上で、33歳。浜松商業高から早稲田大へ。頭が良くて、オール5で、天才です。本当に頭がいい方です。自分の役割をしっかり解ってくださっていて、チームのために真に徹することができる選手ですね。一番先頭を走るとか、ディフェンスで一番声を出すとか。今のメンバーの中で一番のエナジーマンです!誰も声を出していなくても菅川さんだけはずっと声を出しているとか。疲れていても声を出して盛り上げてくれるし、その辺はとくに若い選手に見習ってもらいたいかな。188cmと長身な上、3Pシュートもミドルショットも得意なので最強ですね。菅川さんと江嶌さんの二人がこのチームの屋台骨だと思っています。二人がいなかったら成り立っていないかも(笑)」
■背番号5 益子輝楓(ましこきふう)選手
「彼はPGですが、自分でアグレッシブにアタックして得点を取っていくタイプのPGですね。切り込んでアシストを狙ったり自分でシュートしたり。まだ大学生で21歳と若いですが、アメリカにバスケットのトレーニングに行ったり、3x3に参戦したりと経験を積んでいます。個人的に思うのは、3x3に参戦してから、スペースの見つけ方が上手になったかなというのがありますね。間合いを待つとか、周りを見てからアタックするとかがとても上手くなったと思います」
■背番号11 山口力也(やまぐちりきや)選手
※トップ画像の左側の選手です。昨季はB3東京八王子トレインズ(現B2)に所属。ご本人のコメントもいただけましたので、掲載しています。
「沼津中央高校の出身で、今22歳。彼が高校生の時から知っているのですが、その頃からめちゃめちゃ身体能力とスキルが高かったですね。ただそれに頼りきっている部分があるので、これから上をめざすなら、しっかり相手ディフェンスの動きを見抜くとか、瞬時の判断力を身につけていかないといけない。一応うちの得点源、エースという存在ではあるので、この力也を抑えられたら得点が伸びないということも避けないといけません。あとは1対1のディフェンスの成長も必要です。とんでもない身体能力の上に、判断力とディフェンス力がつけば、本当に恐ろしい選手になるだろうなと思っています」
●山口選手本人コメント「青森県出身ですが、母親が静岡県の出身で、高校も沼津中央高校なので、静岡には馴染みがありますね。オフに他のB3のチームに行くことも考えましたが、一からみんなで作り上げる新しいチームに入ったら自分もいい経験ができると思ったので、加入を決めました。クイックネス、一瞬のスピードを生かしてのプレーが自分の強みです。けれど、体が細くて当たり負けもしてしまうので、もっと体を鍛えて、その上でクイックネスも落とさないプレーヤーになっていきたいです。あとは、真面目すぎて考えすぎる傾向があり、判断が遅れて相手にプレーを見抜かれしまう時があるので、一瞬一瞬の判断力を成長させていきたいです。昨シーズンにB3優勝を経験させてもらいましたが、自分が主力で勝ったわけではありません。来シーズン、B3のコートに立った時には、成長した姿を見せたいですね。たくさん失敗して経験して成長します!」
■背番号13 東祐太(あずまゆうた)選手
「ポジションはパワーフォワード(PF)/センター(C)です。東はオフェンスリバウンドがとにかく強いです。学生の時(静岡産業大)も東海リーグのリバウンドランキングに入っていたくらい。本当にリバウンドが強いですね。あと、ミドルのジャンプショットが上手で、体が強いです。ポストアップでシール*するタイミングもめちゃめちゃよくて、上手いなって思います。まだ周りがそこに合わせ切れておらず、彼が欲しいタイミングでボールをもらえていない時があるので、それがちょっとストレスになってるかも。江嶌さんと出るときはPF、菅川さんと出るときはCの役割ですね。バスケットIQがとても高い選手です」
*シール・・・オフェンスがポストプレーをする時に、ディフェンスの前に出て体を密着させ、相手ディフェンダーが前に出てくるのを防ぐプレーのこと。
■背番号20 伊藤健太(いとうけんた)選手
「大学の時の僕の一つ下の後輩です。シューターですね。歳を重ねるにつれていろいろな経験を積み、周りも見えてきていてアシストもとても上手くなっています。リリースも早く、キャッチ&シュートが本当に上手い。体もすごく強いので、ボールのないところでのディフェンスも体を当てて頑張ってくれます。上背(178cm)はそんなにないですが、体が強いのでSGからPFまでを担ってくれているケースが多いですね」
■背番号1 大石慎之介(おおいししんのすけ)選手
「僕のこともですか?(笑)。ポジションはPGなのかSGなのか・・・。フェニックスの時は両方やりましたもんね。うーん、どっちでもいいです!というか、何でもやります!っていうスタンスですかね、今は。新しいチームだからといって自分のプレースタイルを変える必要もないですし。ただ、正直、今感じているのは、僕の良さってどのHCにも対応できる、順応できる対応力だと思っているんです。コーチが求めるポジションをやればいい、役割を遂行すればいいと思っているので。まあ今まで、クセの強い、イヤ、個性豊かな(笑)HCの元でやってきましたからね。それが生かされていると思っています。ディフェンスだけやれって言われたら徹底してやりますし、点取って来いって言われたら、ガンガンにシュート打ちます。アタックします。今はリハビリ中で全く試合に出ていないので信憑性はないですが(笑)、『なんでもやりまっせ!』という気持ちでいます!」


■Bリーグ2018-19seasonがついに開幕

男子プロバスケットボールBリーグの2018-19seasonが9月下旬から順次開幕し、毎週末、そして水曜日(不定)には、B1、B2、B3の多くの試合が全国各地で開催される。クラブが増えれば増えるほど競争は激しくなるが、その競争とヒトモノカネを巻き込む熱量が、日本のバスケットボール界と地元の盛り上がりにつながるのも確かだ。
静岡市初のプロバスケットボールチームが今走り始めた。
「バスケで静岡を盛り上げる」。
VELTEX静岡のこの決意が実を結ぶよう、静岡県民として、大昔の(笑)元バスケ部員として、そしてライターとして、楽しみながら見守っていきたいと思う。


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