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『Fate/Grand Order』から始める田中天作品

4月26日よりスマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』にて、『FGO Waltz in the MOONLIGHT/LOSTROOM』コラボイベント「輝け! グレイルライブ!! ~鶴のアイドル恩返し~」が開催されております。
このイベントは『FGO』から誕生した同名リズムゲームアプリとのコラボイベントで、同アプリのために書き下ろされた楽曲や、同アプリでキャラクター達の着用していた衣装が無料で手に入るなど、ユニークな実装が数多く行われております。
今回のイベント開始に合わせて、新規実装と相成ったミスクレーンは「デメリットや厳しい使用条件があれば、強力な効果にしても問題ないよね?」と言わんばかりの面白い性能なので、フレンドに借りるなどして一度使ってみるのはいかがでしょうか?

さて。
今回のイベントですが、TRPGリプレイを嗜んでいる時期がある人間にとって、一番面白いのは「シナリオ担当が矢野俊策と田中天である」ということでしょう。
現代が舞台の異能アクションが出来るゲーム『ダブルクロス』でデビューを果たした矢野俊策氏と、その『ダブルクロス』で場と空気と相手を読みまくった「ひどいプレイ」で有名となり、数多のリプレイに参加、自身も高い人気を誇るリプレイを執筆している田中天氏がまさか『FGO』のシナリオライターとして登板する日が来るとは。
田中天らしいキレッキレのセリフ回しと、筋の通った理屈と勢いと珍妙さと響きの面白さでラッシュをかけてくる作風で、ここ最近のイベントでは一番楽しく読ませていただいているんですが、「ヘイ水音。田中天の担当したリプレイに詳しいんだって?俺にも教えてくれよ。できればわかりやすい奴を」という声が聞かれるため、代表的な作品を三本ほど紹介させていただきます。

快男児と変な超人兵士達の戦いを見ろ!『ダブルクロス・リプレイ・トワイライト』

まず紹介したいのは『ダブルクロス・リプレイ・トワイライト』シリーズですね。

こちらは前述した通り『ダブルクロス』という「現代を舞台にした異能アクションが出来るゲーム」のリプレイなのですが、この『ダブルクロス』には「基本的なゲームシステムはそのままに、世界観だけ変えて遊ぶことが出来る」という素敵なルール「ステージ」がありまして、これにより学園物や戦場ドラマ物などでも遊ぶことが出来るんですが、『ダブルクロス・リプレイ・トワイライト』が採用しているのは数多あるステージの中でも「ウィアードエイジ」と呼ばれるステージになります。
このウィアードエイジの舞台となるのは第二次世界大戦開戦前夜となる「1938年のヨーロッパ」。
この動乱前夜のヨーロッパを舞台に冒険活劇をやろうというのがウィアードエイジであり、そのウィアードエイジを用いたリプレイとして発表されたのが『ダブルクロス・リプレイ・トワイライト』となります。

快男児・天花寺大悟とその仲間達の冒険活劇、「1938年」という時代だからこそ出来る「本作ならではの関係性」など、見所の多い作品ですが、やはり本作の魅力は快男児達の義侠心を引き立ててくれるナチスドイツの超人兵士軍団でありましょう。
とりわけ二巻で登場した「クレオパトラ・ダンディ」は凄まじいスター性を誇るナイスガイ、いやナイスダンディでした。
「クレオパトラ。なのに筋骨隆々とした大男」とか「気の触れた理屈を展開してくる」とか、見た目も言動もツッコミどころは非常に多いキャラクターではありましたが、事故に巻き込まれそうな老人を助けるなど強く優しい部分も持ち合わせている男でありました。
そんなクレオパトラダンディと、我らが快男児・天花寺大悟の戦いは「時代が違えば友になれたかもしれない」という運命の悲哀も滲んでおり、大好きなシーンの一つですね。

なお本作は『2nd Edition』での発表ですが、後に『3rd Edition』でのリプレイとして『帰ってきた快男児』が発表されております。

こちらはナチスドイツ総統を「社長」と呼び、軍事活動をプロレス興行か何かと勘違いし、ベーブ・ルースにプロレスを挑む謎(ナチ)の覆面レスラー「ナチ・マスカラス」が登場。こちらも大変面白いキャラクターとなっております。

『ナイトウィザード The 2nd Edition 愛はさだめ、さだめは死』

胡乱な妄言の田中天ではなく、真面目でシリアスな方の作風だと『ナイトウィザード The 2nd Edition 愛はさだめ、さだめは死』辺りが面白いかなと思います。

こちらは『ナイトウィザード』というゲームを用いたリプレイとなります。
『ナイトウィザード』自体は現代ファンタジーが楽しめるゲームで、現在『The 3rd Edition』が展開中ですが、この『愛はさだめ、さだめは死』はその一つ前の『The 2nd Edition』を用いたリプレイとなっております。

この作品で描かれているのは「魔王に敗れて死んでしまった少年が、幼馴染と再会するためにある存在と契約を交わして復活するも、目覚めた世界は自分の死から数カ月が過ぎた世界だった……」というヘビーな導入から始まるシナリオで、田中天氏のマスタリングやプレイヤー達によって笑える部分も多いです。多いんですが、クライマックスは少し切なく、そしてシリアスに決めきっている。主人公と宿敵のある種の友情は物語にほろ苦さを与え、引き締めてくれていましたね。
また『愛はさだめ、さだめは死』というタイトルからも分かるように、ジェイムズ・ティプトリー・Jr.の同名のSF小説が元ネタの一つになっているので、その辺の拾い方にも注目してみると面白いかなと思います。
まあ二話目はアフターエピソードめいた感じで、カオス極まりないんですが……。
そういう意味では「一冊で田中天の面白さを楽しめるリプレイ」といえるのかもしれません。そうではないのかもしれません。

プレイヤーとしての参加

電子書籍になってないのですが、『ダブルクロス・リプレイ・ストライク』は酷かったですね(褒め言葉)。
一巻の時点でやりたい放題をしていて既に面白いのですが、二巻から加納正顕氏が参加すると二人で共鳴しあい、ますますやりたい放題になって大惨事が巻き起こる……という。ただ一巻でも二巻でもそうですが、決めるところはしっかり決めているのは忘れてはいけないところでしょう。
また『セブン=フォートレス メビウス シェローティアの空砦』でのクラス「精霊船」の取得は読み物としての面白さもさることながら、自分のキャラクターだからこそのこだわりを感じられるクレバーな面白さがある展開でしたね。
自分のやりたいことのために設定をこねくり回すことはよくあることですが、田中天氏の場合は普通に「それ単独でセッションが成立しない?」ぐらいのエピソードが出てくるので面白すぎる……。

結びに

『FGO』の今回のイベントはサーヴァントユニヴァースということで、それに近い田中天執筆作品としては『天下繚乱ギャラクシー』という作品がありまして。
こちらは時代劇をやるゲーム『天下繚乱RPG』でスペースオペラをやるためのステージ「宇宙英傑伝」を用いた作品なんですが、まず「アフター・イエヤス」という銀河共通の年号からしてぶっ飛んだものを見せられるので、ああいう寝言と妄言のミルフィーユが好きな方にはオススメ……なんですが、絶版なんですよね……。

ま、まあ6月1日には『天下繚乱RPG』は『新・天下繚乱RPG』に生まれ変わるそうなので、そちらで展開されることを期待すると良いかなと思います。

そんなわけで。
私は周回に戻ります。糸が足らんのですよ。

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プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。