キンプリ

『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』願いを込めて名付けた思いを胸に空を翔けるカケルの四話

令和最初の『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』は四話「十王院カケル、愛と共に翔ける」だった。
この四話はこれまで語られてこなかったカケルの「『十王院財閥の御曹司』という将来が約束された立場の人間でありながら、なぜ彼はプリズムスタァをやっているのか」「本名は十王院一男(カズオ)でありながら、なぜ十王院カケルを名乗っているのか」について描いており、彼を見る目が良い方向へと大きく変わってしまうような素晴らしいエピソードになっている。
かくいう私もそんな「見る目が良い方向へと変わった一人」であり、今ではステージに立っている時の彼のことを「カケル」以外で呼べなくなっている。凄い。一エピソードでここまで印象が変わってくるなんて……。
そんな四話で重要なのは「名前に込めた願い」だ。
そして、ここから続く五話、六話もこの「名前に込めた願い」が重要な要素になっている。

「一男」に込められた「十王院の後継者」の願い

上述したように十王院一男は十王院財閥の御曹司である。
祖父は十王院財閥を発展させた十王院万太郎で、父親は婿養子の百次郎。母親は十王院千、祖母は十王院京という。
京、万、千、百、そして「十」王院。
「一」男である彼が十王院財閥の将来を担う人間であることは名前からも明らかだ。彼の「一男」という名前は家族が「十王院財閥を背負って立つ存在」という願いを込めて付けた名前なのだが、陰謀策謀が渦を巻き、自分が最終的に勝つためであればどんな手段を使っても許されるビジネスの世界において、その名前と願いは無力だ。
何せ子供相手にハニートラップを仕掛け、マスコミに情報をリークして「十王院財閥は世襲制から生まれ変わる」という風潮を作り上げようとする大人が相手である。
「十王院財閥の後継者たれ」という願いだけでは到底太刀打ち出来ないし、その名前の重圧に耐えきれなくなるのも当然と言えよう。

「カケル」の名前に込めた一男の願い

ただし彼にとって救いなのは二人のメンターと出会えていたことだろう。
一人は「『相手を倒す』ではなく『愛を持って包み込む』」という戦い方があることを教えてくれた児玉専務。
もう一人は「ハートで判断しろ」と教えてくれた祖父・十王院万太郎。
その二人と出会い、そしてプリズムショーに可能性を感じた一男は「プリズムショーなら愛を見つけられるのでは?」とプリズムショーの世界へと足を踏み入れる。自分にとっての愛を見つけ、数多のプリズムスタァ達のように飛ぶために、「十王院翔(カケル)」を自分の名前として。

彼が「カケル」という名前にこだわるのは、愛を教えてくれたプリズムスタァ達のようになりたかったからなのだ。「あんな風になりたい」「あんな風に飛びたい」と思ったから、彼は「カケル」を名乗る。

「十王院カケル、翔んでみせる!」と宣言するために。

先進国と後進国

それはそれとして今回「菱田監督らしいなぁ」と特に感じたのは「本当にこの自然を壊して開発するのかねぇ」と軽く言ったカケルをメリナが咎めたシーンだ。

元々菱田正和監督は時事ネタやセンシティブな問題を自作の中で小ネタとして拾うことが多い。
『KING OF PRISM』で言えば、「どう見てもザハ・ハディッドデザインな国立競技場が大和アレクサンダーによって破壊され、仁科カヅキが現在建設中の新国立競技場へと再建される」辺りがまさにそれに該当するが、今回の「先進国と後進国の関係性」と「先進国の傲慢」辺りはその延長線上にあって(かつキンプリのメインターゲットの年齢層にあった問題提起になっていて)、とても面白いものを見せてもらった。
この問題は容易に解決するものではないが、わずかでも触れておこうとする菱田監督のある種の親心めいた作風は素直に尊敬する。これだから菱田正和監督を応援したくなるのだ。

なおカケルのプリズムショーにおけるサイリウムチェンジと、サタデーモーニングフィーバーなプリズムジャンプだが、そもそもサイリウムチェンジは『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』のシンフォニアドレスがスタァの個性に合わせて変身するシーンが源流にあること、「パンピナッ!」で「プリティーなリズムでサタデーモーニングフィーバー」というフレーズがある事を考えると『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』ネタと言ってもいいだろう。
『プリパラ』からの流れで言うのなら「なりたい自分へのサイリウムチェンジ」だろうか。いずれにせよ「やりやがったな、菱田正和!」である。
『キラッとプリ☆チャン』が二年目に入ったからとはいえ、本当に油断ならない。

最後に

第二章はいきなりこのレベルのものを出してくる時点で「ゲーッ!どうなるんだー!」と興奮してしまった事を思い出す。そして今週その「どうなるんだー!」となった四話を見て同じことを思った。どうなるんだー!ワクワクが止まらないぞー!「Unite! The Night!」はシリーズでは初めて「小室哲哉作曲ではないTRF楽曲」で、新しいものが来た興奮で寝るに寝られない。

さて、来週は高田馬場ジョージが当番を務める。油断して涙を拭くものを持たずに見たら号泣して醜態を晒した回なので、まだ見てない人はハンカチを片手に見てほしい。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。