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『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』七話と、好きを偽らず、発信する勇気を見せてくれた西園寺レオの輝き

『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』三章の幕開けとなる第七話が放送された。
第七話でステージに上るのは西園寺レオ。
エーデルローズ生達がこれまで身に纏ってきたステージ衣装をデザインしてきた、「かわいいものが大好き!」な少年である。
これまで様々なメディアで断片的に語られてきた「かわいいものが大好きになった理由」であったが、今回の七話はそんなレオを大きく掘り下げ、「エーデルローズにどういう経緯でやってきたのか」、そして「レオにとってのエーデルローズとはどういう存在なのか」が描かれており、西園寺レオについてぐっと理解が深まる一話となっている。
父親がその「レオ」という名前に込めたという「獅子のような心をもつ人間」の一面も覗かせた第七話「西園寺レオ 心の花を咲かせましょう♡」。その物語は一言で言えば「自分の『好き』に勇気を持てる一話」だった。

好きを発信する自分にプリズムジャンプ

今回の七話は一言で言えば「一緒に上京してきた姉二人を励ますべくプリズムショーを行う」だった。
名前が名前なだけにファンの間では「絶対に西園寺ドロとかいう姉がいるでしょ」と言われていたので、レオの担当回になった際に姉が登場することについては何の問題もない。
訓練されたプリズムエリートとしては「ついに姉が登場するのか!」ぐらいの認識であったし、一話で出てきた姉の姿がどう見ても『プリパラ』で笑ってしまったのだが、まさかレオが姉と一緒に北海道から上京することになった理由があそこまで壮絶なものであるとは予想していなかった。

端的に言えば。
西園寺レオは虐められていたのだ。

作中で描かれているように西園寺レオは「かわいい」に溢れた家庭環境の中で育ち、両親と姉二人の愛情を受けて育った。
「かわいいものが大好き」という彼の個性はそうした家庭環境の中で育まれたもので、誰かを暖かく迎え入れる器量も「どんなレオであっても受け入れる」という優しい家族がいたからこそ彼の身に宿ったものなのだろう。
しかし小学五年生になったある日。レオのそうした「誰でも受け入れ、仲良く出来る優しさ」を周囲は攻撃し始めたのだ。
「かわいいものが好き」も容赦なく攻撃されてレオは傷ついていくが、レオにとって何より辛かったのは二人の姉が「こんな風になったのは自分達のせいだ」と自分以上に傷ついたことだろう。
だからレオは中学生になってからは「男らしくあろう」とかわいいものが大好きな自分を偽ろうとするのだが、本心を偽り続けるのは大変な労力がかかるものだ。レオはいつからか「学校に行けない」という状態になってしまう。
そんなレオの唯一の心の癒やしがプリズムショー。レオはプリズムショーを見ている時だけ自分の心に素直になることができたのだ。

姉達に勧められて上京し、エーデルローズにやってきたレオにエーデルローズ生達は優しかった。
あるがままの自分を受け入れてくれた。自分の過去を受け止め、悩みを共有してくれる理解者もいた。
レオはエーデルローズに来たからこそ「かわいいものが好き」という自分を嘘偽る事なく出すことが出来たのだ。

だからプリズムスタァ・西園寺レオのプリズムショーは「なりたい自分になれる」と「自分の『好き』に勇気を持って!」に溢れている。
誰かに何を言われても。「おかしい」と言われても。心無い言葉をぶつけられても。
自分の『好き』は止められない。だって『好き』なのだから。
今はどうであっても、そんな『好き』を発信する人間へと「変わっていけること」を見せてくれた西園寺レオは、本当に心が強いプリズムスタァだと思うのだ。

自分の好きを発信し続けてよかった

個人的な見解であるが、七話の「自分の『好き』を偽らず、勇気を持って愛し続けていい」というメッセージは『プリティーリズム・レインボーライブ』から愛し続けた人に向けたメッセージでもあると考えている。

『プリティーリズム・レインボーライブ』は「万人向けアニメ」を志向して制作されているが、商業的な面から言えば「女児向けアニメ」である。
それはつまり「子供に向けて制作されたもの」である。したがって私のような大人のユーザーが「面白い」と言葉をどれだけ重ねて述べていても「でも子供向けじゃん」と言われがちではあったし、もっと言えば「奇異な目」で見られる事があった。
そうした眼差しを悪く言うつもりはない。
深夜帯を中心に大人をメインターゲットにした作品が溢れている昨今において、わざわざ子供向け作品に手を伸ばさなくても自分の好みに合った作品はいくらでもあるわけだし、そもそも子供向け作品は「いつかは卒業していくもの」だ。「子供向けだから」というのは別に悪いことではない。それはそれで「成長している」ということを証明しているわけで、それそのものが悪いわけではない。
ただ「子供向けじゃん」を理由にされると少し傷つくのだ。『好き』だから応援しているし、「面白い」と思っているからこんなにも深く愛しているのだから。その一言を述べてシャットアウトされてしまうと、深い溝を感じてしまうのである。

そういう意味では今回の七話は「あっ、好きでいて良いんだ」「好きだって発信し続けてよかったんだ」と感じた一話だったし、これからも勇気を持って発信し続けようと思えた一話だった。

レオと同じように。
勇気を持って発信し続けることが、他者の大好きに勇気を与えるはずだと信じたい。

豊富すぎるパロディ

ところで今回はいつにも増してパロディが多い一話だった。
レオの回想シーンで出てきたぬいぐるみ達は『プリティーリズム・オーロラドリーム』『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』に出てきたマスコット達であるし、レオの姉二人は名前は『リルリルフェアリル』のユニコーンのフェアリル「きらら」「ゆらら」に因んだもので、見た目と声優は『プリパラ』のメインキャラクターであるドロシー・ウェスト、レオナ・ウェストのパロディになっている(なお両親も『プリパラ』のドロシー&レオナと同じ声優がキャスティングされている)。
華京院コンテストの衣装試着で一条シンが着ているのは『ラブライブ!』ファーストライブのキービジュアルに描かれたものだし、十王院カケルも『ラブライブ!』の舞台となる音ノ木坂学院の制服(ヘアスタイルを考えるとおそらく高坂穂乃果。なおカケルにはオタク趣味設定が存在する)を着用している。
コンテストに出場するというミオン・アナスタシアは髪色が違うだけで見た目は完全に『プリティーリズム・オーロラドリーム』の高峰みおん(アピールもみおんのパロディ)だし、ターンエーズは菱田正和監督が演出助手を努めた『∀ガンダム』と『ラブライブ!』のμ’sの合体技である。
コンテスト本番でカケルは『プリパラ』の真中らぁら(サイリウムチェンジつながり!)で、御徒町ツルギは南みれぃとなっている。

この他にも「ここ、明らかにプリパラタウン」や「もんじゃ焼きを食べに行く」や「いいぜ!いいぜ!」など本当にパロディが多いのだが、『リルリルフェアリル』に関しては『リルリルフェアリル』に参加していた白土夏海が七話の脚本を務め、絵コンテを『リルリルフェアリル』の監督である五城桜が担当している事もあって、ド直球かつオマージュ的要素も含まれたパロディになっている。

遊び心を忘れないのが菱田正和監督の持ち味なので、こうした点に着目してみても面白いだろう(二話のヤッターマンとか。セルフパロディである)。

最後に

今回のEDは「Love&Peace Forever」。レオらしいアレンジが施されていて、より物語とリンクした印象を残す。michitomoさんの良アレンジである。

さて次回はゼウスこと涼野ユウの当番回。
涼野ユウはエーデルローズ生では唯一の『プリティーリズム・レインボーライブ』からの続投キャラクターであるが、そんな彼がどんな物語を紡ぎ、どんなプリズムショーを見せてくれるのだろうか。『プリティーリズム・レインボーライブ』を見た方は特に注目して見ていただきたい。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。