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ごちうさ最新話の見どころまとめ(まんがタイムきららMAX2022年12月号)

「ご注文はうさぎですか?」(以下、ごちうさ)にはたくさんの魅力がありますが、いざ人に説明しようとすると、何から話せばいいか迷いますよね。

キャラクターの成長?ストーリーの伏線?自分の中では素晴らしいものだと分かっているつもりでも、それを言葉にしようとすると案外、難しいものです。

まんがタイムきららMAXの最新話を読むたびに、この作品の奥の深さを実感する自分がいます。何も考えずにごちうさを読むのも楽しみ方の一つですが、せっかくならこの魅力を人に伝えられるようになりたいですよね?

この記事は、そんなファンのために、毎月更新されるごちうさの新たな魅力を紐解くことで、その見どころとなるポイントを整理し、まとめていくものとなっています。

さて、今月もごちうさの最新話が公開されました!

お話に関わる重要なシーンをピックアップしていきますので、よろしければ最後までお付き合い下さい。

注意:本記事は、まんがタイムきららMAX2022年12月号掲載のごちうさに関するネタバレを含みます。

■ 絵画のように美しい三姉妹に目を奪われる時間

まんがタイムきららMAX2022年12月号

前回のお話は海シスト編が一段落かと思いきや、ココアちゃんが実家に帰省するという、まさかの展開。しかも実家に向かうのはココアちゃん一人だけでなく、どういうわけかチノちゃんまで一緒についてきています。

今月のお話は二人のことを、さっそくモカ姉が大歓迎!三人で一緒に街へパンの配達に繰り出します。本編の内容と連動するように、扉絵の主役もココチノとモカ姉でした。

森の中で絵本を読む三人の様子が描かれていますね。しかし、この神聖な雰囲気はイラストというより、もはや絵画です…!

「絵になる」とはまさにこのことを言うのでしょう。森の中で少女が絵本を読んでいるというシチュエーションは、それだけでおとぎ話を連想させる魅力があります。お揃いの青いワンピースも、このシチュエーションのおかげで、まるで「不思議の国のアリス」に登場する衣装のようです。

実際、読んでいる本も「不思議の国のアリス」っぽいですよね。黒いシルエットの少女はまさにアリス本人なんじゃないかと思います。

極めつけはこのイラスト、なんと遠近法が使われているじゃないですか。遠近法はご存知の方も多いと思いますが、絵に立体感を出す手法です。消失点で奥行きを持たせる「線遠近法」は有名ですが、色に濃淡をつけることで、立体感を出す手法もあります。

今月の扉絵はまさにその色彩法が使われていて、画面端の植物がぼやけています。これにより、私たち読者はまるでその場にいるような、茂みの中から三人の姿をこっそり覗いているような、そんな錯覚に陥るわけです。

この錯覚も、絵の神聖さに一役買っていると言えるでしょう。画家としてのKoi先生の才能が爆発したイラストでした。相変わらずKoi先生は画力の進化が青天井ですね。

■ 保登姉妹のルーツを巡る。光に満ちた石造りの街と、温かな人々

まんがタイムきららMAX2022年12月号

さて本編ですが、今月のお話はお久しぶりの帰省回。普段は描かれない、ココアちゃんの実家周りのエピソードが見られます。ココアちゃんは過去に一度、実家に帰省したことがありますが、当時のお話はホットベーカリーの手伝いが中心でした。

その点、今回のお話は「実家の外」にスポットが当たっており、前回とは趣が異なります。街の景色や人々に、保登姉妹のルーツを感じるお話でした。二人がもつ本質的な温かさを体現したような街です。

改めて本編を振り返ってみましょう。まず驚いたのは、モカ姉がなんと移動販売車をゲットしたという大ニュース!

まんがタイムきららMAX2022年12月号

側面に店のロゴが入った、本格的なキッチンカー。ここ最近、ホットベーカリーは順調にお客さんが増えてきて、特にココアちゃんが木組みの街に進学してから知名度が急上昇したようです。

前回の帰省時に、そんな感じのことをちょこさんが語っていましたね。移動販売車はおそらく、そうした経済的な理由から可能になったから導入したのでしょう。

しかし、それにしてもスクーターからの成長が著しい…!最後に見たときはスクーターでパンの配達をしていたというのに、いつの間にか大型車に進化していたわけですから、これには驚きです。

モカ姉はちょうど街へパンの配達に向かおうとしていました。スクーターに人を二人も乗せるのは無理ですが、車なら可能です。テンションの高いモカ姉の勢いに半ば押されるようにして、ココチノも街へ。

とはいえ、車も決して万能というわけではありません。細い道や階段など、車が通れない箇所もあります。そうした場所にはココチノが徒歩でパンを届けに行くわけですが、その中で描かれる街の景色が光に満ちていて、温かい。

まんがタイムきららMAX2022年12月号
まんがタイムきららMAX2022年12月号

陽光を反射する、白い壁。カラフルな花に、おしゃれな看板。瀟洒な街並みは、来訪者を快く迎え入れているかのようです。

木組みの街とは違う、石造りの建物が多い街もまた、西欧独特の優しい空気が感じられて良いですね。

また、広場に戻ると、キッチンカーの前に人だかりが。ホットベーカリーの移動販売も大盛況のようです。

まんがタイムきららMAX2022年12月号

ここで会ったお客さんも非常に大らかな人たちばかりで、余所者のチノちゃんをあっさり保登家の末っ子として受け入れるなど、包容力があり、のんびりしています。

まんがタイムきららMAX2022年12月号

このように街も人も穏やかな場所で育ってきたからこそ、保登姉妹は今の明るい性格があるのだという気付きがありました。

街の優しさは、チノちゃんの態度もよく物語っていると思います。連日の旅で疲れていたとはいえ、しっかり者のチノちゃんが夜までぐっすり寝てしまったのは、保登姉妹や街の雰囲気に安心したからでしょう。

まんがタイムきららMAX2022年12月号

年相応の顔で安らかに眠るチノちゃんの表情が印象的でした。このシーンのチノちゃん、本当に守ってあげたくなるほどの可愛さですよね…!

この街だから、この姉妹がある。そんな説得力を強く感じたエピソードだったと思います。

【追記(2022.10.29)】
フォロワーさんの調べによると、ココアちゃんの実家がある街は「エズ村」という場所がモデルになっているそうです。

白い壁と植物に囲まれた風景はまさしく、本編のそれ。聖地巡礼の際にはぜひ行ってみて下さい!

■ モカ姉のお姉ちゃんらしさ

まんがタイムきららMAX2022年12月号

さてチノちゃんが寝てしまったので、保登姉妹は一緒にお風呂へ。ココアちゃんが将来の進路を決めてから初の再会ということで、話題は自然と進路の話に移ります。

今月のモカ姉はさすがココアさんのお姉ちゃんだと思いましたね。妹の成長を一番に喜ぶって、まさにお姉ちゃんじゃないですか。

ご存知の通り、ココアちゃんは高校卒業後に都会へ移ります。その理由は、ただモカ姉の姿に憧れているだけでなく、彼女と対等な存在として並び立ちたいと思うからです。卒業旅行で様々なお店のパンに触れたのがきっかけで、ココアちゃんは都会のパンに興味を持つようになりました。

モカ姉がかつて選ばなかった「都会」という道をあえて進むことで、「姉の背中を追う自分」から脱却できると考えたわけです。モカ姉もこの意思は事前に聞いていて、最初はココアちゃんに対して寂しそうな素振りを見せていました。

それでも、モカ姉は妹の選択を「嬉しい」って言うんですよね。「ココアにしか出来ない道を見つけたんだね」「私はそれがすごく嬉しい」。良かったね、ではなく、「嬉しい」という感情を伴った言葉は、きっとココアちゃんが一番欲しかったものです。

寂しさも嬉しさも包み隠さず伝えるモカ姉だからこそ、彼女の言葉は、嘘偽りのない本音だとはっきり分かります。

ココアちゃんの成長に対する、モカ姉の万感の思いが伝わってくるシーンでした。ちなみにこのあたりの心情は「3月の扉」によく表れていて、ごちうさのキャラソンでは珍しい、泣きメロの卒業ソングとなっています。「3月の扉」は今月のお話とセットで聴くと感動的なので、よかったら聴いてみて下さい。

■ ココアちゃんが辿り着いた「答え」

まんがタイムきららMAX2022年12月号

一方のココアちゃんもモカ姉の言葉に共鳴するように、本音を語ります。都会に行こうと決心したこと。そこにどんな思いがあったのか。何が自分の背中を押す原動力になっているのか。

「良いところを見せるばかりがお姉ちゃんではなかった」って、あのココアちゃんがまさかそんな台詞を言うようになるとは…!

昔のココアちゃんは妹たちにカッコつけようと頑張っていたわけじゃないですか。球技大会の練習を張り切ったのも、お茶会でチマメ隊にティーセットを奢ったのも、すべてはそのためです。ココアちゃんの中にはいつだって妹たちの存在があり、妹に見られても恥じない自分であろうと努力してきたわけです。

もちろん、失敗はたくさんしたし、当のチノちゃんからは呆れられてしまうケースも多々ありましたが、それでもココアちゃんの中にある「しっかりした女性=お姉ちゃん」の図式が崩れたことは今までありませんでした。

そのココアちゃんが、いまや「良いとこ見せるばかりがお姉ちゃんじゃないんだね」と言っている。背中を見せるだけでなく、妹の背中に勇気づけられるのもまた、お姉ちゃんなのだと。

良い言葉すぎる…。そう思うと同時に、積み重ねてきた歴史を感じます。

また、このお姉ちゃん像はココアちゃん自身の中に元から存在していた理想の姿でもあります。ココアちゃんが今、チノちゃんの頑張りに力をもらっているように、モカ姉もまた、ココアちゃんという妹の存在に励まされてきました。

言ってしまえばココアちゃんは立派なお姉ちゃんを目指すにあたり、実は最初から答えを知っていたわけです。でも、それが答えだと気付くのには、経験が必要だった。チノちゃんと時に喧嘩しながらも一緒に過ごした経験があるからこそ、ココアちゃんは今、モカ姉と対等に「お姉ちゃん」を語れています。

ココアちゃんが道を見失わず、ちゃんと大切な答えに辿り着くことができて嬉しいです。長い道のりの果てに得た、答え。新しい価値観を胸に、これからもココアちゃんは道を切り拓いていくでしょう。彼女の成長の物語が今後もますます楽しみです。

■ アルバムに仕舞われた、お母さんの写真。チノちゃんは今、何を思う?

まんがタイムきららMAX2022年12月号

最後になりますが、今月もまた気になる終わり方をしましたね…!眠りから覚めて、1階に下りてきたチノちゃんにちょこさんが見せたのは、かつての自分と、親友ーーチノちゃんのお母さんが映った写真。

改めて、チノちゃんはこの写真に一体何を感じるのでしょうか?個人的には、うさちょこの写真はチノちゃんが新しい何かを始めるきっかけになる気がします。

というのも、アニメ3期のチノちゃんは同じ写真を見て、旅行を提案しているんですよ。

原作とアニメの違いを簡単に振り返っておきましょう。ごちうさのアニメは、原作の内容を忠実に再現しています。特に、2期までのアニメは本当にコミックスの映像化で、原作のストーリーを音や動画で補強することに徹していました。

しかし、この流れに変化が生じたのが第3期シリーズ「BLOOM」です。原作のストーリーを補強するという大原則はそのままに、前作よりもダイナミックな改変が目立ちました。BLOOM最終羽はその最たる例で、ココアちゃんが実家から取り寄せた中学時代の制服に、チノちゃんはどこか引っかかりを覚えます。

「ご注文はうさぎですか?BLOOM」第12羽

原作はここで止まっていますが、アニメにはさらにもう一歩踏み込んだ描写が出てきました。ココアちゃんの昔の制服が気になったチノちゃんがアルバムを見返すと、そこには同じ制服を着たお母さんの姿が。

「ご注文はうさぎですか?BLOOM」第12羽

すなわち、チノちゃんが自らの引っかかりを確信に変えるシーンです。見覚えのあるその制服は確かに、お母さんがアルバムの中で着ていたものと一緒でした。

つまり、お母さんは木組みの街の出身というわけではなく、ココアちゃんと同じように、街の外から来た人であることを意味します。この新しい発見が直接的なきっかけとなって、チノちゃんは外の世界に興味を持つようになりました。

「ご注文はうさぎですか?BLOOM」第12羽

ようするにチノちゃんがうさちょこ二人の写真を見返したエピソードは、アニメでは旅行編のトリガーを引く極めて大事な転機になっているというわけです。ですが、原作のチノちゃんはすでに旅行を経験しているため、今回のお話で写真を見たことが、「外の世界に興味を持つ」という風に繋がるとは考えにくいです。

しかしながらやはり写真が重要な転機であるのは間違いなく、ここからまた大きなイベントが動き出すかもしれません。11巻収録範囲、いよいよラストスパートです!

■ おわりに

ご注文はうさぎですか?Koi

さて今回は、ココアちゃんの実家がある街と、久しぶりに再会したモカ姉とココアちゃんとの心の交流が感動的なお話でした。いかがでしたか?

ここでご紹介したものは、あくまで一個人の解釈です。本記事を手がかりに、みなさんも自分なりの解釈を広げてみてください。

またね!

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