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ごちうさ最新話の見どころまとめ(まんがタイムきららMAX2022年6月号)

「ご注文はうさぎですか?」(以下、ごちうさ)にはたくさんの魅力がありますが、いざ人に説明しようとすると、何から話せばいいか迷いますよね。

キャラクターの成長?ストーリーの伏線?自分の中では素晴らしいものだと分かっているつもりでも、それを言葉にしようとすると、案外難しいものです。

まんがタイムきららMAXの最新話を読むたびに、この作品の奥の深さを実感する自分がいます。何も考えずにごちうさを読むのも楽しみ方の一つですが、せっかくならこの魅力を人に伝えられるようになりたいですよね?

この記事は、そんなファンのために、毎月更新されるごちうさの新たな魅力を紐解くことで、その見どころとなるポイントを整理し、まとめていくものとなっています。

さて、今月もごちうさの最新話が公開されました。

お話に関わる重要なシーンをピックアップしていきますので、よろしければ最後までお付き合い下さい。

注意:本記事は、まんがタイムきららMAX2022年6月号掲載のごちうさに関するネタバレを含みます。

■ 今月の扉絵はチノちゃんと青山さん!本編にガッツリ絡んでくる「銀河鉄道」

まんがタイムきららMAX2022年6月号

今月の扉絵は、意外なコンビでした。車掌の格好をしたチノちゃんと青山先生という、珍しい取り合わせ。

チノちゃんはごちうさの中でも重要な立ち位置にいるキャラクターです。なので登場頻度が多く、扉絵にも結構出ています。が、青山先生はそもそもイラストの数自体が少ないです。

チノちゃんと青山先生が描かれたイラストって、過去にあるんでしょうか?

気になったので、手持ちの画集三冊を軽く調べてみました。ですが、やはり二人が一緒に描かれているものは見つかりませんでした。モカ姉と腕を組んでいたり、凛ちゃんさんと一緒にカルーセルに乗ったりしたイラストはありますが、それ以外のメンバーと一緒に描かれたものはなさそうです。チノちゃんと一緒にいるイラストは、ひょっとすると今回が初かもしれません。

まんがタイムきららMAX2015年12月号表紙
まんがタイムきららMAX2016年9月号

白い制服と星空というコントラストが素敵ですね。今月の扉絵もKoi先生の画力が光っています。

ただ今回ばかりは、扉絵よりも別の情報に気を取られました。

何しろ、青山先生のペンネームに実は隠された意味があることが分かったわけですからね。

まんがタイムきららMAX2022年6月号

青山先生に関してはいまだに謎に包まれた部分が多いです。ペンネームの由来もその一つで、今回初めて分かったことの一つは、実はラビットハウスのマスターが考えて名付けたものである、ということ。

それだけでも十分驚きですが、ペンネームにはなんと、「本当の意味」があるらしい。

一体全体、あのペンネームにどんな意味があると言うのでしょうか。

そういうわけで最初はあまり扉絵に意識が向かなかったのですが、蓋を開けてみれば、今回のお話はズバリ「銀河鉄道」じゃないですか。

ペンネームより、むしろこっちの方が本編の大きな見どころだったわけで、その意味では一つの手品に近いものを感じます。全く別の情報で読者の気を扉絵からそらし、話が全て終わったあとに、「実は扉絵が本編を表していたんだよ」とバラす。上手い手品を見せられたような、そんな気分になりましたね。もちろん、ペンネームに隠された本当の意味も良かったです。

■ 凛ちゃんさんが小説を楽しめる理由

 まんがタイムきららMAX2022年6月号

さて今月のお話は、前半と後半で内容が大きく異なります。

どちらも「不思議体験」というキーワードは共通しているものの、前半は凛ちゃんさんと青山先生の対比が見事でした。

あらすじを簡単に整理しておくと、青山先生が寝不足で倒れます。元々体力に自信があるタイプではなさそうな先生ではありますが、原稿の仕事で無理をしたのが祟った形になりました。

先生が締め切りに追われているのはいつもの事ではありますが、倒れるまで根を詰めるのは、かなり珍しい事態です。おそらく、相当無理をしたのでしょう。

ココアちゃんたちが看病する中、青山先生は見舞いの品として”不思議体験”を求めます。

行き詰っていた原稿のテーマは「夏の怪奇短編」なので、その原稿を進めるのに役立つネタがいい、ということですね。

ごちうさの世界はファンタジーなので、主要メンバーは何回か非現実的な体験をしています。マヤちゃんは「ゲーセン」、メグちゃんは「クロラビ」、そしてココアちゃんは「ハロウィン」と、懐かしいネタが結構出てきました。

ところが凛ちゃんさんはというと、話せるようなネタがない。不思議体験なんてそもそも大半の人は持っていないものですが、「大人になると気付けなくなる」という言葉は、その通りですね。人間、どうしても歳をとるほど頭は固くなっていきます。

けれど、それは決して悪いことばかりではありません。むしろ、捉え方によっては良いことにすら変わるわけで、凛ちゃんさんが小説を楽しめる原動力はここにありました。身の回りに不思議がないからこそ、創作物にわくわくできる。

この考え方、すごく良いですよね。背中を押してもらえるというか、非日常だけが楽しみの全てじゃないんだって思えます。凛ちゃんさんのこの言葉が、紛れもない本心であることは、過去の彼女のエピソードを振り返れば明らかです。

たとえばアニメ化もされた原作6巻3話では、怪盗ラパンコスのシャロちゃんに歓喜するシーンがありました。7巻の新年パーティでは、凛ちゃん自ら怪盗ラパンに変身してみせただけでなく、「景品は全部私が頂きますけどね!」と、怪盗らしい宣言をしています。

真面目でしっかり者のイメージが強い凛ちゃんさんですが、こうしたところは怪盗ラパンの熱心なファンそのものです。

そして何より、彼女は「不思議体験のない自分」を受け入れているんですよね。

もちろん、話のネタが多いに越したことはありませんし、できることなら不思議な体験をしてみたいと思うのも確かでしょう。ですが、それは凛ちゃんさんにとって、諦めることができるもの。なぜなら、日常に不思議がなくとも、青山先生の小説があるから。

僕たちファンがごちうさを楽しむことができている理由の一つも、少なからずこうした考え方にあるのではないでしょうか。木組みの街が日常でないからこそ、ごちうさの世界が輝くわけです。

■ 幻聴ではない本物の不思議

まんがタイムきららMAX2022年6月号

では一方の青山先生はというと、凜ちゃんさんとは対称的です。今回のお話は、このシーンが非常に切なかったですね…。

凛ちゃんさんが帰ったあと。自分とティッピー以外には誰の姿もないココアちゃんの部屋でひとり、青山先生は執筆を始めます。

病み上がりなので当然ながら無理をしているはずですが、凜ちゃんさんの純粋な思いが、青山先生に火をつけたんでしょうね。

ところが不意に溢れ落ちたのは、予想外の弱々しい言葉。「本物の不思議に巡り合ってみたい」と先生が願うのは、少し前のコマで凜ちゃんさんから「亡くなったはずのマスターの声が聞こえる」ことを割とガチめに心配されてしまったのが理由です。

表面上はあたかも平気な振りをして笑っていましたが、内心では結構ショックが大きかったみたいですね。

そして、こうも言っています。「私の発想はただ皆さんのお世話になってるだけ」と。

思うに青山先生は、ひょっとしたらいろいろな感情を笑顔の裏に閉じ込めてきたのではないでしょうか。

青山先生といえばココアちゃんと性格的に似ている部分があります。ノリが良く、笑顔が多いところは二人に共通する魅力でしょう。

一方で青山先生にはどこかミステリアスな雰囲気がありました。生い立ちに関しても謎が多く、作中で唯一分かっているのは、叔母が高級ホテルを運営している、ということです。そのホテルも半端なものではなく、かつては貴族や、名のある文豪が集っていた歴史のある場所。おそらく、相当の名家の生まれであることは間違いないでしょう。

青山先生がリゼシャロの通うお嬢様学校の卒業生であるのも、彼女の家が暗に名家であることを物語っています。

お嬢様であれば立場的に言えないこともたくさんあったでしょう。そうした誰にも言えない本音を、青山先生は一人のときに、こうしてそっと溢してきたのかもしれません。

青山先生の作品の多くにモデルがいるのは確かですが、それが必ずしも「お世話になっているだけ」とは言えないと思うんですよね。

たとえば「怪盗ラパン」はシャロちゃんの容姿がモデルになっています。ですが、実際にシャロちゃんが怪盗を稼業にしているわけではありません。

キャラデザの資料としてココアちゃんたちを参考にすることはあっても、完全にココアちゃんたちそのものを描くことはないでしょう。怪盗などの設定は青山先生のオリジナルです。

なお余談ですが、青山先生といえば、完全版2巻に単行本未収録のお話が掲載されました。ラストシーンで青山先生は白紙の本を受け取りますが、この本にはココアちゃんたちの賑やかな日常が綴られているのではないかと思っています。そして最後に本を閉じたとき、「ご注文はうさぎですか?」というタイトルが現れる。

完全にココアちゃんたちそのものを描くことがあるとしたら、この本くらいしか他にない気がします。

いずれにせよ青山先生はココアちゃんたちのことが好きだからモデルにしているわけなので、個人的には自由に創作を楽しんでほしい…!

■ 夜空を往く銀河鉄道

まんがタイムきららMAX2022年6月号

今回、最も大事なポイントは間違いなくここでしょう。

噂をすれば、とはまさに。ティッピーを追って外に飛び出した青山先生が目にしたのは、この世のものとは思えない銀河鉄道。

レトロな列車が雰囲気出てて、すごく幻想的でした。光に満ちた車内があえて細かく描写されないのも、想像力を掻き立てられます。

マスターの魂が宿るティッピーを両腕に抱きしめながら、ずっと伝えたかった感謝の気持ちを言葉にする青山先生。あらゆる要素が情緒的で、シリーズ屈指の名シーンでした。

まんがタイムきららMAX2022年6月号

扉絵で青山先生とチノちゃんが車掌の恰好をしていたのは、本編に列車が出てくることを暗示していたんですね。

目が離せないほどに美しい一連の出来事ではありますが、いかんせん突然だったのに加えて、ティッピーから意味深な台詞が矢継ぎ早に飛び出したことで、いまいち理解が追い付いてない方もいるのではないでしょうか。

本項では、今回初めて登場した「銀河鉄道」について、理解を深めていきたいと思います。

・あの鉄道は一体…?

多くの人が最初に思うのはズバリ、「あの鉄道は何?」でしょう。

本編を最後まで読めば答えは何となく想像つきますが、銀河鉄道はあの世とこの世をつなぐ架け橋のような役割をしているものと思われます。

これは、車内にチノちゃんの今は亡きお母さんの姿があったこと、列車に乗ろうとした青山先生をティッピーが大声で止めたことなどが理由です。

・いつから街にやってきていた?

銀河鉄道が初めて街に来たタイミングは定かではありません。登場したのは今回が初ですが、それ以前にも何回かラビットハウスに来ていたことがチノちゃんの口ぶりから分かります。

ティッピーが車内のチノママに「待たせてすまない」と声をかけていることからも、それなりの期間、それなりの頻度で、銀河鉄道は街にやってきていたのではないでしょうか。

この点に関しては今のところ確かな情報はありませんが、可能性として挙げておきたいのが、6巻5話のハロウィン回。

アニメでは非常に多くのファンの感動を呼んで話題になりました。仮にもし、ハロウィン以前に鉄道が現れていたとしたら、ティッピーの「ある一言」が非常に大きな意味を持つことになります。

というのも、ティッピーはこのお話の中でチノちゃんに「天国に門前払いされたままじゃ」と言っているんですよね。

門前払い、という言葉には、「特定の世界に行きたくても行けない」みたいなニュアンスがあります。

ところが、事実は「門前払い」とは全く異なっていました。銀河鉄道の扉から階段が伸びたことから分かるように、銀河鉄道はむしろティッピーのことを迎えに来ています。

銀河鉄道からのお迎えを拒否したのは、ティッピーの方です。ティッピーは、天国に行けないから現世に留まっているわけではなく、自らの意思で現世に留まることを選んでいました。

ハロウィンの時点ですでにティッピーが自らの意思で現世に留まっていたのなら、「門前払い」という言葉は全くの嘘だったことになります。ではなぜ嘘をついたのかといえば、チノちゃんを不安にさせないためでしょう。自身にお迎えが来ていることをチノちゃんに悟られないように、ティッピーは優しい嘘をついたわけです。

あくまで可能性の話なので、現時点でそうだと断言できるものではありませんが、孫思いのマスターらしい嘘だと思います。

・ティッピーが「まだ」乗車しない理由

ではなぜ、ティッピーは銀河鉄道に乗ることを拒否しているのか。それは他でもなく、孫娘であるチノちゃんの成長を見届けるためでしょう。

これは本編よりも、キャラクターソングシリーズを聞いた方が分かりやすいです。TVアニメ「ご注文はうさぎですか?」キャラクターソングアルバム「ごちうさブレンド」には、幼いチノちゃんを残してこの世を去ることになったマスターの後悔を青山先生が歌う曲があります。「うさぎになったバリスタ」というタイトルを持つその曲の歌詞の一部は、こうです。

大切な人を襲う悲しみが いつか終わるように
楽しい季節をあなたが過ごせるまで そばにいるから

ご注文はうさぎですか?キャラクターソングアルバム「ごちうさブレンド」より

つまり、マスターは自分がいなくてもチノちゃんが楽しく生きていけるようになるまで見守るつもりなのでしょう。

加えて、マスターとしてはチノちゃんにラビットハウスの後継者になってほしい思いがあるはずです。

ここ最近、特に前回、前々回はバリスタとしてのチノちゃんの成長を描いたシーンがいくつかあります。今回も、マスターの考え方や感性がチノちゃんの中にしっかり受け継がれていることを示す描写がありました。

楽しく生きていくだけでなく、ラビットハウスの後継者としてお店を任せても問題ないほどにチノちゃんが成長してくれることを、マスターは期待しているのかもしれませんね。

けどそれは、ティッピーが役目を終えて、消える瞬間でもあるでしょう。ごちうさ原作の最終回とも絡んできそうな話ですね。

■ コーヒーの王様

まんがタイムきららMAX2022年6月号

最後になりますが、青山先生のペンネームの謎が明かされましたね。

ブルーマウンテンは「コーヒーの王様」として知られています。高地栽培の豆であるがゆえに味も香りも素晴らしく、世界中から愛され続けている人気のコーヒーです。

そうした人気にあやかって、青山先生の小説の読者も増えて欲しいという願いから、当時まだ学生だった青山先生にマスターが名づけたのが、「青山ブルーマウンテン」でした。

非常にマスターらしい名前の付け方だと思います。「青山」をただ英語にしたのがブルーマウンテンだと僕は思ってましたが、言われてみればブルーマウンテンはコーヒーの銘柄です。

時を超えてチノちゃんがこれと全く同じことを言うのも良いですね。マスターの意思が、チノちゃんの中にちゃんと受け継がれている証だと思います。

何より、この継承によって、青山先生の中にあるマスターとの思い出が守られたのが素敵です。

思い出って何もしないと忘れていくじゃないですか。どんなに大切な思い出があっても記憶が薄れるのは避けられないし、写真に残しても、アルバムをどこかに仕舞い忘れることもあるでしょう。

思い出をずっと忘れずにいるためには第三者の存在が意外と必要で、これはココチノの関係にも同じことが言えます。ココアちゃんも、サキさんから飴の手品を受け継いでいますよね?

ココアちゃん自身は全くそんな自覚はないかもしれませんが、チノちゃんの方は手品を見るたびに、大切なお母さんの存在を思い出しているはずです。

そして青山先生も、これからはチノちゃんが淹れてくれたブルーマウンテンを見るたびに、マスターが初めてペンネームをくれたあの日のことを思い出すのでしょう。

■ おわりに

ご注文はうさぎですか?/Koi

さて今回は、凛ちゃんさんと青山先生の対比や、銀河鉄道の登場に心を揺さぶられるお話でした。いかがでしたか?

ここでご紹介したものは、あくまで個人の解釈です。本記事を手がかりに、みなさんも自分なりの考えや解釈を広げてみてください。

またね!

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