sample『ばらの花』評(2)

だけどこんなに胸が痛むのは
何の花に例えられましょう(くるり『ばらの花』より)

意味も解らず嘔吐した
溶けかけた宝石を拭ってくれた
考えるだけで泣いていた
眠り続けていたい
天井を蹴破ってみたい
一生のお願い
を、たくさん抱えている
朝はいつも怪物が訪問する
冷たい空気を吸い込むと
肺に魚の骨が突き刺さる
咳と痛みを創造する
幼児の悲しい魔法

前回は第1聯を読解し、今回は第2聯である。
冒頭より『意味も解らず嘔吐した』とあり、前聯の空腹からの連関である嘔吐(吐くというのもこの作品には重要)は橋の下を流れている水路からの響きも感じられ、そうなれば当然溶けかけた宝石は橋の下で焚かれた火からの響きであるのは明白(あたかもゆらゆらと燃える火を抱えた蝋燭の溶けた蝋が流れるように)だが、意味も解らずとあり、(自分自身に照らしても書く前になんらかしらのとっかかりやモチーフやイメージは誰しも(確信はないが、たぶん)あると思うが)2聯目の書き出しにあたることや1聯目を読んだ読み手が2聯目を読んでいるということ(そう、われわれは既に1連目を読み終えて、空白を『越境』して2聯目読んでいるのだから)を鑑みれば意味も解らず嘔吐した=意味(内容)も解らず書かれ(読まれる「こと」)と読み換えさせるほどにここはとても意識的な書き出しだと(後述するがイメージの連関としても)思われる。
『溶けかけた宝石を拭ってくれた』これが涙をイメージさせるというのは誰しも理解出来るだろうが、何故に溶けたではなく溶けかけたではなくてならないのか、それは『意味も解らず』と『考えるだけで泣いていた』との連関が強く働いているからでもあるが、われわれが2連目の中途に眼を注いでいる(読んでいるという)のも僅かならずとも力が働いているようにも思え、加え、未然性というのもあるからであろう、その未然性というのは「母」でなくて「若い母」と第1聯において書かれていることでも解り、子供が主体であるということも(再度述べるがテクストを読んでいる中途ということも)あるからである。『眠り続けていたい』とは外界から遮断され軽々と越境できる為であり、切断されているが接続されているイメージが容易く喚起され『天井を蹴破ってみたい』とは天井=読み手の眼差しから、記号的、意味する内容から、越境する(したいという)イメージが露骨に表出され(次聯で現れるなわとびの飛ぶという姿態も重なる)『一生のお願い/を、たくさん抱えている』とある、一生とは始まりから終わりまでを規定(テクストの始まりから終わりを思わせる)し、そうなると他者から他者への仮託とも言える『お願い』はテクストの煉瓦たらしめる意味内容であり、音響/形象を読み手である我々に仮託しているのである。『朝はいつも怪物が訪問する』と当たり前のように怪物と記述されるが、なんら驚くこともない。怪物とは得体の知れないもの=「意味」のわからないものであり、それは朝=始まりに『いつも』(そう我々は『いつも』意味もわからずに読み始めるのである)訪問するのであるが、ここでも『お願い』と同様で仮託という受動であることも忘れてはならないし、後述するが咳/痛みの連関にも気づかされる。
『冷たい空気を吸い込むと』との吸い込むは『意味も解らず嘔吐した』の『嘔吐した』がイメージの連関としてあり(いつもと冷たいの音の響きからもあり)、そうなると『肺に魚の骨が突き刺さる』と綴られるのも理解出来る。なぜかといえば、魚の骨は1聯目で『細密な骨の水路』と提示されていた、これは我々が読んでいる文章であるとも1聯目での読解でもそう述べた、さすれば、その『骨』が肺に刺さるというのは誤読=意味内容(文字通りのである)の読み違えという風にそれこそ飛躍出来、そのような読みで読んで進めると、続く『咳と痛みを創造する』の咳は嘔吐との連関が感じられ、となると骨=死んでいる文字の形骸=意味内容が肺(には『天井を蹴破ってみたい』と遠因が感じられ、少年/少女の「未然的」な(性)の胸の膨らむ姿が重なり)に刺さって、繰り返しの運動である咳/痛みの創造であるのならば、それは意味内容と言葉ではない未然的(聴覚的、視覚的な切り離すことの出来ない)なあわいのイメージとしての、ただの空気の音であり、感覚の痛み(それは意味も解らず嘔吐したの嘔吐の感覚)である、(死んでいるであろう)魚の燃やされた骨が刺さり起こる『創造』であるのだから、『幼児の悲しい魔法』と未然性を露骨に露わにしながら、選ばれることのなかった言葉の影絵を寄り添わせる言葉の悲しい魔法の振る舞いのように意味内容と音響/形象が読み手に読まれるそのあわいを描こうとした、この第2聯には(全体も)締めとして当然といえば当然なのかもしれない。
駆け足で、第2聯を読解したが、次回は第3聯である。

『ばらの花』 >> permanent URI:http://bungoku.jp/ebbs/20141208_105_7801p

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水野 英一

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