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タイの政治経済について難しいことを書いています。

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素人によるタイの政治経済についてのまとめです。自分の備忘目的にて、有料マガジン設定しておりますが全くオススメしません。
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2016年10月の記事一覧

【タイ】コメ担保融資制度とは何か?

【タイ】コメ担保融資制度とは何か?

連載「【タイ】コメ担保融資制度の政治利用の経緯と今後の行方」(全5回)の第1回では、そもそもタイにおける「コメ担保融資制度」とはどのようなもので、本来、何を目的として実施されてきたものなのか、その経緯と仕組みについて説明する。

1.コメ担保融資制度の導入目的 籾米の質入により政府が農家に融資するタイのコメ担保融資制度(“Thai rice pledging scheme”)とは、農民に対する支援

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(目次編)【タイ】コメ担保融資制度の政治利用の経緯と今後の行方

(目次編)【タイ】コメ担保融資制度の政治利用の経緯と今後の行方

 2014年5月、クーデターによりタイのインラック政権が崩壊したが、軍政への移行が「良識派」から支持された背景の 1 つに、タクシン派政権が推進してきたコメ担保融資制度の政治利用がある。この制度は、本来、農家の所得を向上させるための農業補助政策の一つであったが、極度な財政負担を国庫に強いることとなり、また、制度運用過程のあちこちで頻発する大規模な不正の発覚も相まって、政権崩壊の大きな要因となった。

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タイ国王崩御と王位継承等に関わる今後の見通し

タイ国王崩御と王位継承等に関わる今後の見通し

(本稿は諸事情を鑑み、一部を一時的に公開している。)

※ 初公開は10月14日であるが、王位継承制度の法的根拠の章については、10月21日に別途まとめたタイ情勢アップデート情報と統合し、10月25日に更新した。

2016年10月13日 15時52分、タイのプミポン国王が崩御された。王位はワチラーロンコーン皇太子が継承すると報じられている。まだ不明確な点も多いが、これまでの情報をもとに、王位継承

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ミャンマーのインフラ開発に関して

ミャンマーのインフラ開発に関して

ミャンマーには、現在、3つの経済特区がある。1つ目が西部で中国が開発するチャウピュー(Kyaukpyu)、2つ目が日本が担当するヤンゴン近くのティワラ(Thilawa)、そして3つ目がタイが担当するダウェー(Dawei)である。

本稿の本来の主旨は、タイとの関わりとしてのダウェー開発を取り上げることであるが、ミャンマー国内の経済特区(SEZ)開発の位置づけの違いを明確にし、一見バラバラに見えるそ

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【タイ】カンチャナブリーにおける国境貿易の現状

【タイ】カンチャナブリーにおける国境貿易の現状

日本人にとって、カンチャナブリー(Kanchanaburi, จังหวัดกาญจนบุรี)と言えば、映画「戦場にかける橋」の舞台として有名なクウェー川鉄橋であり、第二次大戦中に多くの現地労働者と連合国捕虜の生命と引き換えに驚異的なスピードで敷設した泰緬鉄道のルートであり、悲劇的な歴史に正面から向き合い、鎮魂の為に一度は訪れるべき場所である。

本稿は、昨今、飛躍的に伸びてきているタイの国境貿

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【タイ】繰越し欠損金の扱いを巡る法人税算定金額のタイ政府内見解相違問題について

本件、既に決着済みであるが、当事者以外は関心が低く、また関係者でないと理解しずらい点もあったため、報道等で公開されている情報をベースに振り返りながら、何が本質的な問題であったのか考察したい。

1. 本件の背景タイの投資委員会(BOI)から投資奨励を受けた事業で、税恩典として当該事業から生じた所得にかかる法人税が免除されるもの(以下「BOIプロジェクト」という)については、他の所得(法人税の課税対

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