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タイ国内の石炭火力発電に対するアレルギーについて

一度染みついてしまった認識を改めるというのは難しい。タイの場合、過去に深刻な公害をもたらしてしまった石炭火力発電所がそれに当たる。

タイ北部メーモの発電所(โรงไฟฟ้าแม่เมาะ)は、タイ国内産で露天掘りされた安価な褐炭(イグナイト)を使う火力発電所だが、脱硫装置を付けることなく稼働し、周辺住民に深刻な健康被害をもたらしたことで、石炭火力発電所=公害の元凶と見做されるようになった。

タイにおける石炭開発は、1917年に外国人専門家の調査によって、タイ北部ランパーン県メーモ郡と南部クラビー県の 2 郡で褐炭の鉱脈が発見されたことに始まる。メーモ郡では、1954年から始まった鉱山開発のために、通算で約 3 万人の住民が移転を強いられたと言われている。

タイにおいて石炭火力発電所の建設が検討されたのは、1972年のオイルショックの影響で国産のエネルギー資源開発が喫緊の課題とされたことに端を発する。当時の状況では、逼迫する電力需要をまかなうことが先決とされ、環境への配慮といった概念は無かった。

メーモ発電所の発電能力は順次拡大されたが、各発電機の発電能力と稼働開始年は以下の通りである。

1-3号機 各75MW 稼働開始年:1978-1981
4-7号機 各150MW 稼働開始年:1984-1985
8-13号機 各300MW 稼働開始年:1989-1995

計10基 (1-3号機は廃炉)
総可能発電量: 2,400MW
事業主体:タイ発電公社(EGAT)
送電エリア: 北部50%,中央部30%,東北部20%
燃料消費量: 1,600万トン

大きな健康被害が発生したのは1992年10月初旬のことである。

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