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ラオスにおける電源開発とタイの関わり

前回からかなり間が空いてしまいましたが、今回は「タイのエネルギー事情について」の連載第3回。過去の記事をご覧頂ける方は、目次はこちらとなります。

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タイの隣国ラオスは「東南アジアのバッテリー」とも称されることがあるが、その主たる電力源はメコン川水系の水力発電である。タイも東北地方はメコン川水系に属するが、首都バンコクからタイ北部にかけてはチャオプラヤー川水系となる。メコン川は、源流をチベットまで遡ることが出来、主流は中国雲南省を通じてミャンマー国境、タイ北部国境、ラオス国内、タイ東北部国境、カンボジア、ベトナム最南部のメコンデルタへと下って行く国際河川である。

全長は4,400キロメートル、流域面積は日本の国土面積の2倍以上の795,000 km²を誇る。但し、中国内からミャンマー国境へ経てゴールデン・トライアングルに至るまでの上流域(約2,500キロメートル)と、それ以降の下流域(約2,200キロメートル)とに分け、下流域のみを指してメコンと呼ぶこともある。その場合、上流域と下流域は以下の通り分けられる。

上流域は、中国で「瀾滄江(Láncāng Jiāng)」と呼ばれるが、瀾滄は古(いにしえ)のラオスの王国の呼称「ランサーン(百万の象)」の音写である。中国から見ればラオスに向かって流れている川ということだろう。

(中国雲南省シーサンパンナ[西双版納]上空から南(写真奥)に向かって流れる瀾滄江を望む。2017年11月筆者撮影)

さて、今回はタイ視点でラオスの水力発電開発状況をみようという主旨の回ではあるが、まずは水力発電所の前提となるメコン川流域のダムの配置を概観したい。下記の地図は、ラオス国内のダム(構想中も含む)の場所をプロットしたものである。

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