タイの電源開発計画(PDP)

タイのエネルギー省は 昨年(2017年)5月に、電源開発計画(PDP、Power Devlopment Plan)を見直すと宣言し、関係機関と共同で新たな計画を作成すると発表した。

その理由・背景をご存知だろうか?

現在、公表されているタイ電源開発計画は、2015年版のPDPで、対象期間は2015~2036年。今後20年以内に計5,746万kW分の発電所を新設又は増設する一方、電源構成を2015年時点の天然ガス70%、石炭7%、再エネ8%から、計画期間終了時には天然ガス40%、石炭25%、再エネ20%にするという内容である。

そもそも電源構成を脱天然ガスに大きく舵を切ろうとしているのは、タイ湾沖のガス田が2022年に枯渇することを鑑み、電力用エネルギー需要の7割を天然ガスに依存している状況を見直さなければならない状況だということが背景。

しかしながら、2015年版PDPにおいて根本的な問題になったのは、需要の伸びの見通しがそもそもあまりにも過大ではないかとされたことである。

タイでは年間で最も電力需要が大きくなる時期は、最も気温の高くなる4~5月(水掛け祭りで有名なソンクランの前後)であるが、2017年は5月4日14時時点での3,030万kWがピークであった。これは、2015年版PDPで示されている、2017年の最大電力の予測値 3,200万kWを5%強下回っており、伸び率の見積が当初から過多であった可能性を物語っている。

また、計画を根本から見直しをせざるを得なくなった別の事情として、見込んでいたタイ南部クラビでの石炭火力発電所建設が、住民の反対運動により頓挫したことがある。こちらについては、次回で詳しく触れる。

なお、タイではPDP以外に、エネルギー開発に関連する計画としてAEDP(Alternative Energy Development Plan、代替エネルギー開発計画)、EEDP(Energy Efficiency Development Plan、エネルギー効率開発計画)がある。これら3つ計画は担当する省庁が異なり、行政が縦割りになっていることもあって別々に立案・推進され、相互に整合性が取れていないことが従前より指摘されていた。

しかしながら、2014年5月のクーデター後、軍政の強いリーダーシップにより3つの計画が相互連結し、更にGAS(Gas Plan、ガス計画)とOIL(Oil Plan、石油計画)を加えた5つの計画からなる統合計画がTIEB(Thailand Integrated Energy Blueprint、タイ統合エネルギー・ブループリント)として立案されることになった。

TIEBでは、将来の経済発展に伴う伸び率を加味した将来の電力需要見通しに応えるべく、エネルギーを安定的に確保し供給していくことが、国家の安定を支えるエネルギー政策の最重要課題(エネルギー安全保障上の課題)として位置づけられている。

2015年版AEDPによる供給電力計画の内訳をみると、2015年時点での天然ガス発電量を64%から36年には37%まで減少させ、再生可能エネルギーにおいては同年で7%から18%まで増加させることが計画されている。また、将来的に原子力発電も開始することも明記されている。2015年版AEDPのコンセプトは、都市ゴミ、バイオマスやバイオガスの発電を推進し、農家や地域社会の双方に利益をもたらすことを掲げており、数値目標として2036年には都市ゴミ:500MW、バイオマス(農林業生産物の廃棄物):5,570MW、バイオガス:600MW(産業廃棄物と畜産廃棄物)+ 680MW(エネルギー用農作物)を目標値に設定。さらに、増加する電力需要への対応と地方の経済開発を目標に再生可能エネルギーの活用を進めるとし、太陽光:6,000MW、風力:3,002MW、大型水力:2,906MWといった目標値が設定されている。

また、2015年版EEPでは、エネルギーの経済効率を示す「対GDPエネルギー消費指数(Energy intensity)」を 2036年までに 2010年比30%削減することを目標として掲げ、この実現に向けたタイ政府による具体的施策として、省エネ設備導入時の補助金支給や ESCO(※)ファンドの設立が打ち出されている。

※ESCO(Energy Service Company)とは、省エネ効果の高い設備を導入し、従来の機器であれば費やしていた燃料代と実際の費用との差額を原資として代金を回収する事業モデルのこと。

第1回は、エネルギー開発に関連するタイの開発計画について概観してみた。次回は、2015年版PDPが2年目にして頓挫した直接的な理由を見てみたい。


(2)タイ国内の石炭火力発電に対するアレルギー、につづく

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