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「データ価値」を巡る世界競争

データ価値社会と言った表現がメディアを賑わすことがあるが、個人情報が売買されることが迷惑メール問題と相俟って社会問題ように取り上げられ、情報自体に値段がつくことを指しているのではと想像し勝ちであるが、そういうことを言っている訳ではない。

発端はGAFAに代表されるアメリカのIT系プラットフォーム企業の急成長にある。

1.勝ち組GAFAの影響力

GAFAとは、米国大手IT 企業4社(Google、Apple、Facebook、Amazon)のことであるが、2019年1月末の時価総額の世界ランキングを見ても全て6位までに入っており、GAFA4社の時価総額合計は2.9兆ドルと、米主要 500社(S&P500)の時価総額合計約22兆ドルの13%に達している。

IT企業というとMicrosoftも含めるべきと考えられるが、GAFAの急成長振りは凄まじく、Windows95の発売に始まるインターネット黎明期のWintel(パソコン用CPUメーカーとしてのIntelとパソコン用OSのWindowsを作ったMicrosoft)の売上高成長曲線と比べると10倍の開きがある。

GAFAの成長は、利用者から無償で入手した様々なデータをプラットフォームの提供者の立場でうまくマネタイズしたからである。その為、急成長の背景にあるデータそのものに価値があるからだと認識されるようになったのである。

また、自動的に収集される各種のデータを組み合わせて、個人の嗜好や行動特性を抽出するプロファイリング技術の進歩は、単純にマーケティングに利用されるだけでなく、選挙選における民意の誘導やフェイクニュースの蔓延など、社会に負の影響を与えているとの指摘されるに至り、その影響力の拡大が警戒され、深刻な脅威として認識されるようになった。

GAFAによる「ビッグデータの収集・蓄積」の寡占化度合いを示す数値として、Googleの検索エンジン市場の世界シェアがある。2019年1月のデータによれば、全デバイスベースで92.86%に及び、スマホに絞れば95.19%である。

 スマホ用のOSは、GoogleのAndroidとApple のiOSによる寡占状態で、FacebookはSNS市場の世界シェアが66.8%(2018年10月)に至り、Amazonは主要国の消費者向けEC市場(BtoC)において世界トップシェアを誇っている(2016年実績で米国で33.0%、英国で26.5%、フランスで10.7%、ドイツで40.8%、日本で20.2%)。

2.各国の対応

オンライン・プラットフォーマーであるGAFAは全てアメリカ企業であるため、プラットフォーム上で展開される事業者のサービス情報、個人ユーザーの属性情報や購買情報等、あらゆるデータを本社のあるアメリカのサーバーに継続的に収集・蓄積される。

そのため、GAFAを通じたインターネット上のデータの寡占化は、スノーデン事件を契機に、アメリカによる世界監視と支配の手段になっているとして、世界から警戒・批判されるようになった。

結果、米国と対立関係にある中露はアクセス制限をかけ、欧州はGDPRによってデータの持出を原則禁止する措置をとることになった。日本は対米追従姿勢を堅持してはいるが、経済産業省が、ネット上のデータ競争について「プラットフォームを海外に握られ、我が国産業は『小作人化』」しているとの危機感を表示している。

3.今後の競争

インターネット上のデータはGAFAによる寡占化が進んだとされるが、未着手な領域はまだまだ多くある。それは、個人の健康・医療・介護に係る機器が生成するデータや、自動車の走行データ、工場設備の稼働データ等の、いわゆるIoT機器が生み出すデータと目されている。通信インフラとしては5G(第5世代)のキーワードで括られている。

何故ならば、膨大な数のセンサー(IoTデバイス)から継続的に生成される大量データを高速、確実、安全に処理する仕組みを実現するのに欠かせない新しい通信技術として5Gが注目されているからである。

日本では、今後の更に深刻化する少子高齢化社会において、5Gは自動運転技術の確立や、健康寿命を支える様々な機器との通信を支える社会インフラとして整備されていくものと表面的に考えられるが、世界では今後の覇権を握る為の核心的な要素として認識され、凄まじい闘争が繰り広げられつつあるのである。