夢に期待しすぎで

この世界は小学生に夢を聞く。お前らの夢はなんなんだよ、自分がちゃんと明確な夢を語ってから話せよと思いつつ、小学生は立場が弱いことをふまえ、それとなく大人が満足するような回答で、流していた。明確な夢が持てなかった僕は夢を語らなかった。そんな中、おしゃべりだった友達は自慢げに夢は助産師だと語っていた。忘れてしまったが、理由も立派なものだった気がする。とにかく、彼女は夢を聞かれると、何も恐れず、助産師と胸を張って大人たちを満足させていた。当時の僕はその姿に憧れすら抱いていた。未来が怖くない人っていうのはすごいな。大人たちと社会はこういう子供にしたいんだろうな。意地でもなってやらないが。そんなことを思いながら、その子と当時放送されていたコウノドリの話をした気がする。そこで初めて、クラスの人に理解されていなかった星野源の話ができるようになったのだ。

成人式に行って、久しぶりにその子に会った。小学校の卒業式以来だ。その子に今何しているのと聞くと、美容師の専門学校に行っていると言っていた。びっくりした。もう完全にこの人は助産師になるのだと思い込んでいたから、意外だった。なんで助産師じゃないのかを聞きたかった。聞けなかった。なぜ彼女は夢とは違う道に進んだのだろうか。

諦めるタイミングがあったのだろうか。どうしても諦めないといけない理由があったのだろうか。いや、夢が夢では無くなったのかもしれない。助産師より美容師の方がいいと思う理由があったのかもしれない。そもそも、本当に彼女は助産師になりたかったのだろうか。大人たちの期待に応えるために答えていたという可能性もあるんじゃないか。もしそうだったらカッコ良すぎる。

夢なんてそんな期待しすぎるものじゃないのかもしれない。どうせ大人たちも真剣には聞いていないんだから、テキトーに答えてしまえばよかったのだ。夢が夢に見合わないことに気づけば、方向転換して違う夢にしてしまえばいいのだ。所詮夢は夢だ。叶った時の喜びを追い求めるより、叶わない時の長い苦しみの時間を避けた方がコスパがいい。

そうとは分かっていても、俺は夢が叶う瞬間を追い求めたいと思ってしまう。

思うんだったら早く行動して夢に近づけよという話なのだが。

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