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The 1975「Sincerity Is Scary」のMVを観ているとほんの少し幸せな気持ちになれる

The 1975が11/30にリリースする3rdアルバム『A BRIEF INQUIRY INTO ONLINE RELATIONSHIPS』(邦題:『ネット上の人間関係についての簡単な調査』)から、先行シングル「Sincerity Is Scary」のMVが解禁された。これがまたなんとも素晴らしい内容で、観てるとほんの少し幸せな気分にしてくれるのだ。

たとえ彼らの曲を1曲とて知らなくても、ボーカルのマシュー・ヒーリーがバンド名にちなんだアパート"1975"から出かけた瞬間から、もうビデオを止める理由が見つからない。それくらいギミック満載で、かつハッピーな気分になれる内容だ。

が、実際歌われている曲自体の内容は、これらMVとはなんら関係がない、いわゆる”ラブソング”に分類される。詳しくはこちらのYoutube動画を見てもらいたい。コメント欄には翻訳された方が訳した際に感じたコメントもあって、これも含めて非常に為になると思う。

翻訳を介す限り、単なるラブソングとは一線を画した少し歪な女性への想いが歌われている曲だ。だが、The 1975の打ち出すブリティッシュ・バンド然とする渇いた佇まいと、隆盛するR&Bのブラッキーなグルーヴを合わせもったこのナンバー(とそのMV)は、最もThe 1975の本質を表現していると言っていい。

その証拠として、MV終盤にマシューがコーラス&音楽隊をバックに歌うシーンに写る"LA POESIE EST DANS LA RUE"と書かれた看板に注目してもらいたい。

彼らがUKシーンに登場した当初からよく用いていたこの一節は、1968年にフランスで起こった、学生を主体とする左翼的な運動"五月革命"でのスローガンの一つだ。意味としては"美は路上にあり"、そう、まさにこのMVそのものですよね。

(ちなみにMVラストに出てくるかわいいクラウンと、そのクラウンに如雨露で水をかけるマシューの構図は、2016年発表の「A Change Of Heart」のMVをオマージュしている)

「A Change Of Heart」のMVがこちら。

The 1975は特別に好きなバンドではないけど、彼らのインタビューなどから発せられる”自分たちはザ・ビートルズやレディオヘッドらから続く英国のロック・バンドであり続けなければならない”という強い意志と、それを廃れさせないためにバンドというフォーマットの枠の中でいかに最良の表現ができるのか、という向上心には毎回目を見張るものがある。

相応にしてアーティストにとって3rdアルバムというのは、その後のバンドの行く末を決め兼ねない作品となることが多い。The 1975にとって、まさしく『A BRIEF INQUIRY INTO ONLINE RELATIONSHIPS』は勝負作なのだろう。11/30が楽しみだ。(↓まだ少し続きます)

The 1975と直接な関係はないが、「Sincerity Is Scary」のMVと同じ日(時差あり)に解禁されたONE OK ROCKの新曲「Stand Out Fit In」のMVが、上記に書いたThe 1975に注目する理由と同じような印象を抱かせてくれたのが面白かった。

こちらはラブソングではないし、内容もリスナーを奮い立たせるような自己啓発にも近い楽曲だ。それでも、The 1975「Sincerity Is Scary」のMVにも共通する部分がある。

それは"自国(日本)のロック・バンドである”という強い自負、さらにいま自分たちがロック・バンドとして表現したい・表現するべきものが何なんかという問いに、純然たる最適解を導き出している点だ。"ワンオクロック"ではなく"ONE OK ROCK"だと、そして今はこのサウンドで、こういうことを言いたいんだ、と。

正直、いまロック・バンドがどうだこうだという議論には参加したくない。そんなことは、バンドを軸に活動するアーティストたちが一番肌で感じているだろう。とはいえ、その感じたことを作品として血肉化し、さらにその一手が自分たちの寿命を延ばすことになる程のターニングポイントとなったとしたら...またバンドが面白い世界を見せてくれるんじゃないだろうか。

The 1975とONE OK ROCK、それぞれの新曲(とそれを収録したニュー・アルバム)には、色々な柵と滞留に楔を打って欲しい。

ONE OK  ROCKのニュー・アルバム『Eye of the Storm』は2019年2月13日リリース

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