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工藤吉生(くどうよしお)の短歌まとめ・第二十三期【2017年1-3月】20首

「未来」二年目。四年半つづけた短歌研究「うたう★クラブ」への投稿をやめた。「公募ガイド」初掲載。「仙台っこ歌壇 俵万智賞」準賞受賞。


〈1〉
十一月下旬の大気に含まれる何かを吸ったオレのさびしさ


〈2〉
おみこしになって元気な人達にかつがれたいな年に二回は


〈3〉
妄想は百万本の紅い薔薇をバルコニーから見下ろしている


〈4〉
つらすぎて笑っちゃうよというふうに朝の車道を枯葉ふらつく


〈5〉
ボロいなと思い見ていた住宅の中からワッと笑いごえ立つ


〈6〉
まがまがしい力渦巻くパトカーの赤が無音で夜を照らせば


〈7〉
四千円払えと言われさしだすと野口英世は同一の顔


〈8〉
アンケートの「わからない」にだけ丸つけてオレも日本国民である


〈9〉
遠くではマジックショーが始まった騙そうとする声のあかるさ


〈10〉
紙きれを千円にするマジックがとりわけ客の興味をひいた


〈11〉
わからないままでどんどん行きなさい雨が何滴あるのかな、とか


〈12〉
りんごの上にリンゴを置いてその上に林檎を乗せたぐらい不安だ


〈13〉
すこしなら呪われたっていいでーす 駅で運ばれてる段ボール


〈14〉
「いちご」って答えて急にはずかしくなった中学一年のころ


〈15〉
エスカレーターの手すりをむっと見ていると汚れがあって気にすればなる


〈16〉
十二月枯れ葉枯れ木にひとすじの道がくねって心が怖い


〈17〉
百十円ならば買わないおにぎりの百円セールに二点を選ぶ


〈18〉
このオレが死んでしまった後に吹く春の風、ああ、あったかそうだ


〈19〉
あぶないよ!!などと書かれて一周をフェンスの囲む池のさびしさ


〈20〉
自販機に話しかけられ驚いたこれには慣れるべきなのですか





〈1〉〈8〉〈17-18〉雑誌「現代短歌」読者歌壇
〈2〉ネットプリント毎月歌壇
〈3〉雑誌「短歌研究」うたう★クラブ
〈4-6〉〈14-15〉歌誌「未来」
〈7〉雑誌「公募ガイド」東直子の短歌の時間
〈9〉新聞「河北新報」河北歌壇
〈10〉〈19〉第8回角川全国短歌大賞
〈11〉「日本経済新聞」歌壇
〈12〉雑誌「角川 短歌」題詠
〈13〉ツイッター
〈16〉同人誌「We」
〈20〉NHK短歌テキスト


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