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ナッジ・デザインについて少し考えてみた②

前回のnoteではナッジ・デザインとは何かの紹介と、エスカレーターの立ち方の事例について考察してみました。

今回はアメリカ→イギリスと2連続で行ってきた出張の中で出会った面白いナッジを紹介してみたいと思います。

こちらはサンフランシスコのおしゃれなコーヒー屋さんSightglass Coffee。日本にはまだ上陸していないようですが、西海岸では店舗拡大中のようです。こちらのお店Wifiを提供していません。

はじめてスターバックスにWifiが登場した時「さすがスタバ!」と感動し、スタバでMac広げてノマド気取りが、おしゃれの代名詞となりました。それに追随するように他のカフェでもWifiが導入されていきますが、気がつくと、移動の合間に仕事をする時には便利かも知れないけれど、最近ではちょっとスタバでMacを開くのがかっこ悪く恥ずかしいなと思いはじめていました。当然、店側からしても長居する人が増え客単価も下がっていると思います。お店に来て欲しいから、便利な設備を提供するのもカフェのつとめです。

しかしWifi提供がほぼ常識となってきた今にあって、スタートアップやテック企業のメッカ、サンフランシスコにあるこのSightglass Coffeeは悪びれた様子もなく「うちはWifiないよ」と言い放ちます。そこから「うちはノマドのオフィスじゃない」「純粋にコーヒーの味を楽しんで欲しい」「友人や恋人、家族との時間をここで過ごして欲しい」といった類のメッセージを感じました。それは、席はもっと詰め込めるだろうにだいぶ余裕を持たせたゆったりとした作り、倉庫ぶち抜きで天井が高く会話や笑い声が大きく反響する空間、天井に天窓を開けて外光を取り入れて作り出す気持ちの良い環境などの店舗デザインとセットで考えた時にこそ、感じられるメッセージでした。

パシャパシャ写真を撮って必死にインスタにアップする観光客が恥ずかしくなるような余裕を感じました。仕事(=Wifi)がメインでコーヒーは空間を借りるための口実や付録の時、Sightglass Coffeeは選択肢に入らなくて構わない。でも、美味しいコーヒーを気持ち良い空間で気のおけない人たちと飲んで過ごしたい時のベストな選択肢でありたい。そんな思いを込めた「Wifiなし」という判断はカフェブームのナッジ・デザインだと思いました。

次に紹介したいのがロンドンの公共交通機関が幅広く展示されているLondon Transportation Museumです。こちらは、世界で最初に掘られたロンドンの地下鉄の歴史や、道路や鉄道、空港などにおける看板デザイン、馬車の頃から2階建てだったロンドンのダブルデッカーのことなどおもしろい展示が盛りだくさん。今回、紹介したいのはそのトイレです。

なんとトイレの脇の手を洗うところのシンクが波打っているのです。これ、大人の自分ですら水を流したい欲求が芽生えます。子どもなら、絶対に手を洗いたくなることでしょう。加えてブルーの照明やショッキングピンクのハンドソープが、手を洗いたい欲をさらに刺激します。これも勝手な推測ではありますが、子どもの手洗いを促進させるナッジ・デザインなのかなと思いました。

○○しなさいと指示したり、ルールや法制度で決めちゃうのは簡単だけれど、それでもなかなか人の行動が変わらないことってある。それを、デザインや概念の力で動かしちゃうナッジっておもしろいなと思い、今、いちばん注目しています。

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