第13回 科学の甲子園 実技競技③における電圧降下問題について
2024年3月に開催された科学の甲子園 第13回全国大会 実技競技③「バルーンフェスタ in つくば」で起こった電圧降下問題について、次回以降の公平・公正な競技実施と、来年度以降に参加される方々の健闘を祈って、記憶が新しいうちに記しておきます。
実技競技③ 「バルーンフェスタ in つくば」とは
ヒートガンを用いて気球に熱風を入れ、できるだけ重いおもりで、指定された時間で滞空させる事前公開競技です。
各チームには、大会までの1.5ヶ月で性能の高い形状の機体を開発し、データを蓄積することが求められます。
電圧降下問題
学校の放課後だけでは準備が間に合わないということで、2月中旬に市の体育館を借りた際、学校で飛ばした時よりも滞空時間が短くなりました。
温度等の環境条件は学校と同じであったため、原因を模索していると、電圧の違いによってヒートガンの出力が変わることで、熱気球の滞空時間が変化してしまう説に辿り着きました。
その後、(ライブ配信内のインタビューでも紹介した)「ワットモニター」を購入し、コードリール(延長ケーブル)を変えてみると、確かにワット数と滞空時間に相関があることが分かりました。
一方で、競技会場内に複数個ある発射場所ごとに電圧が異なれば、獲得できるポイントの限界も異なり、競技の公平性が担保されなくなる懸念が生じました。
これは全体の競技進行に関わる内容であったため、3月初旬に運営側にメールでお伝えしました。その際、運営から
競技時は、複数のヒートガンを同時に使用できるように配線をする。
ある程度の電圧降下も見込んでいるが、特定の電位を保証しない。
という内容の返答をいただきました。電圧降下がどの程度のものか記されていませんでしたが、当日に柔軟な対応ができるよう準備するようにとあったので、会場内での公平性は担保されているものだと認識していました。
それでも、競技時のワット数は当日になるまで分からないため、
ワット数と積載重量を変えながら滞空時間を調査し、重回帰分析を行いました。当日は、製作時間内での試験飛行でワット数を推定し、チャレンジに挑む方針としました。
競技当日
制作時間内に3回試験飛行をすることができたため、予選チャレンジは通過することができました。
しかしながら、決勝チャレンジ時に発射場所を変えて(O→D)実際に気球を飛ばしてみると、予選チャレンジ時よりも電圧が高かったために、想定していた時間を超えて滞空しました。
同じく決勝チャレンジ時に発射場所を変え、想定よりも長く滞空した栄光チームに話を聞くと、分電盤から最も遠いコンセントが99Vであり、最も近いコンセントと約11Vの差が認められたそうです。
(私達は実際に電圧を測定しなかったですが、この時、ヒートガンの動作音が明らかに高くなっていました)
ルール上、決勝チャレンジの発射場所への移動後に試験飛行を行うチャンスは無く、 "ぶっつけ本番" で1回限りの決勝チャレンジに挑む必要がありました。チャレンジまでヒートガンの電源を入れる事ができないため、電圧を測定することもできません。私達は最後まで積載重量に悩みましたが、電圧は予選チャレンジ時と変わっていないだろうと信じ、感覚で調整するしかありませんでした。
栄光側も電圧降下問題を把握していたため、競技終了後、愛光と栄光で、一緒に運営へ抗議しました。以下はその内容です(一部略)。
どのチームも、貴重な高校生活の時間を割いて入念な準備を重ね、公平な競技実施を望んでいたはずなのに、最後はある意味 "運ゲー" 様になってしまったのは、競技の趣旨に反することでもあり、非常に悲しいものです。もし、公平な競技が実施できていれば、最終的な順位も変わっていたと思います。どうか、運営には適切な対応をしていただきたいです。
「事前公開競技」は、時間をかけて、科学的立場からメンバーとともに課題に向き合う、とても有意義なものです。次回以降の大会で、このような事案が再び発生しないことを願っています。
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