これでも勝ち組です -若手研究者の生存と研究、両立させてもらえますか?1

若手研究者の直面する貧困と性差別をどうにか直そうとしているmkepaです。可及的速やかに直す方法を画策し、この3週間、諸方面に問題提起し情報収集を行ってきました。気に留めてくれた人々やその紹介で出会った人達と意見交換した結果、少し方向性が見えてきました。

※ここで若手研究者とは、博士課程研究者(修士号は取得済みで博士号をとる前)・ポスドク(博士号をとった後)を指したいと思います。

日本の研究者をとりまく制度は多くの研究者の人権を取り上げています。本当に奇妙で異様です。業界外の人にも伝わるように、ここでもう一度振り返ります。

当たれば「勝ち組」みたいになってるけどちょっと待って、特別研究員DC/PDの実情

日本学術振興会(学振)の特別研究員にはざっくり言えばDCとPDの2種類がある。DCは博士号取得前(大学院博士課程在籍者)、PDは博士号取得後の人のためのものだ。DCにはDC1とDC2の二つがあり、DC1は博士課程1年から3年間分もらえる枠、DC2は主に博士課程2年から2年間分もらえる枠だ。

DCは基本的には月額20万円の「研究奨励金」といういわゆる生活費が支給される。こう聞くと聞こえがいいかもしれないが、その実は生活保護や刑務所の懲役刑未満である(『大学院(博士課程)の悲惨な待遇は生活保護や刑務所の懲役刑未満という話』)(刑務所の食事の写真が美味しそうすぎてよだれと涙がでた。自分もお金の心配をせずこんな美味しそうなご飯を食べたい。)

PDにも何種類かはあるが、大体額面が36.4万円に変わっただけだと思えばいいと思う。「研究奨励金」という生活費のほかに研究費が+150万円/年つくが、これは研究集会等出張への旅費だったり書籍購入にしか充てられないので腹の足しにはならない。(人文系の中でもフィールドワークを必要とする分野の人たちとかは一回とかで使い切るレベルらしい。研究集会に行くだけであっても日本全国・世界中と移動と交流、情報交換が大事なので、全然大きい額じゃない。)

それに加え、「研究奨励金」は様々な制約つきだ。わかりやすく言えば、

「君たちと日本学術振興会の間に雇用関係はないから、社会保険には入れないよ。国民健康保険は自分で払ってね。

「あ、ちなみにその240万円、給料ではないけど、所得税も住民税もかかるから。住民税は紙届くから自分で払ってね。 

「あと、君たちには"研究専念義務"があるからバイトもだめだよ。TAとかならちょっとはやってもいいけど、それでも消費に充てられる額は+2.4万円/月で合計で月々9万。ほぼ生活保護の最低生活費だよね。
え、生活が成り立たないから借金したい?それもダメだよ。返済型学生ローンもダメだよ」

「だって、貧しいほうが、ハングリー精神だか、火事場の馬鹿力だか、背水の陣だかで研究成果出るだろう??
え?『貧困と将来不安で精神疾患になって、頭が働かない』って?甘えんな役立たずめ。え?『じゃあ行政の職員も同じ待遇でハングリー精神で働け』って?そんなの無理、嫌にきまってんじゃん。」

「あ、そうそう、産休育休とかで中断するのはいいけど、社保入ってないから産休育休手当ては出ないし、うちからもお金は出さないけど、その間も基本バイトはダメだよ。
"生活を維持する程度"に"研究に専念するのは困難"だと思ってもらえるくらいのバイトしかしちゃだめだよ。バイトできるなら研究しろだよ。 

「え?バイトできるなら仕事しろって『産休や育休の休とは一体なんだったのか』って?知らんよ。だってやったことないし。笑
勝ち組ルートを歩んでも、産休育休手当てがつくのは最速で32歳、普通にしてたら40、50だよ。え?『適齢期終わってる』『女なら母体リスクが高すぎる』って?じゃあ研究やめればw
手当て金はつかないけど、女にはマタハラの嵐が漏れなくついてくるよw」

という、「研究奨励金」というのは、研究を奨励するどころか、ただの罰ゲームなのが実態だ。各設問は、学振の特別研究員についてのよくある質問(平成31年度版)を参照した。さすがに嘘だろおいおいと思った方は是非アクセスして見てみてください。

ここまで見ればおわかりの通り、日本での研究者の扱い方は本当に異常だ。

諸外国では、研究者および研究者予備軍は、学術研究という公的資産を生成するという非常に専門性の高い知的労働をする人たちなので、公務員なのは当然だ。それどころか、何億円とかけて育てた分、流出させたくない人材でもあるので、エリート公務員のような扱いになるのが普通である。民間に就職する場合にも評価され給料がすごく良いのが普通だ。
だから、外国人に、日本での研究者の処遇の話をすると呆れかえり苦笑される。まぁ、研究者の給料が低すぎるという話、日本は知的労働者を非常に軽んじる自殺国家だ、ということは既に世界中で有名な話なのだが、「日本の研究者には産休育休手当てがない」「手当てがつく頃には初老」「子ども産んでも保育園入れない」と社会保障までここまでボロボロだと知ると
「日本って研究者に恨みでもあるの?笑」
「研究者を殺したいの?笑」

と聞かれてしまう。まっとうな感覚だ。てか国内の人でもビックリしますよね。笑

酷すぎて前置きが長くなってしまったが、これでもカットしました。それも後日アップ予定なので、参考までにみてみてください。

具体的な改善要求案は、後のエントリーに書きます。

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