子持ち男性の育休未取得はキャリア競争における不正。女が一人で「ライフイベント」を迎える?そんなわけあるかよ…。

この前、個人研究費の説明会に行ってきたのだが、プロジェクトの責任者の40代半ば〜50代の男性教授が

「ちょうど応募資格に当たる30代くらいは、女性はライフイベントが重なりますから、」

と言っていた。身構えてはいたものの、
(うわぁ…やっぱり言ったよ…)
と。すごく残念だったし呆れた。

(この人の周りにはバリキャリシングルマザーしかいなかったんだろうか…?)
(知り合いの男性は一人も結婚とかしていなくて、それが普通だと思っているからだろうか…?)
(まさか、この人子どもがいるわけじゃあるまいな…?)

数々の不愉快な疑問がわいてきたし、性差別的発言を壇上で平気でしてしまう背景に思いを巡らせざるを得なかった。
今後同じ状況に遭遇したらどう論破するか?とか、
言葉になりきらない苛立ちばかりが頭に湧き、その後の説明はあまり耳に入らない。

でもこれは、私の日常の中で本当によくあることだ。
今回だって、研究費の説明会に行っただけだ。
フェミニズムやアンチフェミニズムの集会に行ったんじゃない。
TwitterのそういうTLに地獄覗きをしに行ったのでもない。
ただ、自分の進路のための説明会に行ったり、大学に行ったり、仕事の歓迎会に行ったり、それだけで、カコンカコン打ちのめされまくっている。これは過言じゃなく、男社会で生きる標準的な女の日常だと思う。

高まっていた士気は動揺でひるみ、出鼻をくじかれる。今後我が身に起きるであろう様々な懸念(男性から"当然のように"受ける女性差別)を想起する。「またかよ」の落胆と諦念。似たようなことはたくさんあるので、他で紹介していきたい。

この研究費説明会でも起きたように、
「女性にはライフイベントがある」みたいな発言はよく耳にする。
(そして、大体気を使って言ってくれるようだけど、マジで本当に失礼。)
いやいや、そもそも女って一人でライフイベント迎えてるんか?

ライフイベントって、たぶん、結婚と子どもができることを指しているのだと思うんだけど。
お前の中では、結婚って女一人でするものなんか?
お前の中では、子どもって、女一人で作れるんか?

たぶんそうじゃないので、つまり、
男にはライフイベントがない(=『ライフイベント関連産業は女の仕事』)
という思想が前提になっているわけだ。そして、「今まさに自分は女性蔑視的思想が滲み出た発言をしているのだ」という自覚もない。
その過失的な悪意と、幾度とないその既視感に本当に嫌気が差す。その過失性が、人々が骨の髄まで男尊女卑に侵されていることの反映であることに気付いてしまうと、より一層心が折れる。

ほかにも、
「事実として、理系研究者は圧倒的マジョリティが男だった(絶賛現在進行形だぞ)。だから、説明会に来る女性のことはあまりちゃんと想定されていなかったんだよ」
という発言者男性の肩をもつ ”フォロー” を頂戴した。クソすぎて相手にもしたくないが、触れておこう。

そもそも想定していない事が差別
「差別」の定義は「存在の否定」です。
国連は「特定の集団や属性に属する個人に対する特別な扱い、何らかの除外行為や拒否行為」と定義している。
なので、By definitionでそれは女性差別。終了。

「女性の存在を特別視せずに、女子学生を一学生として認識」
「女性の存在を特別視せずに、女子研究者を一研究者として認識」
「女性の存在を特別視せずに、女性教員を一教員として認識」
って、現状見てみるに、男ばっかの理工系とかでめちゃめちゃハードル高そうなんだけど、大丈夫なんですかね。だいたいアウトなんじゃないですか。(笑)

差別発言であることは分かったので、一旦おいておくとして、
その"フォロー"してきた人が言いたかったことは何か考えてみよう。
事実として、理系研究者は圧倒的マジョリティが男」だったから「ライフイベント」を想定できなかったと言いたいんですよね。どういうこと?

「女性研究者にはライフイベントがある」?
研究者男性もいっぱい結婚して子ども産まれてるじゃないですか。
自分が結婚して自分の子供が生まれることは、男性研究者にはライフイベントではないんですか?(そんで女性研究者にはライフイベントなんですね!驚)

妊娠中のパートナーのサポートや育児が、親になる男性の当たり前の業務としてカウントされずに罷り通ってること、その末の男性の育休未取得って、
キャリア競争の中において、本当に、本当に、卑怯だよね。

女性が産休で2カ月、育休で半年休まなきゃいけないなら、
男性は最低でも8カ月休まないとおかしいですよね?
なんで子ども産まれたのに8カ月休まないんですか。
なんで女は長く休ませておいて、自分らは全然休まないんだ。
『出産した妻のいる男性の育休取得状況は5日未満が56.9%』
5日ってなんだよ。ハエかよ。
『5日~2週間未満が17.8%、1~3ヶ月未満が12.1%』
これで育休取得者の86.8%。期待値とって17日。
17日ってなに。タイワンハムシかよ。殿方はええどすなぁ。

いやいや、男性の育休取得日数は、ちゃんと未取得も合わせて期待値とらないと、正確じゃないぞ。と思い調べた。
『男性の育休取得率が5.14%』!!!

子ども産まれても0.8738日しか休まなくていいんだ…。午前休暇やん。
(取得したいのに取得できなかった民は3割らしい、7割はどういうこと)
(せっかく搔き集めた17日にまさか×0.0514をすることになるとは思ってもみなかったぞ…)

なんなら出産した女は人口一人増やすのに命がけで臓器ボロボロになるんだし、産休明け半年間給料二倍、とかで当然だろうが、と思ってる。
それで産まれた子どもの納税で将来年金とかもらって食うくせに、雇用は保証しない、暴言いう、いじめの矛先でサンドバッグにまでしてやろうって何。恥知らずを男尊女卑エキスで煮詰めてもそんなんにならないって。

つくづく認めざるを得ないのは、この国で、「女性の人権遵守」は贅沢品で、「できればなおよし」のオプションサービスだということだ。それは、日本が「女性には制限つきの人権しか与えられない」ことを皆で了解している、女性差別の国だからだ。
自分らもその構成員の一人だということを自覚して意識的に行動しないと、きっと10年先も20年先も何も変わってないね。私は嫌だよ。

改善を求めて諸方面に訴えにいくにあたり、諸経費がなかなかバカになりません。頂いたサポートは、公益貢献費として大切に使います。ご支援感謝します。